もぐらさんの感想はおもしろいなあ。この感想に票をいれたい。
ひとりでつぶやくのは辛いので、感想の感想、というようなふりをさせてもらいました。
〉#1 禁断の完熟メロン
〉熟れた果実と妹。禁断の果実。近親相姦をにおわせるねっとりとした妹の描写。そしてこれらはすべてありふれた題材である。描写についても特筆すべきものはなく、読み返す必要がない。
〉居心地の悪い日本語がいくつか。
〉『愛らしく可憐な顔立ちをした彼女とは対照的に、そんな姿はどこか怪しげな印象を与えてくる』は、なにとなにを対照しているのかが不明瞭。むしろ、『彼女の愛らしく可憐な顔立ちとは対照的に、フルーツナイフを握る姿はどこか怪しげ』のほうがすんなりくる。それでもまだむずむずするが。
〉『徐々に中身が露わになるメロンに対して、妹は我慢をしきれない様子だ』もどこかしら居心地の悪さを覚える。なにを我慢しきれないのか不明瞭。なんとなくはわかるが。
妹に欲情してしまう兄がその感情をどうにかこうにか封印していたのに、心も体も無防備な入院中に妹がメロンをじゅるじゅる食するところを見せつけるものだからどうしたって封印が解けてしまう、というお話だと思うのですけれども、「感情が封印されてるぞ」ということを示す始めの冷静な語り口と、「もう封印が解けちゃうよお」という終わりの興奮気味の語り口との差が少ないので、特筆すべきものはない、になってしまうのだろうなと私は思いました。不明瞭な表現の積み重ねが、木版画の溝に粘土をすり込むみたいにして、差を浮き立たせることを阻害しているのだろうと。
あと、「白を基調とした」と後景の色を設定しておきながら果物の個々の色彩には触れないので、メロンがぜんぜん前景に現れない、という感じがして焦れったかったです。
〉#2 『体液を切り売りする子ら』
〉『ウィアー・ドーテイルズ』は「おれたちは童貞だ!」が由来なのだろうか気になってどうしようもない。
〉とゆーか、ダッシュの位置がおかしくないですか。――がインタビュアーの質問の頭に来るのでは。違和感がすごい。
〉まあ、なんというか、「ああそうですか」としか言いようがないオチだ。
ダッシュの位置ですけど、なぜだか最後まで言わせてもらえないインタビュアー、という表現だと思って読むとちょっと笑えます。
〉#3 僕は二度と陸には上がらない。
〉『でも彼は来なかった』って、『彼』って『僕』のことじゃん。一人称ではじめたはいいが、主人公が不在の時の人魚の描写をどうしたらいいかわからなくなったんだな。その時点で書くのをやめたらよかった。
『浅茅が宿』の勝四郎が阿呆だったら、という話として読んだり、フィリップ・ド・ブロカの映画として脳内再生するとちょっと楽しいです。
人魚映画といって思い浮かぶのはトム・ハンクス主演『スプラッシュ』かな。
〉#4 10時10分小鳥を捕まえるように
〉必然性は迫ってこないだろう。迫ってくるのは必要性だ。
〉『僕はこれで合格に三度失敗した』というのがどういう意味なのかわからない。ハンドルの持ち方のせいで三度落ちたってことか? そしてその間に三人も恋人を乗り換えているのか? なぞすぎる。
〉「合格に失敗する」という表現もおかしい。失敗するのは試験だ。
「「小鳥を両手で優しく抱き捕まえようとする角度が、ちょうど10時10分の角度なんだ」」のところを読んでいるときに鳩時計が頭に浮かんで、あーなるほど、となんか思いました。
試験に3回落ちたからって「車(=恋人)を失った」ことにはならないので別に「皮肉にも」ではなかったりしますよね。
〉#5 「熱いキスで終わるくだらないハリウッド映画を観たい。すごく観たい」
〉しゃれた表現を使おうとして失敗している印象。冒頭部分は「ふわふわ手袋の彼女と、素手のおれが手を繋いであたたかい」という状況なのだが、いまいちパッとその状況が浮かばない。表現がぎこちない。
