短編200期、おめでとうございます!(北村さん、本当にお疲れ様です!)
笹帽子と申します。かつて投稿させていただいておりましたが、最近は1000文字で書くということをしなくなってしまい、200期にも投稿しそびれました。けれどせっかくの節目ということで、全感想を書かせていただきました。全感想っていうワードが懐かしいです。
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『200』八海宵一
なにか叙述トリック的なものがあるのかと思って何回か読んだけど見いだせなかった。特に目的がないなら錯時する必要がない気がして、「ギネスに載ろうぜ」から書き出しても良いのではないかと思った。200ネタが今回の投稿作最初に来ていてかつ他にそういう作品が投稿されていないというのは美しい。
『鮎』わら
一行目が面白いので良かった。微粒子レベル好き。
『My name is Matt Nelson. I'm from Atlanta, Georgia, USA』テックスロー
中盤までは話に入り込めないというか主人公が見えてこなくて面白く感じられなかったが、最後にタイトルが思わぬ形で回収されたのがとても気持ちよかった。
『サトゥルヌス』三浦
雰囲気が好き。サトゥルヌスのネタで言うなら五人の子供の時点でそれを回避してるんだけど、結局もうひとり加わった上に六人まとめて殺したプラスワンになにか意味あるのかなぁとか考えてしまった。
『地平線の向こうでとびきり甘いケーキを焼こう』彼岸堂
「本物がある今しか」というのがポイントっぽいと思ったのだけれど、でもその本物というのがテレビを通した世界の終わりかよ、というのはツッコミどころとしてあえて仕掛けられているのかどうか判断に迷う、というか迷ってしまって入ってこなかった。
『そこまでドライブ』ウワノソラ。
「私」の性別は明らかではないが、百合っぽさを出す、という趣向? それともそういう叙述トリック的なもの? 「指に軽く拘縮がある」という情報の具体性が浮いていて、特にその後でてこないのとかも気になった。もっと長い話や関係性が想定されているのに1000文字には書ききれてないのだと思う。
『沼』志菩龍彦
この沼やばいんですよというのを手を変え品を変え900字くらい書き続けた(この時点でおもしろい)挙げ句最後に奇怪な謎を投げつけて締める。意味はわからなくても得体のしれなさで気持ちよくなれるから好き。
『だから一緒に』わがまま娘
ラスト一文はホラーと言うか意味がわかると怖い話的なものを意図しているのだろうか。そうだとすればこの言葉の意味合いの反転の仕方は悪くないと思うけれど、「追いつく」という単語は最初にも出すとかして伏線にしたらもっと鮮やかになるかなと思った。そういう仕込みがないので中盤が陳腐に見えすぎてしまうように思う。ホラー的な意図がないとしたら、すみません。
『海から海へ』川野
読んでいて気持ちが良い。描写や説明が行って帰ってくる運動を繰り返して全体もそうなっているので安心して最後まで読める。
『迷いネコみるきー』euReka
自分のような読者に対しては冒頭部分があまり意味を考えないでくれっていうシグナルになってしまうように思う。で、考えずにいるうちに読み終わってしまうのでちょっと苦手。
『C'est tout』とむOK
明暗がきつかったり歪んで軋んでいる情景が感じられたけれど状況はいまいちよくわからなかった。タイトルは作中の「古い映画」と関係しているのだろうか。その映画の元ネタを知っていると読み取りやすい?
『急いでる』ハギワラシンジ
意味がわからなかった。
『スキップ、スキップ』たなかなつみ
幻想的な光景のなかで一度自己を断片に崩してしまうことで軽くなり自由になれるという気持ちよさがあり、読んでいて心地良い。
『君の記憶を見せて』塩むすび
好き。緩急がある。朧月夜に怪異が出る。犬が化けてでたのかと思いきやお手とかを拒否し、攻撃される。でも一行空いたら仲良く会話していて、会話の内容的にやっぱり犬じゃねえかとなり、でも祖母と犬が通り過ぎていって、え?となったところで月が出て綺麗に終わる(と、読んだけれど、あってるかな? タイトルも合わせて考えると、女の子=首輪というのもあるかなと思ったけど、ジャーキー欲しがったりはしないよなぁ)。良い。
『唾とばしちゅる』qbc
1000文字の情報量というか作為の量がすごいと感じた。「メレンゲが鼻についた」、物理なのかどうかで一瞬迷うし、「政府」という単語がでてきて飛ばされるし、意味不明なタイトル「唾とばしちゅる」が若干気持ち悪く説明された上で最後ぜんぜん違う方向に球を投げて。
『そこに怪物はいる』世論以明日文句
怪物の描写結構好きなので、アベ政治とか臆病風とか書かずに素直な怪奇譚になっていたほうがいいのになぁと思った。
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久しぶりにまとめて1000文字小説を読むのも楽しかったです。
全然参加していないくせにこんなこと言うのも何者だという感じですが、まだまだ続いていってくれればいいなと勝手に思って応援しています!
笹帽子さん、感想ありがとうございます。
笹帽子さんの「CP対称性の破れ」タイトルに魅かれて読んでみて、これはなるほどやられたと思いました。ChipsにPepsiもありますが映画館ならだんぜんPopcorn、で、Colaと。
2008年の小林・益川氏のノーベル物理学賞受賞の時、雑談のネタに使うために調べた記憶がよみがえり、懐かしかったです。そういえば「イグノーベル賞」も調べたなあ。
フランス料理の丸テーブルに置かれたナイフとフォークを、左右どちらから取るか(マナー知らない前提)の絵で説明したのですが、正直自分でもよくわからんと思いながらしゃべってました。笹帽子さんのたとえの方がだんぜん楽しい。
拙作の「古い映画」については好きにイメージしてください。
感想コメントがホラー寄りの笹帽子さんなら、黒沢清「LOFT」などいかがでしょう。私は予告編しか見ていなくて、そのうち見ようと思って放置したままになっているのですが。
(とむ)