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本文: 〉全ての感想は書けないだろうけど、今回も感想を書いてみます。 〉 〉『埋め干し』 〉 物理的に活かされている植物人間の人間の生命が干されつつ、埋葬へと向かって逝く。「白米」=「肉体」と、「梅干し」=「魂」を上手に描いていると思う。 〉『会話も食事も出来ない伽藍の命を必死で延長するのだ。』 〉 素敵な比喩。『伽藍』=『大きな寺・寺院の建物』『僧が集まり住んで、仏道を修行する、清浄閑静な場所』。植物人間となっているが、代えがたい命、魂の器としての肉体を「伽藍」、つまり寺や寺院の建物のような、どこか神聖なモノとして捉える。重要なのは「魂」だ。金の為に活かす医師。ただ肉体的生命を持続させんとする家族。語り手であるナースだけが、魂の重要性を知っている。魂への配慮を表現した小説。 〉 個人的には、登場人物が「ナース」ではあって欲しくなかった。だって、その老人にとって第三者だもの。 その老人の魂を理解している(例外的な)身内の人が主人公であって欲しかった。 〉 〉『伸びーる、伸びーる』 〉 「5センチ程だった」豆苗。小説の前提となるのが、1度、包丁で切られたということ。食されたということ。葉っぱを切り落とされてもまた伸びる。再生の力。鬱病になった私の再生の物語。 〉 食べること、生きようとすることは理性じゃない、本能だ。そんなことを感じた。 〉 〉「馬頭」 〉 主人公は、タフな仕事をしている。私的な経験を言えば、鹿児島県の出水市というところで、越冬しに来た鶴をカウンター(特殊でもないありふれた道具だけど)で数えたことがある。立体的に、複雑な軌跡で飛来する鶴。重複カウントは許されない。『細長い筒状の檻』で、一列になって欲しい。その主人公の気持ちに共感できた。だって、そうすれば数えやすいもの。 〉 冒頭、馬の『臀部の筋肉』から始まり、最後の『おなら』と対応しているのかな。そして、『黒曜石にも似た暗黒の眼球』が、カウントに疲れた主人公の眼球と対応しているように思える。 〉 うん。せめて、あと300字書いて欲しいな。 〉 〉『古の都』 〉 この男、生きてるの? それが疑問。 〉 死んだ父親が自分が父親と名乗らず、娘に会いに来た話と私は読んだ。気を抜くと雨が降るというのは、気を抜くと天国に行くということのような……。『清水の舞台から飛び降りる』も死を連想させる。『京土産の雑貨屋さんの前で』『俺は中へ入るように促し外で待つ』のも変だしね。一緒に入らないのは奇妙。 〉 〉 この物語が悲しいのは、「娘」も、この男が父親であると気付いているということ。次は、父親と娘として会いたいと娘も願っているということ。『奥さんとはなんで別れたん?』をその文脈で読み替えるなら『お母さんとなんで別れたの?』という質問になる。娘として訪ねてみたいことの一つかも知れない。『娘さんとも会われへんの? 』という質問を頷くだけで答えない。また、『うちの息子と年、変わらへんねんね』からの「4月で五年生になる」は、答えになっていない。「産寧坂」=「お産が寧かでありますように」という舞台設定から考えると、「娘」は身重かな。そうすると、本堂(清水の舞台)に行く前に、子安塔(子安観音)に詣でていると考えるのが自然かな。安産祈願をしにきたということ。そう考えると、『うちの息子と年、変わらへんねんね』ということは、「娘」が『うちの息子』の年齢の時に離婚をしたということだろう。つまり、母親の胎内に「娘」がいるときに離婚した。そして「4月で五年生になる」年が、この男が亡くなった年、かな。 〉 〉 『その表情を見ると今迄取り繕ってきた娘に対しての感情が溢れ出し胸が押し潰され涙が出た』ということ。「今迄」という時間軸をどれほどの期間と捉えるかは、読み手次第だけれど、私は「娘」と清水寺付近を観光し初めてからの間だと読む。父親と名乗れないのは辛いじゃないか。 〉 娘も、『ミニお雛さんセット』を買うなんて、切実だ。少なくとも、『4月で五年生になる』女の子に、雛人形を贈るのは……。雛人形は、女の子が生まれて初めての3月3日のひな祭りに合わせて贈るのが、慣例。少なくとも、他人から、小学五年生の女の子に、父親経由で贈る品では無い。 〉 「『雨の降る日、待ってるし。元気でな』と返信をした」というラスト。泣かせるじゃないか。 〉 〉 〉 〉 なんか、しんみりとした。室内なのに、パソコンのキーボードに雨降ってる。もう、寝る。
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