高橋さんあての返信です。
こんにちは。
〉両者を混ぜたとき「暴力と治癒・再生」というテーマが浮かびました。
〉登場人物は、恵梨(松本)、絵里(僕)、伊藤(浜田)です。
〉それぞれに理由をつけて恵梨をいたぶるような内容にしようかと考えて、まだ全然まとまってなかったりします。
なるほどー、やはり高橋さんとしては「いたぶる」という箇所は書かずにいられないところなんですね。興味深いです。
〉1002さんのアイディア内で「ブランコで妄想する僕」や、「ある晴れた〜」に展開していくさまには驚きました。
〉それに、最後に放り投げましたね。
〉画面の前で「ええええ!」と声を上げてしまいましたよ。
〉これ盗みたいなあ。でも難しいなあ。
私が提案してみたのは、世間話をしていくうちに空想の企画ができあがった……みたいなノリなので、盗むなどという物騒な表現などつかわず、どーぞ使えるアイデアはつかってください。
〉実は「群像劇効果」は読ませてもらっていたのですが、まだ理解しきれていないんですよね。
〉ただ、今回の1002さんのを見ると、僕の考え方は「群像劇効果」とは逆なのかなあと思いました。
なるほど。私の印象としては、高橋さんは小説を書きたいという動機がたぶんはっきりしてるんですね。たとえば「仁侠映画をとりたい」「アダルトをとりたい」「ファンタジーをつくりたい」みたいな、はっきりしたやりたいテーマ(それがたとえ暴力描写であっても)
がある。それは物書きにとってとても武器になることですね、たぶん。なによりも「なぜ(こんなに儲けないのに)書いてるのだ」という悩みにおそわれやすい稼業ではとても大事なことだと思う。
ただ、「これを書きたい」という作者の思いが強すぎると、「それは読みたくない」という読者は必然的に離れていくのは当然であって、まあ、その覚悟はあるのか、ということと、いや、書きたいテーマは決っているけど読み手を自分から選ぶのではなく選ばれる側になりたい、というのであれば、そういうときに「群像劇効果」というのが効果的になると思うんですよ。
私の理解した範囲では、群像劇というのは、作者がこれを書きたい、と最初につくってしまわずにひとまず登場人物たちのデッサンから始めることで、物語が登場人物たちの勝手な行動によって動き出す、とでも言えばいいんだろうか。作者だってある程度展開をきめていても、人物たちの動き次第ではどうなるかわからない。読者はもっとどうなっていくのかわからないから、ジャンルわけ不能になるし、ラストがすっきりしないまま終るかもしれない。
でも、それがよくできた群像劇であった場合、きっと読者は自分もその小説の中の一員になったような、小説を体験した気分になるかもしれないし、その一方で「ホラー」「SF」とジャンルが明確で筋も「おきまり」な小説を読むと、期待通りに読み終える一方で、読者は「これは本の話」と読書と自分の生活を完全に割り切ってしまうだろう。よくハヤカワのハードボイルド探偵小説なんか読むと、私なんかすごくのめりこむのにすぐその本の内容をまるっきり忘れてしまう。それに比べればいわゆるドストエフスキーやらディケンズやらバルザック、谷崎といった文豪といわれる作家たちの長編は、登場人物がいっぱいでてきて、何をやっているのかよくわからないままに話がどんどん盛り上がっていって、読み終えてしまうのだが、読後数年たったころに、ふと小説のワンシーンがなぜか思い出されたり(ドストエフスキーのカラマーゾフで登場人物が少年に石をなげられるところとか、今うかびました)することがあります。まあ神は細部に宿るというやつですね。深みとか味わいともいいかえられるでしょう。
壱倉さんの「群像劇効果」の話がおもしろかったのは、群像劇がいいことばかりでなくて、キャラクターをつくりすぎて、キャラクターばかりが目だってしまうと、それもまたつまらない、という考察が入っていることや、やはり、バランスをとることが書かれていることに私は感心しました。群像劇になりすぎても、というのはありますね。
しかしそれにしても……そこまで「残虐性」を追求する高橋さんには興味がわきますねえ。何か手本にしているような本や映画などあったら、教えてください。本当はそもそもなぜ「残虐性」を追い求めるのか、ということをききたいですが、それは野暮な質問でしょうね。
次期の作品も楽しみにしてます(誤読するかもしれませんが)。また、文学賞については、「短編」とおなじでいきなり「優勝」を狙うと書けなくなるので、気楽に投稿してみる――しかし、投稿はつづけていく、ことがいいのでは(←まあ私のことなんですが)と思っています。こんなとこでライバルだ、ああだこーだとケチなこと言ってると余計ダメになると思ってるんで、私は「短編」参加者からもっと長編投稿について、あるいは作品をつくっていく過程についての意見がきけたらいいなあ、どういう書き方をするのか、とか文芸サイトにしては「文学オタク」「文字職人」が少ないのでは、と思っていたので、こういうやりとりに感謝します。ぜひ投稿しましょう。あまり参考にならなかったかもしれませんが、では。