私などもう自作もしばらく出していないから純読者と言っていいと思うのですが、そういう人間がひと様の作品を読んでみようかなと思うのは、一つには感想で興味を引かれた時、なんですね。
こういうのはまさにマスコミで書評が担っている役割だろうと思うのですけども、そのために大体世間の書評というのは褒めることになっているんでしょうが、読者としては褒められているから読みたくなるとは限らなくて、やはりその辺は感想の芸、ということになるわけで。
で、この川野さんの作品、興味を引かれて読んでみたわけなんですが、私は単純な読みで、最近暑いね、中でも埼玉は暑いよ、という話じゃないかと思ったのですが。語り手はこの暑いという現実を拒否して、どこかにアナザーワールドがあるに違いない、というのが主題であって、それを証明するために言語学やら民俗学やらを動員しているんですね。
当然ながらこれはとむさんの感想に対する異論などではないです。何やら意味不明な点数を添付しながら感想を書いている人がいますけど、(それを否定するつもりでもないです)あれは自分の読解力に対する自己採点かしら。
この作品に30点とか言ってますが、そんなにわかりにくい話じゃなかろうと思うんですけどね。執筆の背景を考えてみれば見えてくる。
ただ私が書くんだったら、語りのレベルにおける「暑い」という現実をもう少し感覚的具体的に表現するかなあと思いますが、それは千字という限度もあるし、でも理論の方すこし削ってもいいかもなあと思ったりもして、やはり作品論にはならないのだった。