1 思い出の教室 櫻ノ宮智 252
もうすこし膨らませたらいいなと思った。
この小説は要するに、泣いている状況は実は○○、というカタチで、
「状況は///実は○○」の「///」をなるべく伸ばすと面白みが増す。
なので、どうしてこの時期になると思い出すのか、と「実は○○」をリンクさせたりだとか、
「泣いている状況」に対して、なぜ泣いているのかの妄想をみっちり挿入するとか。
2 カンチョーの神様 Jo 926
これもいろいろいじれるなと思った。
「けつ筋」はきちんと括約筋と書いたほうがシリアスになるし、
確か肛門の括約筋は膣口と8の字に繋がっていて肛門括約筋が強い=名器、
という流れで展開を考えてもいいかなと。Mさんの性別変えて。
3 王子ピノルの帰還 F.Y. 928
これは、「竜に攫われた許嫁エルコ」という目的はどうなったんだろうか。
目的があって、準備して、出発して、いろいろあって、結局元の所に戻り帰ってくる、
というカタチはなんとなく不思議に落ち着く感じがあった。
生まれる前にいる場所と死んだ後の場所は同じなのかな、みたいなことを考えた。
4 八百万にして五千円の妹 戦場ガ原蛇足ノ助 998
読んでいて、
「青年をただの詐欺師にしてしまう。そんな悲しい五七五は、私の望むところではなかった。」
という気持ちに私もなった。
5 一円玉 岩西 健治 948
最初の描写のあたりは面白かった。後半はなんかむりやりな感じがした。
タイトルは「○○○」とかのほうが良かったんじゃないのかなと思った。
6 理由 yasu 1000
これこれ、「1思い出の教室」で必要だった伸ばすってところ。
カタチはこっちの方が良いと思ったけど、要素は「1思い出の教室」のほうが面白いと思った。
ベビーカーは「引く」じゃなくて「押す」だろうと思った。
8 嘆きの人妻 あかね 1000
これも「1思い出の教室」と同じカタチだなと思った。
ほのぼのしていた。こういうのが最近は優勝しやすいのかなと思った。
なんとなく学べてきたと思う。
9 ナシナビゲーション 謙悟 444
これも「1思い出の教室」と同じカタチだなと思った。
人気だな。
10 面小面鬼小面 豆一目 997
こういう話の様式というか、こういう感情はいったいどこからやってくるんだろうかと思う。
例えば「わたしももうすぐあの子の近くに行く。」は誰から教わった感情だろう。
人類誰もが持っている感情なのか、それとも日本人特有の感覚なのか。
それから「明日は彼女に新しい花を買っていこう。」という他人をケアしようと思う感情も。
自分も読んで同じような感情を感じるので、そんなに奇異な感覚というわけでもなさそうだけど、
それにしても、こんな感情はどこからくるんだろうか、と思った。
11 タイツ 白熊 1000
「1思い出の教室」と同じカタチを使用して人物描写している。
実はなんたら、ていうのは使いやすいなあと思った。
大学生が銭湯に二人で、というのはなんか違和感あったけどそんなものなのか。
12 夢の香港 キリハラ 1000
小説の面白さとはいったいなんだろうかと考えるんだけど、
点と点を結び付ける練習問題、みたいに思う。
表面的な音の遊びの要素も、音と意味の結び付けだし。
人間はどうも論理性に欠けるというか、大前提として、
感情のもらいゲロというか、他人が感じていることを自分が感じているように思ったり、
そもそも文章を通じて共感するという離れ業さえやってのける。
だから現実から目を背け、ありえないものを信じることができる。
この作業は面白い。たぶん、生きるのに必要で、この作業をすると気持ちよくなるから、なんだと思うけど。
例えば、車の運転中に視界の隅に急に何かが入りこんだことを点とした時、
それを危険のサインという点に結びつけられれば、生き延びやすくなるだろう。
「洟垂れ少年はこっそり屋上に上がれなくなったと知り、スパゲッティをすする兄の膝で泣いた。」
というラストで、うっかり私は屋上に上がれないのを<さみしがって>泣いたと感じたのだけど、
笑い泣きかもしれない。「1思い出の教室」みたいな例もあるし。
<さみしがって>と読んだ理由は、それまでの文章が、
なんとなくうらさみしげな様子、哀感を帯びていたからなのだけど、
それはつまり、按摩師、ヤクザ、貧乏アパートといったパーツ群から、
哀しさを引き寄せられたからなのだけど、
こういったパーツを点として、総合して、他人の哀しさを推察する能力は、
共同生活で役立つことかと思う。
この小説では、結局その泣いた理由は書かれていないんだけれども、
おそらくそうだろうと思えることは自分の能力に対する安心感につながってくるんだと思う。
なるべく簡単な練習問題であるほど、安心があって楽しめる作品になるんだろうと思う。
と、いうことであれば、読者が理解できない問題が提示されていれば、逆に不安を与えられる。
と、いうことで、哀しそうだという感覚を催させたこの作品は、それだけの価値があるんだなと思った。