すすんで誤読しようをモットーに書きました。
全感想をおこなっているみなさま、おつかれさまです。
ドライブ
「怖いというか、ぞっとしたな。」
は、「怖い」と「ぞっとする」事が違う感覚だというふうに書かれているわけですが、これが、
「ひまわり畑だったんだ。」
という最後の一文の印象を少しだけ複雑なものにしていて良いと思いました。
「ぞっとしたな。」
だけだと、印象は強くなりますが、味気ないような気がしますので。
美術館でのすごしかた
テレビドラマを見ているような明快さで、月曜日9時のドラマがこういうふうに始まったらきっと追っかけて見るぞと思いました。
彼と私の話法
わたなべさんの作品には、完璧な善人がまったくの無意識で見せる残酷な一面を暴いてみせるというようなところがあると思っていて、それがしっかりとそういう形にはなっていないのですが、その定まらない形だからこそたまらなく刺激的なのかもしれません。『もしも世界が100人の村だったら』くらいに露骨にそうだとさすがに悪趣味だと思いますし。
花の卵
これは続くのでしょうか? 続いてほしい。
ガラスの瞳
「額にキス」「太陽のにおいがする子供」「犬」「カーラジオ」
という言葉から、1930年代のアメリカを舞台としたテディベアのテレビコマーシャルとして楽しみました。
暑寒
海坂さんとチキンさんの感想に、なるほど、と思いました。
バドミントン
丘がどこにあるかでイメージがまったく変わって面白いだろうなと考えました。
アフリカ、日本、中国、好きに入れ替えてたくさん楽しめそうです。
三軒先の如月さん
如月さん礼賛、というふうに情熱的に進んでいくのに最後、
「ゴールデン・レトリバーという犬種だ。」
ととても冷めた言い方で、漠然と将来について悩んでいる時期はもう過ぎたんだなという事がこの一文でわかりました。
パッキン
終始冷静な語り口なので、
「なんだが余計に悲しくなった。」
の、「なんだが」というところにさえ主人公の抑えられない動揺を読み取れていいです。
月はただ静かに
この語り手が「海」だとしたらカッコイイなと思いました。
シバタ坂のデンジャーゾーン
これは、柴田、遠藤、の二人組み「エス・イー(SE)」というチーム名にして、主人公の名前が、
「ザビエル(Xavier)」
だったらもっとくだらなくていいなと考えました。
医者と死神の微妙な関係
患者の少年と、少女の言葉を真に受けて気持ちを吐露してしまう医者があまりにも清らかな人間なので、とても清々しい気持ちになりました。それを踏まえて、
「だって命って重いし、それに……」
のあとの台詞がたとえば、
「命を救っている人間の命ってそいつが人を救えば救うほど重くなるから、死神的にはおいしいのよね」
といって医者の命を奪うというふうに繋がるのだとすると、最後の医者の台詞の能天気さは死神の怖さをしっかり出しているいいラストだなと思います。
逢魔が時
「僕も口を横に開いて、その後縦に開いた。」
というのは、主人公も老人と同じようににやついてから口を開いた、という事だと思うんですが、
「その後縦に開き、口をすぼめた」
とやると、「あ・く(悪)」と発音しているように見えるので「悪」が強調されて面白いんじゃないかなと考えました。
あと、車椅子は轍よりも側溝にはまった方がより動けなさそうなので側溝にはまってほしかったです。
八丁林の探索は
「散策」ではなく「探索」であるところに主人公の孤独感があらわれていると思います。
主人公がブランコを作るために向かう目印が、
「太い枝が横に伸びている木。」
という身も蓋もない名前で、そんなものは間違いなく他の場所にもあるはずですが、主人公にはその一箇所しか頭には浮かんでいないというところがいかにも子供らしくていいです。あと、ロープは用意するけれど肝心の板はその場に来てから探す無計画性とかが。
勇太と俊太という似通った名前は、はじめに出て来た雄太が誤字ではない可能性を高めます。勇太と俊太は仲良くなりましたが、雄太はまだ枯れ枝で草木をやっつけていると思います
吉右衛門と六甲おろしのおはようサンデー
これは長月さんの感想に導かれました。ありがとうございます。
忘れられた昼食
デニーズの店員の事ばかり憶えていて、デニーズで食べた昼食が全然思い出せない事にずっとイライラしているというふうに読みました。
ビーアグッドサン
主人公が従姉の真衣姉ちゃんに心を寄せていて、それで主人公の母が真衣姉ちゃんの股間に宿ったら楽しい話になりそうだなと考えました。
硝子の虫
「自分は、あと半分しかないコーラを嘆く、悲劇的な方の人間である。」
という一文が主人公を端的にあらわしていて、この話を強力に支えていると思います。
白い部屋。
インターホンを鳴らしたあとの独特な孤独感と、インターホンを連続で押している時の苛虐的な興奮をとても効果的に使っているなと思いました。