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12 エゴいスタア;金武宗基

 まるで古文書を解読している気分になる。25回ほど読み返してみて、少しだけ見えてくるものがあった。それは、人と人とを繋ぐ“情”というものだろうか。小説の中で使われる博多弁らしき方言は、まさに、ある種の“情”で繋がりあった人びとの言葉であるし、「じっちゃん」のアルバイトである郵便配達も、誰かの“情”を誰かに伝えることで、人と人を繋ぐという役割を持った仕事である。
 それから、熱い“情”で結ばれた「じっちゃん」と「ばあちゃん」に合掌して敬意を表するサトルと姉の姿勢には、とても美しいものがあると思う。
 最後のほうでサトルが口にした「ありがとう」の言葉で、“情”がちゃんと継承されたことが確認される。
 こんなところでしょうか。



13 夏の魔物。;のい

 夏休みの宿題がメインのテーマではあるが、本当は親子の幸せな風景を描きたかったのではないかと感じた。『「ただいまーアイス買ってきたよ」……(略)……「私バニラ!」「はいはい」』など親子の会話の中に、さりげなく幸せが滲んでいるような気がするし、どこかホッとさせられるものがある。
 全体的な雰囲気はブログの日記風。軽くて押し付けがましくない感じはとてもいいのですが、そのまま素通りされてしまう可能性もあるように思います。


14 超宇宙戦機ボルティック・ドライオン;彼岸堂

 勝手な想像だが、この話は今まさに自殺しようとしている主人公が、死の直前に見た幻想なのではないか、と思えてくる。
 主人公は、自殺の確たる理由を見出だせないまま自殺に望んでいるようにも見えるし、その理由を探すべく幻想の世界に飛び込んでいったと考えてもおかしくはないだろう。主人公は幻想の中で、“地球侵略を目論むガイスト星人と戦う”という重要な役割を与えられるが、平和が訪れたとたんにその役割を失い、さらには邪魔者あつかいまでされ、理不尽にもこの世から葬り去られるという運命に至る。そして主人公は『「そうだ現実ってこういうものだった」』と、あきらめにも似た納得のようなものを手に入れて、死ぬ覚悟を決める。
 いずれにしてもこの小説は、“現実なんていくら努力しても無駄、死んだほうがまし”と言っているだけのような気がします。本当にそれでいいんでしょうか。



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