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#1 怠け女

(予選と同じ感想です)
植物状態のような何かの病気にかかっているわけではなく、ただただ怠惰なためほとんど動かなくなってしまったということだろうか。夫が妻に対して行っていることは病気の介護と同じようなことだけれど、美しい妻を独占しているような感覚や、「人形」という表現を見ると、いわゆるラブドールを連想してしまう。なので、「女に「生」を見た」と言っても、どこか虚しいものを感じるし、本当の「生」ではないような気がする。設定やストーリーには面白い部分があるが、空虚な話だなと思う。


#2 蜘蛛

ただの蜘蛛の話に見せかけて、実はとんでもない猟奇殺人の話だったというオチか。殺人を犯した夫の奇妙な精神状態を表現したかったからこうなったのかもしれないが、後半は話がわかりづらい。
それから、ただ残虐なものを読まされても、こちらは気分が沈むだけだ。


#3 ぬるっと暑いこんな日は

小説というよりエッセイ。小説っぽい部分もあるが、実質的には自分の意見のようなものを書いているだけだ。
内容については、相手に会いたい気分だから電話をかけるという当たり前のことを確認しているだけで、確かにそうだとは思うけど、それだけでは物足りない気がする。


#4 ドライサーディン

ただ男女のとりとめのない会話が続いていくだけ。雰囲気を楽しめということだろうか。よく分からない。


#5 おでんわ

読むのに疲れたので途中で読むのをやめた。自分の表現をただ押し付けるだけでは、作品は成立しないと思う。


#6 桃太郎

いくつかの物語をそれぞれ分解して、でたらめな組み合わせをしたり、新しい要素を加えてみたりという実験的な作品。しかし、実験をしてみたということ以上のものは感じられない。
小説には、表現することと伝えることの両方が重要だと思うが、この作品は表現することのほうに重心が偏っているように思える。


#7 君が好きで。

小説というより詩だと思う。自分の考えや気持ちをただ書いただけでは小説にはならないんじゃないだろうか。
内容については、主人公の願望がそのまま描かれているだけであり、主人公の中で気持ちが自己完結している。小説というのは、一つの世界を描くことであり、その世界には自分だけではなく他者がいるのだから自己完結だけでは済まなくなる。だからこそ、そこに物語が生まれるのであり、それが小説になるのだと思う。


#8 ぼたんゆき

変わった異性との変わった交流というのは面白いが、今一つその異性のキャラクターが弱いというか、キャラを描き切れていない気がする。それに主人公との関係性もよく分からないので、二人のやりとりもふわふわしていて捉えどころがない。「変わった異性」というアイデアだけで書き始めたものの、物語がそれについていっていないという印象。


#9 Gustave

死体を糧にしているという一族や兄弟の奇怪さは伝わってくるが、何の説明もなく「狗」や「蛙」や「巨躯」がどうとかいう話の進め方になっているので、ずっと読み進んでいかないと何のことなのか分からない。不思議な雰囲気を出すためにあえてそうしているのかもしれないが、訳が分からなくなって途中で読むのを止めたくなってしまう。
分かりやすさと演出のバランスを考えることも必要なのではないか。


#11 新しい

(予選と同じ感想です)
ちゃんとした死と、ちゃんとしてない死の違いや、死を受けいれられることと、受け入れられないことの違いは何だろうなということを考えてしまった。単なる気持ちの問題だけでなく、社会の中でどう生きてきたかという問題も絡んでいて、だから死というものが物語になるのだろうと思った。
この作品の最後は「まともに死ねなかった父親の息子はどうせまともに育ってない。家族はできない。」と、ネガティブなことを言っているけれど、どこか開き直ったような強さも感じる。


#12 私立うっふん学園

(予選と同じ感想です)
どこかにありそうな馬鹿げた趣向の風俗店。笑える部分が随所にあってそれは良かったのだけど、ありがちな話かなと思う(終わりの部分は多少オリジナリティがあると思うが)。
それから、店のシステムが今一つ分からないので、「五万円」というのがぼったくりの金額なのかどうかが少し分かりにくいし、仮にぼったくりの店であるなら「大阪では無償化」という反論ともつかない反論だけで引き下がるだろうか(店の奥から恐い人が出てくるという展開はないのか)。あと、大阪が舞台になっているようだが、なぜ登場人物は関西弁を喋らないのだろう。

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