#1 あてもない休日、あてもないセックス。(ウワノソラ。)
自分は純粋に百合かと思って読んだ。仮に一対一のピロートークだとしたら、仲睦まじくてほほえましいなと思う。
ただ、これがどんな物語、あるいは思想の上にあるものなのかが読めなかった。
一番印象に残ったのは最後の倒置法。仲睦まじさの余韻を残している。
#3 アスパラガスは夜の沈黙(ハギワラシンジ)
どういった経緯アスパラ星人が生まれたのか気になる。本来のアスパラガスからの飛躍が激しく、今期最も謎な作品だと感じた。
「私」がアスパラガス星から逃げ出したのは「暗さ」(暗い感情)を求めたからなのだろうか。幸福そうに目を閉じ眠っている地球人たちはほとんど死んだようなものなのかもしれない、と無理に考えれば、暗闇は一種の必要悪だと言えるのだろうが、木星のくだりも読むとそれだけがテーマとも思えない。
#4 赤ずきん(岩西 健治)
主人公は奇妙なほどしたたかで余裕を持っている。現実にこういう女性がいるのかは不明だが、いてはダメだとは思わない。ここはデリケートな要素を含む問題だが、「リアリティを装ったファンタジー、あるいはその逆を狙った虚構」という観点を以って自分はアリだと考える。
「オオカミではありません」と言いつつ制裁に容赦のない部分は、ある意味グリム童話的といえるのかもしれない(あんまり読んだことないけど)。そもそもオオカミはどちらかと言えば鮎喰のほうか。
#5 アイシテル(塩むすび)
作者は色にこだわりがあるのだろう。この作品における赤は禁断とか、狂気とか、危うさ、なんかの象徴であるように感じた。瓶の中でも部屋の中(瓶の外)でも赤色が溢れていてどことなく恐ろしい。ほかにも、「警告」についての記述など、印象的な表現が多かった。彼女にドタキャンされて不安ではあるのだろうが、穴から覗き見る、という格好は、主人公に対し無意識的な優越感や背徳感などのよろこびを与えているような気もする。
#6 機械の妹(euReka)
「欲望」っていうと、執着、野心、卑しさ、なんていうネバネバした意味合いで捉えてしまうのだが、妹が持っているというだけでなんだか可愛らしく思えてしまう。もちろん妹がどす黒いとんでもない欲望を持っていても良いが、「欲望」はつるつるした小石だというのでやっぱりかわいい。また、妹が宇宙人の欲望に当たって死んでしまってから、復活して宇宙に飛び立っていく(そして妹を迎えるためにタイムマシーンを作る)までの展開はタイトルや書き出しから予想ができず、想像力の旅に連れていかれて随分遠くに来たような読後感だった。これらは作者の発想力や想像力の賜物ではないだろうか。
#7 空(テックスロー)
ここでの空というのは遠回しに空想の空とか、空っぽの空とかを示しているように思う。さも当然のように声をかけた相手が赤の他人だった時点で読者としての想定が崩れたが、その後も流れるように文章が進んで、なんだか化かされているような感覚だった。そう感じさせるのは作者の筆力だと思う。
化かされて話の中身が無いようにも感じうるが、ただの空想、あるいは嘘からでも関係性が生じうることの提示、という面を見ると、内容としても興味深い。もっとも、追って勝手に「(色即是空)空即是色」という言葉を想起したが、これに対する自分の解釈と作品のテーマは異なるように思う。
冬のシンクの表現は良い。
#8 天使(qbc)
「物語」の説明は格好いいのだけど、天使は以前にも「俺」に物語の話をしている。それを他の面前で改めてするのは感受性に乏しい「俺」を辱めているようで、もしかするとこの天使は性格が悪いんじゃないだろうかと思ってしまった。
「俺」自身は、感情を全く持っていないわけではないものの(好奇心とか、笑う心とかはある)、複雑な感情は発達していない、または共感の能力がないなどの理由で、上手いこと物語を織ることができないのだろう。
雰囲気はかなり良い。
#9 たこ焼きを食べながら(ナイツ)
「俺」の友達への思いやりがよく描かれていると思うが、掘り下げていく余地はあるだろう。思いやりとは本質的に自己満足を動機とし、行為等の結果相手にプラスとなることで初めて正当化されるものだと考えている。この作品を読むだけでは「俺」の自己満足どまりとなっており、友達は「俺」のことを本当はどう考えているのか、あるいは土産のたこ焼きを結果としてどう受け取るのかが読みたいと思った。
あと「たこ焼きを食べながら」というのは、友達のもとに向かう途中のことなのだろうか。
