12 エゴいスタア 630
趣味が細い。
・台詞で構成する。
・「ナウなヤンガーやんげすと」などふざけた言い回しをする。
といった趣味を感じるのだけど、それらアイディアに新しさを感じられない。
「たっはあ〜」という冒頭も趣味が悪い。お目にかかりたくない言葉だ。「粋(わく)だねえ〜。わくわくするわい」というだじゃれもひどくないか。
13 夏の魔物。 964
これは楽しそうで良かった。書いている人はとにかく楽しんで書いたんじゃないか。
悪いとこを指摘するとしたら、
・文章作法とかのルールが守られていないから外野がうるさい、
・「夏休みは計画的に」というのがきれいにまとめすぎている、
の2点。
とにかく、楽しいことしか書かれていないのが良いなあと思う。
そういう気持ちが根っこにないと、なにをやってもダメなんだろう。
14 超宇宙戦機ボルティック・ドライオン 1000
きれいな型だ。
シンプルすぎる。人数を増やすとか、時間を延長するとか、いろいろ装飾は考えられたんじゃないだろうか。
15 ふえるワカメ 1000
「考察的」「考証的」「内省的」な文学の型を感じる。
こういった型は、だいたい
「ワカメが膨張するという事実はまあいいとして、それはおいとくとして、じゃあ膨張するまえのワカメはどこにあるのか」という部分で、
単に語調を整えるだけだめに「それはおいとくとして」などが置かれている。
この型ひとつでひとつの作品を押し通すのはシンプルすぎる。
16 コント「ブランコと僕」 1000
色々と盛り込もうとしている要素を感じるのだけれど、それがまとめ上がっていない印象があった。
ただ新しいものが浮かび上がりそうな予感はある。
構造的に読むと、コントから笑いを抜いてパロディすること、登場人物が多いことによる視点の多様さ、でいじめの痛々しい様子が際立っている。
問題なのは文章の趣味なのだと思う。
「げらげらと笑い転げる」「見下すような冷ややかな視線」「小枝をひゅんひゅんしならせて」などは陳腐な表現だ。どこかで見たような微妙に凝った言い回しをするくらいなら、簡素に表したほうがいいと思う。
この作品の面白さは「視点の多用さ」ではないか。板尾はじっと見つめる執着の目だとか、「僕」は第三者的だとか、松本は見下すような視線とか。浜田の行為を複数の視点が眺めているという状況が面白い。その視点に絞って文章をまとめ上げていくといいんじゃないか。
18 午後五時四十五分の悲鳴 1000
「心臓を知悉してしまった」なんていう良いフレーズがもったいなかった。どうして陳腐なラブストーリーにしてしまったのか。
例えば「会社の昼休み、「七秒七七できたら皆でキスしたげるから、失敗したらお昼ごちそうして」と女子社員が男達をからかっている。」という部分などは、前後の脈絡からは必然性がなく、そういう意味で、予定調和的な展開。この作品の中でなければ、唐突すぎる展開だ。これが読んでいてスムーズに通るのは、「知悉」や「兎の心臓」といったイメージの推進力によるものだと思う。
このイメージの力をどうして平凡な恋愛の顛末に使用してしまったのか。結局、風変わりな恋愛小説になってしまっただけだ。
19 恋心談議 1000
型。
「まぁ、……な」が面白かった。そんな勿体つけなくても。
20 『幻獣料亭』 1000
型。
食べ物はもっとおいしそうに書けるはずだ。
今月の「ふえるワカメ」のような考証的要素を盛り込んでもよかったのではないか。
21 イゾルデ 1000
型。
なにもせずに1000文字でケータイ小説の長いストーリーを書ききったほうが面白かったんじゃないだろうか。
22 箱庭 1000
ある話と、ある話の展開と決着を同期させるのも、ひとつの型。
それよりも問題なのは文章のほう。読みにくい。
「大学の友人が自分で作ったと云う箱庭を、彼の手から渡された。」という冒頭など、同一人物が「友人」「自分」「彼」と3パターンで書かれて特に分かりにくい。
って友達が言ってました。
23 夏の鐘 987
しゃれた会話。ある物と、無関係な物を結びつけたイメージ。という型。
イメージが推進力になって勝手に話が進む。これも新しいものが浮かび上がる予感はあるんだけど、ただひたすらに気持良い方向に行ってるので、これならこれでもういいのかね。
今月の8や18についても言えることだけれど、完成度は高い。けれど、完成度が高いと感じられること自体が、既存の面白さと同じ世界にあるってことじゃないだろうか。
24 飼育の関係 1000
文章が拙い。
例えば「元は白であろう毛は汚れて薄墨色」は、「汚れて」と入れなくても「薄墨色」で汚れているということは伝わる。
「死に絶えたが如く動きの一切を失った」といった文章も既視感がある。
また「天は忌まわしいシアンデリアのようだ」など、意味が分からない。忌まわしいシャンデリアってなんだ?
25 師の教え 1000
型。
冒頭、いきなり動きが始まってしまうので文脈が分からない。
26 その信仰は崩れない 1000
型。
もうちょっとテーマに踏み込んでも良かったのではないか。私は好きではないけれども、人間心理の描写は小説好きの方々には必要とされている。なぜ仮想世界に没頭してしまうのか。
また「虫の音」を場面の切り替えに使っていて、こういうところも小説好きの方々には必要とされるんだろうと思った。