ぎこちない表現も含めてかわいいお話。
〉#6 鳩時計の旅
〉「生まれてから一万日目」という発想がまずひとつあって、それにまつわるエピソードによってその発想を強化するという流れなわけなんだけれど、発想から導きだされるエピソードがありきたりすぎてつまらない。「何気ない連続する日々のなかで今日が、見方を変えるだけで特別な日になり得る」というのも、まあそりゃそうだろうけれども、といった感じ。
この親子に適宜日本の俳優を当てはめて脳内上映せよ、という事かと。
〉#7 石榴
〉定型文。いつかどこかで読んだことあるような文章。
このカップルに適宜日本の俳優を当てはめて脳内上映せよ、という事かと。
〉#8 窓という名の映画
〉これも定型文。「変わらない日常も見方を変えれば映画にもなる」というのはそりゃそうで、その平凡で退屈な日常を、まるで映画のワンシーンのように仕立て上げる魔法のようなことばづかいがすなわち小説なのではないかと思う。
いや、これ、窓という名のスクリーン、ですよね。
〉#9 王女マキ
〉『久方ぶりの食事だ』って言ってるんだから、猶予とか言ってないで食べちゃえばいいのに。魔物の存在意義がわからない。
そういうプレイ。
〉#10 感情無き。
〉『私は、少しあたたかくなった気がした』のならば、『感情なんて無い』という現在形はおかしい。すくなからず感情めいたものが芽生えた、という話じゃないのかこれは。そうやって過去形と現在形をいい加減に使うひと嫌い。
「とりあえず過去形だけ使っとけば間違いない」と隣に住んでるおじさんが言ってました。
〉#11 早苗と悟の白い杖
〉白い杖のお姉さんが超人的すぎる。
〉なぜいつもより一本早い電車に乗った僕が早苗に会えたのか。なぞだ。
電車が来る間隔が短いんですよきっと。1分とか2分とか。
「翌日。」と書かれてあるところを「帰宅した僕はタイムマシンに乗って今朝の六時に遡り、」に替えると時間SFとして読めるような気がします。
〉#12 夕焼けに立つ
〉夢の中のことを夢中とは言わない。
〉最後のパラグラフが気味悪い。こわい。
〉それまでの文章はいろいろ書いてあるけれども興味をひかなかった。
こういう文章を地で書いてるのか振りで書いてるのかがわからなくてこわいです私は。苦手。
〉#13 小説作法(推敲前)
〉推敲しろ!
〉メタは書いている本人がいちばん楽しい。
めいめい『小説作法(推敲後)』というタイトルで書いて掲示板にあげろ、という事かと。
メタは書くぶんには本当に楽しいです。
〉#14 彼女の世界
〉『肖子は舌で何かを転がしながら、俺から眼を逸らさずにそう問うた。そして下顎を二度三度と左右に振って、鋭く何かを吐き出した。/床に跳ねたのは、俺が小学生の頃失くした、コーラの瓶を模した消しゴムだった。彼女の唾液に塗れたそれは、俺が右掌で摘み上げるや否や、砂糖菓子のようにぼろぼろと崩れた。』
〉ひー、かっこいい!
〉本物の健忘症なのか、ただの忘れたふりなのか、わからないが、「忘れたふり」だと思って読んだほうがおもしろい。
私は、肖子には確かに健忘症の気があるが、病んでいるのは「俺」の方、というふうに読みました。
〉#15 バイオTV 第79回『ナメてはいけない』
〉ナメクジに塩をかけると縮むのは、体液と体表の粘液との間に浸透圧差が生じるからで、ということは、ただ体液が体表に流れただけでは体は縮まない。というクリティカルポイントをつかれたらこの文章は終わりだ。
このナメクジに適宜ナメクジの着ぐるみをつけた日本のお笑い芸人を当てはめて脳内上映せよ、という事かと。
〉#16 今年もBC1999AC2013DC4010
〉自分にしか書けない文章っていいなあ。
〉まあ、今のおれの文体と引き換えにこれだけ書けるようになりますがどうします?って聞かれたらはっきり断るが。
私もはっきり断ります。