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本文: 〉#1 〉最後の色相 〉 〉色のどぎつさがなくて、明るい。鮮やかな記憶、殺風景な今、そして未来のほのかな桃色。具体的な色の登場が最小限に抑えられていて、それが効果的だと思った。 〉 〉#3 〉愛の渇望 〉 〉ここで叫ばれている愛は相手との同化の要求と思える。その先にあるものは肉体的・精神的同化、つまり自分の死だろうか。 〉 〉#4 〉人間型 〉 〉自分を打ち砕いて再構築して別の人間になる、という発想がよかった。何かを食べたり、取り込んだりじゃなくて、あくまで自己完結的にというところが、独りよがりな感じが出ている。元彼女を分解する言葉にふっとSHISHAMOが出てくるところ、急に現代的になってよかった。 〉 〉#5 〉魔女会議 〉 〉漫画みたいだと思った。最後の「こういう感じでいいんじゃない?」は、夜十時のグダグダ感が出ていてよかった。 〉 〉#6 〉アンドロメダ 〉 〉過去の出来事を銀河に重ね合わせて怒涛のように思い出す。焦点を宇宙の一点に合わせると、それが無数の星の集合体であることに気付き、自分を取り囲む思い出に意識が向く。ばかになった自分のレンズを目の前の女性にフォーカスするためにキリキリと合わす。近くて遠く、一つでたくさん。面白かった。 〉 〉#7 〉誕生 〉 〉身の回りにあふれる言葉にうるささを感じることはある。雛は文字の意味を得る機会を永久に失ってしまったのだろうか。そうすると、雛が将来感じる恐怖とはどのような類のものだろう。 〉 〉#8 〉小説機械 〉 〉忠実に話が脱線するところが、計算されていると思えば機械的だし、機械の人間的経験の蓄積によるものだと思えば人間臭い。南極のくだりが、わざわざ「これは小説ですよ」と言っているようで面白い。機械なりの人間的経験によって機械は小説をひねり出さねばならない。それは単なる機械の身辺雑記の記録にとどまって……いけないことはないのだけど、それでも小説としては成立するのだけど、南極の飛躍は機械が導き出した小説の形として感じられ、面白い。 〉 〉#9 〉彼岸の森 〉 〉主人公が冷静だからか、残酷な描写が少ないからか、父母弟の死が淡々としていて、いやな感じがしない。冷静だからといったけど、そうではないのかも。 〉「ブレーキは壊れたままだ」「死は歓迎されている」など、断定的な文が続くので、主人公に話の流れを任せて安心して読めるのかもしれない。面白かった。 〉 〉#10 〉双眼鏡 〉 〉一読して、作品内でも言及されている「くねくね」の話を思い出し、恐怖を覚えた。なので、その怪談をより仔細に書いた小説かな、と思っていたが、違った。これは超克の話。姉は自殺し、母も精神を病んだが、それでも生きている 〉し、不幸におぼれはしない。双眼鏡の前の母の目の色。怪談などに回収されてたまるかというやり場のない怒りと、それでも前に進むという気持ちが、はっきり書かれていないけれど感じられた。 〉 〉#11 〉スカーフのゆれかた 〉 〉ひらひら生きる。ふらふらでも、へらへらでもない。読みやすい文章もひらひらを体現していると思った。
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