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#1 シゾフレン

ひどい状況で目を覚ました主人公が、昔恋した女と、恋敵の男を急に思い出して鬱屈とした言葉を吐くといった内容か。主人公の心の行き場がなく、地を這ったり天から見下ろしたりするような気持ちの定まらない感じを表現したかったのかと思ったが、よく分からない。
それから、全体的に表現がくどくて文章が頭に入ってこないし、後半は詩にしか見えない。英語が途中に入っていたのも不可解だ。英語は、ちょっとした雰囲気を出したり、気分転換にはなるのかもしれないが。


#2 豊罪

戦争や災害の悲惨な映像を見ると、恵まれた環境にいる自分に対して罪悪感が生まれるという気持ちは分かる。だけど、そのことをただ書くだけでは物足りないし、その罪悪感の先にあるものを書くべきだと思う。


#3 「ユイゴン」

内容が短いことが悪いというわけではないが、彼女が彼(君)を殺すほどの理由や背景が見えてこないと、単にオチでびっくりさせようとするだけの話になってしまうと思う。


#4 ある日の出来事

ただ状況を書くだけだと、日記と変わらなくなってしまう。最後のほうの「人生は悲劇に満ちている」という言葉も、なんとなく話をまとめるために持ってきただけという感じがする。


#5 つま先

カランコロンというのは石が転がる音だろうか。だとしたら「コロン」はいいとしても、「カラン」は石っぽくない気がする。「カラン」は、中が空洞になっていたり、軽くて硬いものが出す音というイメージがあるから、石のように鈍い音のするものには合わないのではないかと思う。あるいは、主人公の心の中では「カラン」と響いたということかもしれないが、読む方としては、石と音のイメージがずれてしまう。
内容に関しては、ただ石を蹴るだけというのが面白いと思った。しかし最後に「あの時の僕は、小石を蹴るのをやめたかった。 寂しさを紛らわせることを、やめたかったはずなんだ」と少しもがいただけで終わってしまい、そのやるせない気持ちは分からないでもないが、結局どこへも行けないということを認めるだけで終わっているので、物語として物足りない気がする。


#6 嫌い

自分の子どものことを「嫌い」という母親の設定には興味を持ったが、認知症になった母親の告白(おちょくるために嫌いと言ったが本当は好き)の段階で、型通りに作った感動話という印象を持ってしまう。人を感動させることは悪いことではないが、感動に誘導されている感じがすると興ざめしてしまうものだろう。


#7 藍

色で人の魅力を表現するのは面白いと思った。その人のどこが好きなのかを説明するのは案外難しいことだと思うが、色からイメージを膨らませることでうまくその人の魅力や、その人に対して憧れる気持ちを表現していると思う。
しかし、第一節と第三節はちょっと退屈なので、構成に工夫が必要ではないだろうか。
あと、「彼女はこの街が似合う」と、「隣でアイスティーを頼むのが恥ずかしくなり」の部分がよく分からない(なぜそうなのか分からない)というか、説明不足な気がする。


#8 あなたになりたい

(予選の感想と同じ内容です)
「あなた」という他者になるために小説を書くという考え方が興味深い。小説を書くという行為は表面的には個人による行為だけれど、本当は原稿用紙やパソコン画面の向こう側にいる他者に対して行っている行為だ。そしてそのことを突き詰めていけば、それは「あなた(他者)になりたい」ということになるのかもしれない。
ただし作品としては、とりあえず殴り書きをしてみたという以上のものではなく、「あなたになりたい」というテーマが上手く活かされているようには思えない。もっと読者(「あなた」)の視点に立った書き方が必要なのではないか。


#9 ディナ

同じパターンの話が内容を変えながら繰り返されるという構成。ロックやJポップのようなポピュラー音楽の構成に似ている気がした。ポピュラー音楽の1番、2番、3番は、歌詞は違うが、曲のアレンジは基本的に同じで、その繰り返しを楽しむようなところがある。だからこの作品でも、そういう繰り返しの面白さを表現したかったのかなと思う。
ただ、その繰り返しの先に何があるのかはよく分からなかったが。


#10 まぶたが想い

仕事に虚しさを感じるという気持ちはよく分かるが、ただ不満を言っているだけではつまらない。他人の愚痴を聞くのがつまらないのと同じだろう。せっかく小説を書くのであれば、その虚しさを超えていくための何かを書くべきではないのか。


#11 新世界

(予選の感想と同じ内容です)
ある理由からこれまでの生活を失い、移動を続けることを余儀なくされるが、同じ境遇の仲間に助けられる、という設定が、今回自分が書いた話に似ている。人間は、どんな状況に陥っても生きていかなければならないし、どんなところでも自分の居場所や希望のようなものを見つけられる力があるのだと思う。簡単に言えば、それは順応するということなのだけど、そういう、人間の逞しさへの肯定感がこの作品にはあるように感じられて、好感が持てる。
ただしケチをつけると、「森三中村上」と「常滑」という固有名詞は余計というか、効果的な使い方ではないなと思う。


#12 コロンビアの浅煎り

ささやかな趣味に愛情をかけるという部分には好感が持てた。しかし、やはり自分の趣味を書いただけの内容に思えるし、物語の広がりをあまり感じない。
趣味という自己満足なことを、いかにして読者に伝わるように書くかということは難しいことだとは思うが。


#14 ヤツとの戦い

「ヤツ」という、よく分からない何かに主人公が怯えるという設定になっているが、結局「ヤツは自分の不安かもしれない」と言ってしまっているので、あえて「ヤツ」を設定する意味がないような気がする。それに、病気で不安ということ以外に、いったい何がそんなに不安なのかということがよく分からない。すべて「ヤツ」に、物語や不安の意味を丸投げしているように思える。


#15 黒山羊の弟

(予選の感想と同じ内容です)
暴力的な話というのは、倫理を超えた部分を語ることができると思うし、自由や爽快感があると思う。そしてこの作品では、最後の方で「姉ちゃんは山積みされた男たちの上に君臨している」というヒエラルキーによって、自由の先にあるものをなんとなく掴んでみせているような気がする。
暴力的な話はあまり読みたいとは思わないけど、この作品自体はそう悪くないと思う。


#16 加速科学と愛

機械は心を持てるのかということを題材にした、よくあるSFの域を出ない内容だと思う。「あなたが死ぬまでに、その死を悲しめるようになっておきたいのです」という部分には少しぐっときたが。

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