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 倉井くんの吐きだした煙が天井のない教会に差し込む夕光の中で渦を巻く。倉井くんは虚ろな目でその辺りを眺めている。あたしも同じような目をしているはずだ。一昨日から一睡もしていない。
「ねぇ、ちょうだい」
 あたしが空いている右手を伸ばすと、暗井くんはにやっと笑って咥えていた煙草を手渡した。コンビを組んで三番目に会ったあたしを思い出したのだろう。いい心がけだ、おまえもあのミリタリーオタクを見習えよ、とか考えているのだ。そしてそして、軍服なのに下はスカート、とかいう意味不明な格好をさせたいと妄想しているのだ。あーあ、ホーカ族ラブなあの倉井くんと組んでた頃が恋しいよ。なんでこんな倉井くんに殺されたっ、暗井くんっっ!!
「いくぞ」
 日が沈んだので出発。さんざん咳き込んだおかげで頭は冴えている。なので
どうしてこうこそこそ移動せにゃならんのだどうして皆あたしをほうっておいてくれんのだ別に誰があたしだって構わんではないかあたし同士で殺し合って唯一無二のあたしになるってそれに一体どんな旨味が存在するというのかまるでわからんじつにわからん などと詮ないことをぶつぶつぶつぶつ考えてしまうわけである。
 ちくしょう。紋切型どもめ。あたしは疲れたぞいい加減。
 六時間ぶっ通しで歩いてようやく休憩。廃車が転がっていたのでそこでさすがに睡眠をとることに決める。しっかし死体だけはたくさん転がってたなー。あたしと倉井くんのは見かけなかったけど、ま、案外近くに転がってるんだろうな。 体が揺れるので目を覚ます。眩しい、朝だ、と思うのと同時に、ああまた新たな倉井くんに替わったのだと悟る。あたしが揺れているのは倉井くんが腰を振っているせいであり、そんなことをするのはあたしと付き合いの浅い朝井くんなのであり、またこいつが「倉井くん」であるという確信は股に当たるものがまったく硬くなっていないという例の特徴から得られる――しっかしあたしって倉井遭遇率高っ!
 車を降りると旧倉井くんが捨ててあった。
 まあ、いい奴ではあったよな、と手を合わせてから車内に残っている新倉井くんの姿を検めようと振り返った瞬間、まず背中に、息が詰まり、体中に衝撃が走り、次々に走り、車のドアにぐいぐい押しつけられ強制ダンス。ビーハイブ。新倉井くん諸共ジ・エンド。あなたを撃ったのは相葉さんでした。
 リトライしますか?
いまをいきる!!い〜まーを生きるだッッ
つばき飛んでるよ。


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