仮掲示板

87期感想1

短く漠然とした感想です。参考になるところだけ参考にしていただけると嬉しいです。


1 夏の終わりのクリムソン 三毛猫 澪さん 1000

これが世界観かしら、と思うような、なんだか温い布にくるまったような、不思議な気持ちになりました。ただこの作品の中では「私」とリョウヤを男女として区別しているわけだから、二人の間の何か致命的な違いというものが述べられていれば、最後の「きっとリョウヤの胸にも同じように響いたに違いない。」の一文が際立つように感じます。しかし1000文字。仮にそうしたとして今度はこの素敵な雰囲気が物足りなく感じてしまうのかも。読み手は非常に我儘ですね。


2 巨乳娘と貧乳娘 アンデッド 960

現実的か非現実的か分からなくなる話だなあ。乳は人の輪を広げる偉大なものっていう意見なら大賛成です。争いも起きるけど。話自体はサラッとしているのに、上手くサラッと読めなかったです。私のせいかな。一人称じゃなくて、三人称にした方が良い気もします。


3 九十八番に刺されて キリハラさん 1000

九十九番は人を刺さないのかしらん。とか色々想像すると楽しいですね。吸血鬼とかゾンビみたいに、襲われたその人も変わってしまうというのはよくあるけど、あ、繰り上がっちゃうんだ、みたいな拍子抜けが非常に心地いい。ただそう感じた矢先に、最後の一文がゾンビとか吸血鬼ものにありがちなものになっているので、おや?と思う。九十八番に刺され、九十九番になる。その設定をもっと勿体ぶってほしかったなと感じました。


4 人形の涙 近江舞子さん 1000

この話は滑稽な感じに書いた方がもっと面白くなるんじゃないかなと。個人の味方をするくらいの神様だから、もっとフランクで理不尽だったり。「ある日、悲しみにくれる彼女を見かねて、男の妻を事故で殺してしまった。」とかの文章を、たとえば「あんまりに彼女が泣くから、男の妻を生命保険の広告看板の下敷きにした。」みたいなナンセンスなものにしてみたり。内容がしっかりしているだけに、そう思いました。


5 ついカッとなってやった、今は反省している。 リバーさん 946

怖いなあ。バナナフィッシュ思い出したの私だけですか。
しかしなんと言っていいかわからない。これから向かう処への恐怖か犯罪者たちの心理描写かファンタジーか。一番書きたかったのは何なのだろう。


6 手紙 尚文産商堂さん 1000

「君」は死んでいる、と考えていいのかしらん。でもだとしたら「俺」は何に手紙を書いているのかしらん。そういう困惑を狙っているのだとしたらまさしく成功。ただすっきりしないなあ。モンブランの栗を取られた気分。


7 硝煙を思う 菊尾さん 867

仕方のない人というフレーズは好きです。若干読みにくさを感じるけれど雰囲気が好きだなあ。題名から血なまぐさいものを想像して勝手に力を入れていた体が、ゆるーっとやわらかくなっていく感じがたまらない。


8 『悲しい話』と朝焼けの炎 二階堂てい 708

主人公の主張なのか筆者の主張なのか分からないところがあるっていうのが正直な感想です。最後を三人称にする必要あったのかな。「彼」「彼女」で区分しなくては出来ないことだったのかな、そう思いました。


9 或る心地好く耐え難き話 くわず 1000

夫婦間の一方的に思える会話って静かに迫ってくるようで良いですね。夫のこういう哲学的な発言は日常茶飯事で、相手にしていたらきりがないのかな、とか、そういう想像が出来て面白かったです。


10 今夜の彼女は A- 757

一人の女のイタイ空回り具合は良く出てるなあと思います。ただ本当に書きたかったのってそこなのかな、もっと他の所があったんじゃないのかな。そんな気がしてしまいました。残った文字数でやれることは幾つかあるのではないかと。


