短編の人と話すと、よく千文字なんか書いててもなんにもならないよっていう話題になる。それもそうかもしれないし、そもそもそんな目的で無い人もいるし、どっちでもない人もいるんだろうと思う。
ただ、小さなことの積み重ねでしか、大きなことはできない。私は、この文字数の中で予想もしていなかったとんでもないことが起きればいいなと思って書いている。それ以上でもそれ以下でもないと思う。
# 題名 作者 文字数
1 レズ／カウガール キリ子 999
レズは一人だと人一倍寂しいっていう感覚がよく分からなかった。
物や行為に関する描写がすらすら入ってくるのは上手だなと思った。
2 しらねえよ 藤舟 999
こう、びたーっと考え事がずらずら並んでいる文章のあとには、「しらねえよ」なんていう突き離しがよく合う。
考えたことびたーっていう文章を読むと、口語が文語を駆逐してってるように思う。繰り返しや、冗長や、だじゃれみたいなもんの役割が大きくなってそっちのほうがメジャーになるんじゃないのかなって思う。
3 僕と僕の中の君 乃夢 749
最後、皮肉な感じが良かった。
「儚い命だそうで。」「過ごす予定だそうで。」とか、まさに口語で、ほんと流行が変わったなーって思う。お洋服の変遷は目でぱっと見て分かるけど、文章の流行っていうのは気にしてないとなんとなく通り過ぎてしまうから怖い。
4 ジョークグッズと午後の四畳半 Ｉ 93
これを千文字で書いてみたら、と思ったけど、なんというか、千文字の魅力はこの間教えてもらったんだけど、俳句の楽しみ方に似てるんだなと思った。続きを読者に想像させること、余白を作ること。
これの続きはたぶん走れメロスにして、次の行から僕は激怒したなんて書けばいいんだろう。
5 空をながめる tochork 665
わりと律義な構成だなと思った。なんかあって、変わる、ていうのが。
どうしてこういう構成に人間が関心するのか分からないが、なんとなく気持ち良さのある文章だった。
6 近未来処理 岩西 健治 972
ああ、て思った。
漢字の量で読みにくさを作ってその後に解放させるっていうのは、実は#5と同じことをやってるんだなって思った。内容か、文章か、の違いだけで。
7 ステラマリス だりぶん 999
やってることは、#5,6,7とあんまり変わってない。リゾートから錦糸町って落差が。ただ、文章から伝わるガイドブック的な楽天地感があって楽しい。
あと、錦糸町って書いてもニュアンスが伝わんないんだよなと思った。さっき「楽天地」って書いたけど、楽天地は錦糸町にある娯楽施設なので、知らないと分かんないと思う。不特定多数に書くと文章はほんと難しいんだよなあと思った。
8 愛護獏チャイナ 朝飯抜太郎 1000
この、取りすました何事もなさはなんだろうと思う。上手い。「今度は笑顔で有希と会える気がする。」てそんなことないだろうて感じだけど、まあだいたい人間なんて次は良いことが起きるだろうなんてことは思うものだし。
もしかしたら、想像力のふくらみを、お話を決着させるために抑えつけてるのかも、て思ったりもする。思いもよらなかった方向にいかないのは残念なのだけど、ドラえもんのような安心感はあるのかも。
9 まぐろ その２０（まくら投げ編） なゆら 672
たぶん生真面目なんだなと思った。「という解釈を」や「それはつまり死を意味する。」とか。それからフレーズがたぶん好きで、「空を征するものは地を制すると思想」とか。
勢いだけに頼らず、変な要素をひとつくらいに留め、ばかばかしいことを真面目に書いていくと合うのかもしれないなと思った。今回みたいに。
10 親切の魂 しろくま 785
ああ、死んでたのか。
もうすこし高低差があったら良かったなって思った。古典的な怪談でそうなんだけど、ひゅーどろどろどろ、ってわざわざここから変わりますよ、てメロディが流れるのと同じで、文章でもここから変わりますよ、てのを入れると分かりやすい。そういう手法に飽きてきたので最近ではあんまり境界線を引かない感じ。
11 ＃１２（仮） 金武宗基 1000
この切れっぱなしを見るといつも分かってほしいという感じにあてられて辛くなる。めんどう事にまきこまれたくないなという感じだ。
そんなに他人は分かってくれないよ、と思う。
12 『不機嫌なモノリス』 吉川楡井 1000
ちょっと眠くなってきちゃったんでなんか分からなかった。
映画の予告編を見ているみたいな、ダイジェスト見た感じだった。
14 トカゲ スナヲ 980
なんでトカゲ選んじゃったんだろう、と思った。別にトカゲである必然性なんてなかったのに。
でも、なんでもかんでも死人にするの面白いなと思った。そこらの犬猫とかも。てか、身の回りに野生の動物少な過ぎだよな。ということは人が最近あんまり死んでないのかもね。
15 球体関節人形さん 西直 500
にんじんをにんじんさんと呼ぶような、無機質なものを強烈に身近に引き寄せる魔力を感じる文章。
16 足跡 霧野楢人 1000
檸檬に似た、他人に受け入れられにくそうな病的な感覚を感じる。もうすこし煮詰めると、ぼろぼろもっと出てきそうな予感があった。
17 面影〜オモカゲ〜 プシュケ 977
なんかこういう話あんまり読んでなかったからか、楽しかった。たぶんこういう学校の怪談みたいなの好き。なんか、幽霊って面白いよな、って素朴に思った。
文章では、もうちょっとテレビドラマくらいに分かりやすくする必要があるんだな、と思ったりもした。この手のを読みなれてないからかもしれないけど、読み返さなきゃならなかった。
18 巨人について（not yomiuri giants） 伊吹羊迷 890
#8の鎖を外すとこんな感じになるのかなと思った。面白かった。
感謝の対象になった後も、真相究明派と擁護派に分かれるだろうことは必至で、そのあとどうなるんｄなろうかな、とも思った。