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『霞の美人画』

空気がある。が、うまく感想が書けない。表現が足りないのは私側の問題。
けれど、うまく感想を言葉にできない人間に空気を感じさせるというか、不思議を感じても違和感なく物語を読ませてくれるのが、作者の筆力なのだろうなあ、とも思ったり。

沼の気泡を龍の呼気っていうのは他でも見たことあるのだけれど、原典は何なんだろうというのは、余談の興味。


『あっ』

男の小さな自尊心の話と読んだ。胸がいたい……。
視線を動かさず、返事もしなかったのは、彼の心の傷を思わせた。それも甘酸っぱい失恋の痛みではなく、自尊心の毀損だ。
声をかけるにも返事をするにも、意識しすぎて逆に何もできず、でもメッセージなんかは確認しちゃう。
自分は今や「無視される」という傷つけられる立場ではなく、「無視する」という傷つける立場になったと考えることで、自尊心の回復を試みて、嬉しくなっちゃう。
で、それが虚しいってことも、わかってなくもなく。
おもしろかった。


『未発表原稿』

「思ったことを思い出した。……頃のこと、……ことを思った。……最近では、……この頃では、……ことを思った。」
わざとの描写の積み重ねだとは思うのだけども、どうにも読みにくく思った。これは好みの問題だろうけれど。
それぞれの要素の関連性がわからなかった。


『俳句仙人』

紹介文章と思うことにしているのだが、それならそれで何かもう一つこだわりを見せて欲しいなあ、とか。
並べるだけなら、説明するだけなら、誰がやっても同じものだ。
この人の文章はここがこだわりなんだな、とか、ここがおもしろいな、とか、思いたいなあ、と。

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