6 ケイ;青山るか
「実は、キミのこと世界中でいちばん嫌いだったかもしれない」という一文に、ちょっとだけ惹かれるものがあり、この小説の中心は、この一文にあるような気がする。それは愛の本質に触れるものかもしれないし、人と人が深く繋がり合うための試練のようなものかもしれない。
「護る」べき誰かがいるということは、一番幸せなことかもしれませんね。
7 nikki;かやこ
「四捨五入で三十路」ということは、つまり25歳の女性の話ということになる。でも主人公の醸し出している雰囲気というか疲れ具合は、あと5歳年上か、下手をしたら10歳くらい年上の女性という感じもする。あるいは、女性の外面と内面にはそれだけギャップがあるということだろうか。でも「小さなあくび」という仕草に、どこか慎ましさを感じるし、やっぱり25歳の女性なのかなあとも思える。
女にとっても男にとっても、25歳という年齢は、梅雨が明けたか明けないか、はっきりしない不安定な天気にどこか似てますね。だから明日晴れて欲しい、ということでしょうか。
8 ベイビィポータブルボム;キリハラ
完璧すぎて、“面白かったです”という感想しか思いつかない。一瞬も退屈させない、エンターテーメントに徹した小説……? いちおう三回読み返す……。う〜ん……。「志穂はボブを整えて指揮官の顔になる」、ここ好きですね。髪を整えるという女性的な仕草が、そのまま、指揮官という男性的なものに変身するための儀式になっていて、何か、二つの性を行き来する両性具有のような魅力を感じます。分かりやすく言えばジャンヌ・ダルクやナウシカのような、精悍な女性の魅力。
それからあと一つだけ。〈由宇〉の名前が始めに一度出たきりで、その後全然出てこないのが少し気になります。
たぶん普通に読んで、普通に楽しんでいい小説だと思います。
9 ラストシーンはせつなくて;カラコロモ
いわゆる“メタ小説(小説内小説、小説についての小説)”というものでしょうか。あるいは、“メタ小説”とはこういうものである、という一例として書いたものであるなら、非常に分かりやすい小説だとは思いますが……。
もうひとひねり、ふたひねり期待したいですね。