その2です。
26 見えない眼 彼岸堂 1000
オチは想像通りだけど、よくいえば期待を裏切らないって処ですね。「ああーっ、やっぱりーっ!」っていうあの楽しい感じ。そう感じるのはテンポが良くて勿体ぶらない文章の為す処。と偉そうに言ってみます。
27 ネコムラサキ 庭師の守護 1000
そのかわり何だ、と気になって夜も眠れない主人公。その後とか想像すると面白そうですね。しかし秘密を守る上にまだなんか要求すんのか、それとももう一度「秘密を守れる?」と云うつもりだったんだろうか、どちらにせよそのかわり、の続きを主人公が聞いてない限り何とも言えない。それはそれで面白いから気にはならないけど。
28 『代わりに、小鳩を』 石川楡井 1000
お母さんかわいそう。なんとなく現代の日本な気がしていたから、貧乏で外のハトを殺してディナーにっていう展開に吃驚しました。舞台が分かりにくいかな。
29 愛国上空 朝野十字 1000
不条理の楽しいところは矛盾に首をかしげることが無い処。ストレスフリーです。「ぼく」の滑稽さには笑いました。しかし笑っちゃダメなんだろうか、愛国って何ぞや。
30 幸福独占禁止法 中崎 信幸 837
幸福って概念の問題だからなあ。十人中四、五人が異議を唱えそうなテーマだ。死神の公式みたいなのがあったらもっと説得力増すんじゃあないですかね。(努力+愛−運)÷(社会的地位+精神的余裕)×100=寿命みたいな。
31 群青色と黄緑色のマフラー 宇加谷 研一郎 1000
まず、よく書けていると感じました。すっきりした読後感は心地良かったですが、何か残るかというと・・・うーん、と首をかしげてしまいます。冬という季節にだまされているような気もするので、夏に読んだらまた違った雰囲気を味わえるかも。
32 都市へ euReka 994
短編映像作品とかで見てみたいなあ。しかし男女の会話を綺麗に表現するって難しいから、こういう文章の試みは応援したいです。
33 一度きりの花 えぬじぃ 1000
主人公が男性っていうのは良かった。花が好きな男性ってそれだけでなんとなく哀愁と可愛さを感じますよね。ただ「人生は一度きり」というのは耳タコだから、結局それかいと思ってしまわなくもない。本当はもっと書きたいこといっぱいあったのに、泣く泣く1000文字に削ったのではないかしらん。そんな野暮なことを考えてしまいます。
34 ライカ るるるぶ☆どっぐちゃん 1000
現実のものが絡んでくるのに現実感を伴わないって、素敵ですね。テンポいいんで十篇くらいまとめて読みたいと感じてしまう。つまり一遍だけではパンチ力は足りないんだけど、それは持ち味なんじゃないかと思う。良いも悪いもないよなあ持ち味には。
35 僕と妹 初瀬真 1000
ちょっと題材にするには手垢べたべたの「妹」なんで、こういう内容だろうという想像の範疇内だったなあ。これ「僕」と「妹」を変えるだけで面白くなるんじゃないのかな、と思ってしまいました。
なんというか今回は、手垢まみれの題材に挑戦する人が多かった気がする。
しかしあえて選んだというには既存の完成度にも達していない。王道は大変ですよ、浅田次郎のようにその道何年とやって苦しまなきゃいけないんですよ、と言いたくなる。かといって奇をてらいすぎても読者がおいてけぼりを食らうだけ。本当に難しい。
作品数が多かっただけに、読みなれている人たちは途中でうんざりして読むのをやめてしまったんじゃないのかな。年末忙しいし。
それが今回の投票数の異常な少なさに関係していると勝手に思い込むことにします。
よいお年を。