もしも黒田皐月の登場がサイト『短編』の終わりの始まりであったならば、私はその終焉まで見届ける義務があるのではないか、と思っております。
#1 死亡記事
死を殺し、生に転ず。嘘です。何のことかまるでわかりませんでした。
#2 ハッピーマート事件
「ハッピーマート」というなさそうでありそうな名前は良いと思いましたが、話の方は現実味に欠けていて、工夫の余地があるように思いました。
#3 東京タワー
主人公の行き先などわからないことが多いのですが、最後にわずかに希望方向に転じたところは良かったかなと思いました。
「人は、私は、幸せになりたいだけなのだ」という言葉をたった千字の中で出せたことはすごいと思う一方、「大きなものを二つも失くした」のもうひとつが何かわかりませんでした。
#4 僕の天使
「エンジェル」と自称するものの目的と行動が一致していません。こういうものは落ちとは言えません。それから、亡父の元に駆けつけるのが礼だと思うのですが。
#5 第75期投稿作品
済みません、読めませんでした。
歪みが増していく様がよく読まないとわからない作品、ということでよろしいでしょうか。
#6 ミュージック
それで最初に何をするの、と聞きたいです。ブログですね。
#7 この部屋は埃がこげた匂いがするの
題名からは面白そうだと思ったのですが、これは単なる妄想でしょう。主人公が小説を書けるようにも見えません。
#8 フォーエヴァー・ヤング
この「寺門さん」が本当に「ヤング」と呼ばれるべき人なのだろうかと、第四段落後半で早くも思ってしまいました。その呼び名が最も活かされているのは最後の一文なのですが、その頃にはもう「ヤング」の名があせてしまっていました。
#9 SIRENT IN THE MORNING
「廃墟」と「眠り」は両立しないものだと私は思いました。日記ならば良いのでしょうが、小説には適さない思惟ではないでしょうか。
#10 Air-Complex
道具の擬人化という面白そうな主題ではありますが、機能なのか機械なのか、扱いがあいまいなように思いました。「リモコン」、「フィルター」、「コンプレッサー」、「室外機」は他の機能に対する一部分であり、同列に扱うべきではないでしょう。
メール連絡は、遠隔操作のできる電化製品を連想させてくれて、未来を先取りしていると思いました。
#11 花筏
どうして主人公は煙草を吸ったのでしょうか。その疑問さえなければ、ただ一瞬の交錯としてすっきりと読めたか、あるいは何の印象も残さなかったかになったかと思います。
#12 ありがとう
作者の方には、本当に死にたいと思ったことがあるのか、と疑問に思ったことを申し上げて感想に代えさせていただきたく思います。
#13 梨葬
何が書いてあるのかと言うと、関係性の推移なのだと思います。ひとつひとつは力のある言葉ではないのですが全体では力を持っていると思えるのは、錯覚なのでしょうか。
名詞を並べて状況推移を簡潔に説明するなど、ひどい技術と思いませんか。ただ置いてあるだけではないのです。
#14 指の夢
それでも空間的に引き剥がされないこの状況に何を託しているのか、私には読めませんでした。
#15 夢〜DREAM〜
qbc氏の第73期の『影踏み』への感想を読んでください。もっとも、私は『影踏み』は良い作品だと思っておりますが。
#16 世界の死
古い機械に現在でもできないが役に立たない技術を持たせるのは、私の好みかもしれません。好きなのですが、世界が死んでも主人公が生きているのはどういうことかと思ってしまうことも事実です。
#17 雪
非現実が描かれているのに非現実と切り捨てられない理由が、良い話しかないのに良い話と切り捨てられない理由が、思いつきません。できが良いということでしょうか。
#18 擬装☆少女 千字一時物語42
私が作品を通じて何かを伝えようと思ったことがほとんどないことを思い出しました。
#19 積み木の空とウロボロス
「積み木」と「石」が、「僕は、彼らに負けずに、何度も、何度も、積み木を積み上げた」と「親を残して死んだ奴はそうなる〜」が合っていないように思いました。展開のさせ方が違っているのでしょうか。
#20 私の夢を見る私
風景はかなり見えるように思えるのですがそれだけで、心情については霞がかかっているような見え方をしているように思えます。
#21 1000字でわかる(ような気がする)日本の歴史
どこの視点から日本の歴史を見るとこう書けるのかということに興味を持ちました。中盤までは中華思想、それ以降は列強からの視点でしょうか。
#22 クリスマスカロル
今回は作品群の中のひとつでありかつひとつの独立した作品のように読めました。たった千字の中で鉄道と読書というかなり異なるものへと移行しているのですが、それが自然にできているように、またその中で愛情表現が上手く出せているように思いました。
#23 背中
K氏は家庭を持った人の心情も描ける方なのだと、失礼ながら改めてその実力を思い知りました。倦怠感と子泣き爺の連携が本当に上手いです。
#24 家族会議
何かを読み取れた、という感じがしなかったのは、読み方が悪かったせいでしょうか。日記のように思いました。
#25 古井戸で
それならば、村を捨てた者にはどのような末路が待っているのでしょうか。
#26 ミソスープの香り
そうまでして守らなければならないものだろうかと、価値観の違いを感じました。
読んでいる最中には「なんとコタツが載っている」の部分で、なぜ「なんと」とされているのかがわかりませんでした。落ちに対して失敗ではないかと思います。
#27 森の中のゾンビちゃん
この異形にはついていけませんでした。従いまして何を描こうとしていたのかを読み取ろうとはしていません。
#28 ファズ
言葉をつなげて作る作風から別のものへの転換期と思ったのは大きな勘違いでしょうか。最初の段落がその後にどのように影響しているのか、まったくわかりません。