お邪魔いたします。
〉〉〉それから三浦さんが書き換えやってましたよ。
〉〉〉ついったのidがmiuraaruimの人です。
〉〉
〉〉 読ませていただきました。
〉〉 ありすさんはいかがでした?
〉
〉うーん。「こなした」な、って感じがしました。「用件をこなした」って感じが。
〉ただ、スピード感は三浦さんのほうが良かった。
というやりとりに出て来たやつです↓
「輪」
死んだと焦ったはずが寝汗まみれの不快感に打ち消されてしまう。ひどい夢だったのは確かなんだが。羽ばたきのしなるような音にぞっとしてカーテンを開け放つと、空色以上に青色な朝靄に複数の鳥が闊歩している。ぎゃーすぎゃーす煩いのに腹を立ててベランダへ乗り出すと、野良仕事に繰り出す老婆が砂利砂利いう音を立てて歩いていくのを見た。ぎゃーすぎゃーすがベランダの端に避難したのを見て、糞と羽根まみれの巣を箒で叩き壊した。途端にぎゃーすぎゃーすは鳩らしい猫なで声で抗議をはじめたが、俺はパックに入った市販品のように身綺麗な卵が割れて黄色く平たい舌を出す様に見蕩れていた。
粉々にした巣を散水によって排水溝へ追いやると、こちらは何故か藁屑糞尿をまとった無傷の卵を回収して丹念に水洗いする。ケータイが明滅しない。ほとんどピンポン玉のようなまあるい卵は真由のほっぺたの色をしていた。真由のあそこをのぞきこむ市原。静かだと思ったら消えてなくなっていた鳩が。さっきの老婆が物干竿に狸を吊っている。前足を下に。
卒業アルバムやらくたくたのいくつもの外野手グローブやら小中の教科書ノートやらの沈殿した腐海と格闘した結果、遂に目標の天秤を押入れからサルベージしおおせると、さっきの卵を片方の皿に戴く。ピンセットを使ってハート型の分銅を反対の皿に一枚一枚、願を掛けるように置いていく。老婆は、くたばった狸に金槌で何かをすると、今度は包丁に持ち替えてその先っちょを狸の股の間でちょろちょろ動かしてみせた。真由は入口で焦らすと可愛い顔をするといふ。天秤はそよがない。裂け目に挿し込んだ指を下へとひっぱり、ぎしぎし竿をあえがせて皮を剥いでいく。天秤がそよぎません。中からは白濁した液体まみれの裸の真由が現れる。震えている。俺の手も。分銅が尽き、出せなかった恋文三通、真由がくれたフリスク二粒を机の奥からひっぱりだしてきて載せる。……そよがない! 俺は覚悟した。ケータイを奉げるのだ。そして……そよがない――
片方の皿に腰掛けたが結果は同じだった。
老婆が、調理済みの真由…じゃなかった狸の肉をごちそうしてくれた。オムレツのように柔らかく、玉子のような味が口にひろがった。腹がふくれると、俺の座っていた皿が少しだけ沈んだ。俺は老婆にもっと振舞うよう命令し、八時間たべつづけ、腹が割け、鳩についばまれ、もちろん死んだのだった。きっと夢のなかで。
高橋唯さんの「輪」は、今期一番好きな作品でした。私なら冒頭をどう書くだろうかと考えていたら、だったら全部書いちゃえというそんな出来心からなのでオリジナルが不満だとか批評的に書き換えたとかそういうことはまったくありません。と一応。あと、書いてて楽しかった。
〉オリジナルが不満だとか批評的に書き換えたとかそういうことはまったくありません。と一応。あと、書いてて楽しかった。
まさか。そんな風には思いませんし、そうだとしてもなんの問題もありません。とこちらも一応。
僕も書いていて楽しかったのでよかった。