あけましておめでとうございます。
今年も、面白い小説を期待しています。
#1 馬鹿
ようするに最初に出会った鹿が再び現れて車を横転させたということみたいだが、なぜ鹿がそんなのことをしたのかよく分からない内容なので、なんなんだろうという気分になる。最後の方で大きな姿をした鹿を上司に例えているので、鹿は、権力とか、何か抗いがたいものを象徴しているということだろうか。
そしてところどころ文学臭がするので、そういう文学っぽいものが書きたかったのかなとも思った。あと、最初に藪にはまったところの描写(2段落目)が無駄に長い気がする。
#2 Kise won today!
Я не могу читать по-английски. Поэтому я не могу оценить эту работу.
#3 それは多分、罪悪感かな。
(予選の感想と同じです)
最後の一文のための振りを延々書くという構成。たしかに最後は、なるほど、と思うのだけど、ちょっと狙いすぎな気もする。そして最後の方で突然「今までに見せた事もないような悲しみを湛えた表情が浮かんでいるように見えた。」と、脈略のないことが語られるのは、つまり一番最後のオチのためなのだけど、やはり少し不自然じゃないかなと思う。
あと、恋人同士のやり取りの描写は、上手いとは思うが、なんだか甘ったるいというか、読んでいて入り込めない感じがした(他人がいちゃついている姿を見せられると居たたまれなくなる感覚?)。あくまでも好みの問題かもしれないが。
#4 JOY
感情を貯金のように貯めるというアイデアは面白いと思う。しかしその貯めてきた感情を吐き出すことを描いた部分がよく分からなかった。「喜びに逆張りした」とか「喜びながら勝ち続け」とはどういうことなのだろう。もう少し具体的に書いたほうが意味が伝わりやすいと思う。
#5 %窶ヲ
(予選の感想と同じです)
相変わらず残酷な話なのだけど、読んでいると不思議と心が静かになる。この作者の作品はいくつも読んでいるので、今更驚かないということもあるのだけど、それだけではなく、残酷な物語によるカタルシスのようなものもあるのかもしれない。あるいは子供の頃、昔話や怖い話を聞いた時の感覚に似ているような気もする。
ただし、一番最後の「窶は鉞に目をやった。姉はそれを追うように鉞を見た。」という部分がよく分からなかった。
#6 贅沢な時間
話の流れが前後するのが少しわかりづらい気がする。そして、説明的になっている部分や凝った言い回しが多くてもたついている感じがした。あるいは、そういう文体を読ませるための文章ということかもしれないが。
内容については、山の中で身動きが取れない状況になるというもので、自然の中に捕らわれるというか、包まれるというか、回帰するといったイメージを表現したかったのだろうか。
#7 ポストアポカリプス
途中で出てくる「考えは堂々めぐり、思考は魔物で、一度追いつかれれば心身ともに生き苦しい。」というイメージがこの作品全体に表れている気がする。なので読んでいるとこちらも辛くなってくる。しかし、その堂々めぐりの先に何があるのかを読んでみたい気もする。
#8 若気の至り
(予選の感想と同じです)
病院で赤ん坊を入れ替えるいたずらをしたが、それは夢だったかもしれない、という話をしたところまでは面白いと思った。普段は控えめなのにとんでもないことをやる爺さんだし、そんな重大なことをやったのに、夢か現実か分からないとはどういうことかと。
しかし、最後の「俺の娘も……その病院にいたんだよ」というオチが、あまりにもカッチリはまり過ぎていて、なんだか冷めてしまう。もっと別の展開や終わらせ方はなかったのだろうか。