11
錆
群青 さん
設定に目を惹かれました。腕が錆びはじめてしまったのが身から出た錆びと言われるというアイデアがいいなあ。
でもオチはちょっと物足りないです。神と人との価値観が違うというのはわかるのですが、正反対に逆転しているとするなら、それをフォローするポイントが欲しかったです。
あと文章がちょっと気になります。段落頭一字下げを入れる入れないがごちゃごちゃしてますし、漢字の使い方もどこか気になる。
たとえば「錆び」と「錆」が混在していたり、成程や只管はあえて漢字にするメリットがあるかなと思ってしまいます。「悪行がどのいうものであるか」とかは誤字ですかね?
12
まぐろ
なゆら さん
物語や設定は面白いのですが描写がとても気になります。
マグロの手と言われても、胸ビレのことなのかそれとも人間のような腕が生えているのか迷います。走ってきたんだから手足は生えてるんでしょうか?
でも直立して尾ビレでぴちぴち高速移動してても走ってると表現しそうだし……どうにもイメージがまとまらないのです。
頬を赤く染めたとありますが、リアルなマグロ顔に頬はないので、漫画チックな擬人化された顔を思い浮かべればいいのかどうか。
せっかく制限まであと四百文字以上あるので、情景描写がもっと増やした方がよかったんじゃないでしょうか。
13
鼠
わら さん
楽しめました。歴史ネタを使いつつ、とぼけた落語みたいなユーモラスな話になっているのがいいですね。
単にネズミが大量発生しただけでも大混乱を巻き起こせそうですが、そこにあえて「ぺすと」を持ち出したところが、味があって好きです。
百地三太夫といえば石川五右衛門の師匠という逸話があるので、この四太夫が将来もしかして……と想像が広がるあたりも楽しい。
14
玩具
彼岸堂 さん
無害な少女が大量破壊兵器を使いこなすという、中盤の派手な盛り上がり方がすごくいいと思えました。ですがその分終わり方があっさりしすぎているというか、ひねらずさらっとエンドマークを付けた感じがちょっと物足りなかったです。
作中でずっと「ガキ」としていた相手が、最後だけ「少女」となるのも、表現を変えた意味がはっきりわからずもやもやします。
最初の「栄転に次ぐ栄転がもたらしたのは、堕落だった」の文も気になります。堕落という表現は自ら落ちていったときに使うので、上からの命令でひどい境遇におかれた主人公に使うのは変じゃないでしょうか。
15
『3年2組の河野君』
石川楡井 さん
面白かった。凄い良かったですこの話。これは芥川龍之介の河童を意識した作品でいいんですよね?
最初は「なんでわざわざ同級生が河童? というか河童に記憶を操る能力なんてあった?」などと疑問に思いましたが、そこに気づいてからはすべてすっきりまとまりました。
「記憶を操るおそれ」の一文で、今まで描かれていた学生時代の思い出がすべて信憑性をなくしたのに、主人公がまったくそれを気にしてないところとか。芥川龍之介の河童で、主人公が古い電話帳を開いて詩を朗読しはじめたときの喪失感を思い出してしまい、素晴らしかったです。
16
折合
エム・ありす さん
文にすごいちぐはぐ感があります。「居酒屋のボックス席に座っていた」のすぐ後に、まるで過ぎ去ったことのように「金曜日の夜に大学時代の友人たちとお酒を飲んでいた」と続けるあたりとか。彼女から「ショートケーキ食べたい」と言われて、聞き返したのが「苺ショート?」と勝手に苺乗せちゃうあたりとか。「その昨晩」という表現も気になります。
エム・ありすさんの前作はこんなちぐはぐな書き方をしてないので、主人公表現のために一人称の地の文を乱したのかなあとも思ったのですが、その割にはあまり効果が出ていないような。
カエルの串焼きやぴょんという擬音の口論など、使われているネタにもいつもようなインパクトがないと感じました。
17
ツヨイ、ネガイ
謙悟 さん
予想外の結末で楽しめました。予想できなかったけど納得できるあたりがショートショート。
思考コントロールだとこういうことが起きますよね。マクロスプラスのガルドさんとかもそうでしたよね、アニメの話ですみませんが。
やっぱりロボットには三原則が必要だなあと、アシモフファンの私は思ってしまいます。
でも説明がやや過剰なのと、改行が多すぎるのがちょっと個人的好みから外れてました。
18
夢の女
yasu さん
星新一の「さまよう犬」というショートショートを思い出してしまいました。たびたび同じ夢を見ることに悩まされ、最異臭的に夢に出てきた相手と現実で結婚しちゃうという流れが同じなので。と言っても千作も書いた人の作品と多少のネタかぶりしちゃうのはしょうがないと思いますけどね。
ですがオチの理由説明が今ひとつ納得いきません。数回すれ違った女がブラウスのボタン多めにはずしてスカート短くしてたくらいで、毎晩の夢に見てしまうなんて大げさすぎる気がします。せっかく文字数が300以上余っているので、そのあたりの納得が行く設定を出して欲しかったなあと。
19
横っ面
金武マーサムネマサ さん
それはタラちゃんじゃなくてイクラちゃんだろ! と、ツッコんだら負けですか。
連想で次々と繋がっていく形式は面白いですし、「やはりな」のあたりで吹き出して笑いましたが、ボリュームがちょっと物足りない。
絶対に千文字近く書かなきゃいけないというわけではないですが、短かく終わらせるべき意味が読んで伝わってこないと淋しいです。
20
喜びはいつも君のそばに
葛野健次 さん
作品から流れる空気は悪くないんですが……これもボリュームが。
千文字小説をあえて三百文字ちょっとで終わらせるというのは、「この話は長くしたら駄目になるの!」という印象が伝わってこないと、物足りない感じばかり湧いてきます。
とくにこのサイトではほとんどの人が千文字近くまで書くので余計にそう思えます。
しかしその印象を除いても「悪くはない」としか思えないので、たぶん私の好みから外れた作風なんでしょうねえ。