ごくごく個人的な話ですが、210期の締切日を勘違いしておりました。今期不参加なのはそういう理由です。
で、その反省というわけでもないのだけれど、久々に全感想を書きます。
#1 ダニー・カリフォルニア
タイトルを見た瞬間に「あれ? これってレッチリの歌のタイトルやん」と思い、念のため歌詞を見直したら、かなり類似する描写が多くてニヤリとしました。作者は絶対意識して書いてますね、これ。
原曲というか原詩の方はカリフォルニア州が舞台だけど、本作は長野県が舞台。そのスケール感の違いが、何か哀愁のようなものを感じさせ、面白かったです。
個人的に「音量を上げろ、天賦の才持つクリエーター。」というフレーズが好き。
#2 名探偵朝野十字:新之助のアイリーン
空港から国外逃亡ときたので、本筋には全く関係ないけど某自動車会社の元CEOの姿が浮かびました。相変わらず新之助が惚れっぽい性格なのが微笑ましかったです。
#3 桂馬の憂鬱
相変わらずどっからこんなストーリーが浮かぶんだというような、ぶっ飛んだ作品。香車と飛車の格差を「車格の違い」と表現しているのが面白かったです。
単なる駒であるはずの桂馬が、意思を持って行動しているようにも映るが、やはり指し手は人間以外ありえないはずで、虚構と現実、動と静が入り混じった雰囲気が素敵でした。
#4 私は詩が嫌いになった
初めは自分のためだけに詩を書いていたはずの私が、有名な詩人に紹介されたことをきっかけに脚光を浴びるようになっていく。途中で「私の詩はもっと読まれるべき」とあるのは、その心境変化の現れだったのでしょうか。
ぽつぽつさんも昔は「私」と同じように自分のためだけに詩を書いていたんでしょうね。ラストの寂しそうな顔にその葛藤や苦悩が透けて見えるような気がしました。
あと細かい指摘ですけど、「ぷらぷらさん」が途中から「ぽつぽつさん」に変わっているのは単なる書き間違えでしょうか?
#5 何かになれると思ってた。
ずっと主人公の独白だけ書かれているので山場もオチもないストーリーだけど、そこがいいと思いました。思春期に書かれた日記を盗み見たような甘酸っぱさを感じ、とても爽やかな気持ちになりました。
#6 道頓堀の喪失
ストーリーだけなら今期で一番面白いと思いました。上海で捕まった後、なぜ大阪に向かうのか意味不明なので、あえてその下りを入れる必要はなかったかもしれない。
離れ離れになったカイと馬がブラウン管越しに再会する下りは美しく、作者のセンスを感じました(馬を質に入れたのはカイの方だけど)。最後の結末は不条理すぎるけど、アリだと思う。惜しむらくは、てにをはの書き間違いが多すぎること。
#7 嫌み
まさかの宝石シリーズ第三弾。タイトルをアクアマリンとしなかったのは作者のこだわりと思われますが、真相は謎。
結婚式にあえてアクアマリンのブレスレットを着けたのは、由利子なりの最後の「嫌み」だったんでしょうね。
#8 Rebellion
えぬじぃさんの作品はいつも千文字とは思えないスケールの大きさがあって楽しい。「物語を読み、物語を語ろうとも、人間は物語じゃない!」か。なるほどなぁ。