仮掲示板

81期#39・82期#26・83期#16の素材で長編に挑む試み

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○高橋さん

こんにちは。コメントありがとうございます。高橋さんはコミュニケーションの距離のとりかたが上手ですね。

〉ところで、前期書き直しと今期をつなげたものとなるとかなり嫌な話になりそうですが、1002さんだったらどんな風につなげますか?

……さて、81期作品39「ある晴れた夕暮れに」82期作品26「腹の中」83期「ブランコと僕」にこれまで感想を書いたわけですが、

「もしこの3作(かってに3作にしました)の題材から長編をかけ」

と私がテーマを与えられたとしたらどうするか。



まず、三つをつなげることよりも「ブランコと僕」を長い話にするところから始めるだろう。

これは投票理由に書いたように1000字のなかで描かれたエロ思想小説として稀にみる大傑作であるが、長い話にするとしたら、「コント」というくくりを、私はとらない。なので、浜田・松本・東野というところの部分をやめて、素直に「僕」に告白させてしまうと思う。

そのテーマにするのは

「なにかを圧倒的に破壊しつくしたい欲望というものはどうしても存在する」

というものだろうか。「僕」は高校生で、誰からも好かれている。優等生でも不良でもないが、かっこいいので女にはモテ、ガリ勉でもなければチクったりすることもないのでヤンキーの友人も多い。勉強はよくできる。

そういう「僕」の秘密基地が、丘のうえのブランコで、料理も得意な「僕」は、サンドイッチをつくって持っていっては一人で食べて空想にふけっている。ちなみに母親は他界し、父親は単身赴任と称して愛人と別宅に住んでいるので事実上は高校生の「僕」一人暮らしである。

僕は風にふかれてサンドイッチを食べながら、自分のなかに修羅のように狂ってしまいたい狂気の欲望があることを知る。それは高校生の、健康的な性欲を満たしたい程度のものではなく、もっとすさまじいもので、Sと名づけるくらいでは軽すぎるほど、何かを破壊しつくしたい欲望というものだった。「僕」はブランコに乗りながら、その欲望について、素直に告白する……こういう設定をかんがえる。

ただここで女を縛り上げレイプする、という描写を書くかどうかは迷います。そこを書いてしまうと、そのシーンばかりが目立ってしまって、全体がその話だけになってしまいそうな気がするから。

しかしもしも書くとするならば、まず「僕」は左手にサドの著作を持っているほうがいい。そうして空想に入るのだが、ここは暴行の描写は露骨にはかかない。たとえば、今期の作品では


二人はげらげらと笑い転げる
「きたねえ、あはは」


といった表現があったが、このことばの卑猥なイメージの連想「げらげら」「きたねえ、あはは」をつかってしまうと、もともと暴行しているだけではやくも話全体のバランスが崩れかかってきているので、このシーンはむしろ暴行そのものを描かず、暴行している男たちのスケッチ、あるいは森の様子を「僕」の視点で描くというのはどうだろう。「僕」は残虐シーンを空想し、それを求めていながらも実生活では完璧な高校生であり、欲望と正反対の強い理性をもっている。

なので、「僕」は自分の妄想のなかでも「欲望」に対して「理性」が冷たい注文をつける。

<森のなかで四人の男が女を取り囲んでいるのを僕はみていた。どうしてこんな男たちはみんな同じ目をしているのだろう。髪型も服装もばらばらなのに、目が細い。その瞳は森のなかにさしこむ光も届かないほど深い灰色なのだ。彼らはさっきからお互いをオイとしか呼ばない。名前なんて彼らはどうせ必要としないんだろう。僕はこいつらをオイA、オイB、オイC、オイDと呼んでやることにした。オイCだけが頭にバンダナを巻いている。他はみんな原色でそろえた無個性な恰好なのに、オイCのバンダナだけ、とても人間的にみえる。オイCのつけているバンダナは、そういえば絵里が僕にくれた柄にそっくりだ。絵里……左目から唇の脇にかけて縦に一筋の傷痕をつけた女。僕はオイ達に囲まれている女をみる。絵里だった。顔にキズがないころの綺麗な絵里だった。だが僕は顔に傷がある絵里が好きなんだ。オイたちが寄ってたかって絵里にあつまり、縄をかける。バンダナをまいたオイCがナイフを取り出して、絵里の顔につきつける。絵里は泣いている。絵里よ、泣かなくていいんだよ。僕はその傷が好きなんだから。ナイフの刃がゆっくりのスピードで肌の内側に入り込むと、まもなく真っ赤な血が刃をとおしてオイ達にとびかかる。僕は彼らの目がもう灰色でなくなったことを知る。そろそろ僕も森を出なければならない>

……ちょっと改行せずに書いてみたんですが、もちろんそうなると「僕」は作品「腹の中」の伊藤君ということになります。絵里もそうですね。あのヒロインです。

つまり、長編化する場合、冒頭に絵里たちの物語がでてくる→そこで伊藤君をめぐる話(彼がどれだけイイ男であるか、とか、彼をめぐる親友同士のとりあいの話)がでてくる。この冒頭部分は、とても現実的な視点で、いまっぽく書かれる。

その次の章に、「僕」の人称で伊藤君の生活、彼の秘密基地、そして妄想のなかで絵里の肌に傷をつけるシーン(もちろん実際はアノ傷は親友がつけたもの)、妄想をおえてゆっくりと丘をおりる

では最後の章は……ということで、81期「ある晴れた夕暮れに」のアイツが登場するというのはどうでしょうか。かわいい妻がいながら自殺しようとする会社員の手帳をみたアイツが「こんな美人妻がいるのに自殺なんて贅沢だ、だったら俺がこの美人妻を犯してやる」というアイツです。

その設定をちょっとかえてしまって、ここでは拾った手帳は高校生の「僕」伊藤君の日記であり、日記には、理性と欲望に悩む伊藤君の切実な内容が書いてある。絵里の写真も入っている。絵里の傷がうつらないように撮られていた写真である。伊藤君はいろいろ悩んだあげく、やはり理性的に「病気の自分は生きている価値がない」と思い自殺を考えている。アイツはそれをゼイタクだと思い、絵里を犯しに行こうとしている。

そんなところで、伊藤君が前方から日記を探して戻ってくる。アイツは伊藤君の顔は知らないからまさか彼が日記の書き手だとは知らない。だが、伊藤君はアイツを見た瞬間に凍りついた表情になる。なぜならば伊藤君が妄想のなかでいつも登場させるオイCの顔がアイツと同じであったからだ。

伊藤君は我を忘れ、まさに発狂寸前にオイCに撲りかかり、不意打ちされて撲られたオイCの手から、伊藤君は自分の日記をみつけ、ますます動揺する。

そんなときに、ファミレスから出た絵里と友人が撲りかかっている伊藤君をみつける……というところで、この三人をカメラが遠くに映しだすかたちでおわる……


とか、考えてみました。これをより具体的に書け、となると、それは私の作品になってしまいますのでこれ以上は遠慮しますが、まあ長編にできるのではないかな、と。

参考にしたのは壱倉さんのサイトにあった「群像劇効果」という考えかたですね。無理にオチやこたえをつけない(壱倉さん、こちらの記事読んでくれたみたいでありがとうございました)。

もしよければ、ここにアドレスかきませんけど、読めると思うので探して読んでみてください。あれはかなりひさしぶりに「短編」で刺戟を受けた創作についての考え方でした。おすすめです。


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