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読み込んでいるうちに藍沢颯太さんの「dive」の文章を私なりの文章におきかえてみたくなりました。そうする中で「dive」の良さが、確かに難解な漢字や英語の使用にあることもわかりました。そして、それ以外の部分も持って回った言い回しにしていることがマイナスに働いていることもわかりました。
これは感想の一種ということでご容赦くださいませ。やってて単純に楽しかったです。




「ダイブする」


 ビルの屋上に吹く金属的で気だるい風をうけながら、少年は右腕を突き出した。あお黒い血管が意思を表すかのようにその硝子の肌を走る。少年はうんざりした思いを込めてその右腕の爪を尖らせると、それでこの街を引っ掻いた。そうして生まれたタールのように黒い筋が眼下の人込みに飛び込むと、すぐさま同胞を求めるように不器用に軌道を変えた。それはうねうねと飛び回り、黒い遺伝子を秘めた自動車と人間達を選別し、気づかれないように足留めをする。その時――予兆だ! よどみなく、さかんに、遠くからやって来る! 少年はこの時を待っていた。波が来たのだ。まっ黒な波が狂ったように押し寄せる。黒い波はどおーっと街を呑み込んでしまう。少年は飛んだ。目の前の扉を押し開くように両腕をひろげ、ビルの屋上からダイブする。スピードがつく。空中を舞うだけだった黒い滴が、豪雨のごとく少年の白い肌に穴をあけてゆく。その中で少年の瞳から漏れていた光の筋が形をとりはじめ、全身を流線型に包み込む。着水。あっという間にさっきまで路上だった波の底に達する。そこは、黒くて、静かだった。少年は息を止めた。自動車も、人間達も、ここでは動くのをやめ、ただ黙して沈んでいる。なんと気高く、壮大で、美しいのだろう。少年はうっとりした。ほのかな快楽への誘いをおぼえながら、自分の中で入り乱れているイメージをすっかり解き放つと、少年は黒い海の渾沌の中で死んだ。

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