11 負われ追われて終われ 西都シン 980

題名のとおり疾走感はありました。慌ただしい。ほんと自分の言いたいことべらべらしゃべって去っていくって感じで、置いてけぼりにされた読後感は狙ったものだったらすごいなあと感じました。ただ非日常って言葉にひっかかったなあ。ピクルス取る事がそんなに日常からかけ離れていることなのかなあと思ったり。


12 はじまりにむけて 金武宗基 963

好きだって公言しちゃってるんで、何言っても感想にならないでしょうが。言葉の選び方か単にリズムか、考えても納得できる答えは出てこないんでしょうね。


13 溜息望星 おひるねX 1000

「雰囲気が停滞しているんじゃないか」このフレーズ好きです。面白かったなあ、話の雰囲気がまさに停滞していて、それが良い感じ。ただ最後が三人称なのか一人称視点なのかっていう処に引っかかりました。


14 すみません私が犯人です。 藻朱 995

世界終末系とくくれるほど話数の多いこの題材。もっと小規模の方が面白かったと思います。隣の家ふっ飛ばすぐらいの。世界って言うとピンとこないんだよなあ。


15 ストロベリーキャンディ 笹乃 901

その場の雰囲気が想像しづらいと感じました。台詞が野暮ったいのかな、思い出は美化されてはっきりと覚えていないものだから、細かい台詞が出てくると嘘くさく思ってしまう処があるんじゃないかと。味は覚えているけど、それが何だったか全く思いだせないって方が切なくないかな。そんなことないのか。初恋って難しい。


16 茜色ノスタルジー かやこ 982

「卵、産むしね」がなんかいい。茜ちゃんはそれ以外思いつかなかったんだろうなと勝手に想像してしまう。とにかく綺麗で余計なとこが一切無いっていう処に、すごいなと感じました。


17 祝福?何それ食べれるの? のい 966

うーん、ヤマシタトモコさんの漫画、読んだことありませんでしたら是非読んでみてください。「ベイビーハートに釘」とか、BLに全く興味がなくても相当面白く読めますし、主人公に入り込めます。そう思いました。


18 桜の少女 圧散 631

まだ色々語れることはあったんじゃないかと思ってしまう。感想に困るな。


19 告白 借る刊 1000

「あのゴミ箱が俺の目の前で口を開けて立っていた。」ってちょっと唐突な擬人だなあ。第一印象が人のすべてではない、というのが、極めて最悪な形で発覚したってことでいいんでしょうか。実際に起こりそうですよねこういうこと。


20 サンタさんへ 高橋唯 999

犬かよっ、と思って力が抜けたのでその後はさらっと読めました。主人公がおじいちゃんっぽい若者みたいな雰囲気で面白い。実は犬でした―というのをオチに持ってかなかったのは上手いなと思いました。ただその後が失速したようにも思います。


21 とちかん 謙悟 823

読みにくい・・・、そう思いながら読んでいる読者を想像してくつくつ笑っているんだろうか畜生、と思いつつやっぱ最後まで読んだ。面白かったな。絶対探究しないけど。


22 レシート 狩馬映太郎 1000

考えても、考えた分だけの答えは返ってこない。もやもや。文豪達のアホい話の方が見ていて気持ちいいと不毛なことを思う。百円本って切ないですよね。


23 雪、死、 みうら 1000

面白かったです。こういう仕掛けは過去何度かあったんだろうけど、別に気にならないしその過去あった中でもよく出来ているのではないかと。発想と文章力って掛け算だ、と感じて勝手に切なくなりました。


24 青ずきんちゃん 笹帽子 1000

この題材は相当むずかしいよなあ。童話ってだけでハードルぐんぐん上がっていくよ。と思いつつもオオカミとすれた女の子の会話は可愛い。でも軽いノリと物語の寂しさが噛み合ってないかな。笑える文章も相当難しいので応援。


25 不条理な邸宅 クマの子 1000

場所を想像すると何とも言えないぞっとした気分になって楽しかったです。夢日記的な感じかな。他人の夢って別世界で心底楽しい。

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