仮掲示板

第136期全感想

小説を読むのは書くより難しいです。
点は10点満点。


1. 4/10
地方に住む高卒アルバイターの女の子が幼なじみの男の子とのうやむやな関係に釈然としないながらも関係に答えを出すことから逃げている様子。
忘れっぽく、考えることに対して忍耐力のない女の子を指して男の子は楽天的と評するが、読んでいる私には決して楽天的には見えないというのがこの作品の勘所。

2. 3/10
自己と他者の関係を現実と夢の関係に絡め、そこにさらに肉体と意思の関係をも絡めての問答。
自己・現実が確立してこその他者・夢であるという結論に、肉体あっての意思であるという考えが含まれているところに面白味がある。

3. 3/10
他人に見せたら軽蔑される可能性のある秘密を記したノートを本棚に隠した青年が、恋人にそのノートの存在を見られ秘密を打ち明けるか否か懊悩していることを書いた手記。
「僕にかかる重力が月並みになったのかもしれない」というフレーズはわかりづらいけどちょっと面白い。

4. 2/10
個人の見解と言い張れば議論は成立しないと言い、自殺が絶えないのは自分が不完全であることを理由に他人を煩わせることに抵抗のない者が増えたためだと言う語り手が、父親に殴られ家を追い出されたのは自分が正論を避けて語ったからだと思う。
激怒した父親のイメージがトマトであるというところがポイント。

5. 3/10
かつて二股をかけた女の娘が自分の娘の同級生で仲良くしていると知った男が昔を振り返る。
男の危機感はまだ女の子二人に説教される怪人に自分を投影しない程度であるところに注目。

6. 3/10
クラスの違う友人がそのクラスの女の子グループから自分の悪口を聞かされて傷ついていることに胸を傷める女の子の思い。
一行目がキャッチー。

7. 4/10
夫は妻の妹と不倫しており、妻は妹の夫と不倫している。この二人の娘は母の妹の二人の息子と関係を持っており、娘の弟はそうとは知らず母の妹に欲情している。
妻の妹の次男が実は妻の子であるというのが恐ろしい。

8. 4/10
くたくたになって仕事から帰って来た女が、会社を解雇されて以来、専業主夫となった夫にしつこくスキンシップを求められて追い詰められる。
女の養分を吸って生きているような夫が面白い。

9. 5/10
鷹になった夢を見て起きた語り手が、娘が灰鷹に襲われる幻影を見て娘の葬式が今夜おこなわれることを思い出すが娘がどこの芸姑だったかは思い出せない。
振袖と赤火の二度を頂点とする赤のグラデーションに注目。
「葬礼の片寄せてゆく鷹野かな」は実在の俳人、横井也有の句(と思われる)。

10. 3/10
貯金を切り崩して姉と暮らしている女が、姉にあんた遊ばれてると警告されている恋人に対して希望を抱く。
靴下を脱ぎ散らかし、その事を咎めない恋人のいることが、大きくはないささやかな夢のように語られている。

11. 3/10
小人に胴と左腕と左脚を切り刻まれる夢を見た現在無職の男が、一歩を踏み出すとは心の一歩のことであると思い至る。
こういうことは新年に誓いがちですよね。

12. 6/10
チャット上でのみ情交に及ぶ相手のいる女が、誰も彼も自分の名前を忘れ去ってしまう世界を望み、死ぬのではなく消えてしまいたいと語るその相手との出会いに感激する。
自分一人の肉体ではどうにもならないはずの情交も子供も擬似的、他者が識別の頼りとする名前も無い、この状態でおこなわれるコミュニケーションを女は世界で最後のデザートに喩える。
五感すべてにふれていることに注目。

13. 2/10
語り手が自作をひとつ思い出しつつ春の句を挙げ感想を述べる。
挙げられるのはみんな実在の俳人。
「自作をなしいて行く」というのは何て意味でしょうか?

14. 4/10
核ミサイルがディズニーランドの周辺に落ち、人民の生存の保持を宣する集団が新政府樹立を呼びかけ、人間の肉や内臓が調理用として売られている世の中で、神様に名前をもらったという語り手がスーパーで食材を調達する。
危機感を持つのは子供と人民を先導しようとする者だけで、神様から名前を授かった特別な存在である語り手はこの状況に慣れてしまっているようだ。

15. 4/10
駐車場に集まる六匹の猫の紹介。
外飼い猫文化の衰亡を猫たちは知らない。


おしまい

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