21 イゾルデ;みうら
“トリスタンとイゾルデ”はドイツの古い伝説だったと思うのだが、内容を全く知らないので、この小説との関連性はよく分からない。
この小説をよむ限りでは、トリスタンというのは、イゾルデの空想の恋人らしい(肉体を持たないという説明だったので)。途中で不意に登場する「タントリス」というのは、「トリスタン」のアナグラム(文字の並べ変え)なのか? 「タントリス」は(物語の中での)実在の人物(恋人?)で、「トリスタン」は空想の人物(恋人)ということなのか? だからアナグラムなのか? よく分からない。
いずれにせよ、“空想の恋人”のために(愛するために)自分の身をズタズタに傷つける女性、というモチーフには妙に魅かれるものがある。それは誰の心にも(イゾルデにとってのトリスタンのような)、自分の分身(「半身」)であり恋人であり魂であるような何かが存在するからであろう。
全体的にどこか透明で、ふわふわした感じがとてもいい。
“トリスタンとイゾルデ”の元々の話を読んでみたいし、ワーグナーを聴きたくなりました。
22 箱庭;クマの子
登場人物三人にたいして、箱庭人形二体というのが意味深である。もしかしたら箱庭の中には、もう一体の透明な、見えない人形が居るのかもしれない。しかし、主人公の友人はその一体の人形を表現することが出来なかった――あるいは表現しなかった――と考えてみるのも面白い。その透明な一体というのはきっと、誰にも何も求めない“無為”のような存在なのだろう。そしてその“無為”のような存在が、この物語全体を静かに見守っているような気がするのだ。
小説を書くという行為も、箱庭療法のような一種の心の治療行為かもしれないと思えることがあります。でも、書けば書くほど苦悩は深まるばかりで(笑)、癒されることなんてまずありませんよね。
23 夏の鐘;euReka
毎日、暑い日が続きますね……