全体的な話をすれば、前半の作品群は「あ」から始まるタイトルばかりなのが面白かったです(心ない1作品のせいでパーフェクトを逃していますが)。
先ほどの投稿に対し、標記のとおり訂正します。
〉#1 あてもない休日、あてもないセックス。(ウワノソラ。)
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〉自分は純粋に百合かと思って読んだ。仮に一対一のピロートークだとしたら、仲睦まじくてほほえましいなと思う。
〉ただ、これがどんな物語、あるいは思想の上にあるものなのかが読めなかった。
〉一番印象に残ったのは最後の倒置法。仲睦まじさの余韻を残している。
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〉#3 アスパラガスは夜の沈黙(ハギワラシンジ)
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〉どういった経緯アスパラ星人が生まれたのか気になる。本来のアスパラガスからの飛躍が激しく、今期最も謎な作品だと感じた。
〉「私」がアスパラガス星から逃げ出したのは「暗さ」(暗い感情)を求めたからなのだろうか。幸福そうに目を閉じ眠っている地球人たちはほとんど死んだようなものなのかもしれない、と無理に考えれば、暗闇は一種の必要悪だと言えるのだろうが、木星のくだりも読むとそれだけがテーマとも思えない。
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〉#4 赤ずきん(岩西 健治)
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〉主人公は奇妙なほどしたたかで余裕を持っている。現実にこういう女性がいるのかは不明だが、いてはダメだとは思わない。ここはデリケートな要素を含む問題だが、「リアリティを装ったファンタジー、あるいはその逆を狙った虚構」という観点を以って自分はアリだと考える。
〉「オオカミではありません」と言いつつ制裁に容赦のない部分は、ある意味グリム童話的といえるのかもしれない(あんまり読んだことないけど)。そもそもオオカミはどちらかと言えば鮎喰のほうか。
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〉#5 アイシテル(塩むすび)
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〉作者は色にこだわりがあるのだろう。この作品における赤は禁断とか、狂気とか、危うさ、なんかの象徴であるように感じた。瓶の中でも部屋の中(瓶の外)でも赤色が溢れていてどことなく恐ろしい。ほかにも、「警告」についての記述など、印象的な表現が多かった。彼女にドタキャンされて不安ではあるのだろうが、穴から覗き見る、という格好は、主人公に対し無意識的な優越感や背徳感などのよろこびを与えているような気もする。
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〉#6 機械の妹(euReka)
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〉「欲望」っていうと、執着、野心、卑しさ、なんていうネバネバした意味合いで捉えてしまうのだが、妹が持っているというだけでなんだか可愛らしく思えてしまう。もちろん妹がどす黒いとんでもない欲望を持っていても良いが、「欲望」はつるつるした小石だというのでやっぱりかわいい。また、妹が宇宙人の欲望に当たって死んでしまってから、復活して宇宙に飛び立っていく(そして妹を迎えるためにタイムマシーンを作る)までの展開はタイトルや書き出しから予想ができず、想像力の旅に連れていかれて随分遠くに来たような読後感だった。これらは作者の発想力や想像力の賜物ではないだろうか。
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〉#7 空(テックスロー)
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〉ここでの空というのは遠回しに空想の空とか、空っぽの空とかを示しているように思う。さも当然のように声をかけた相手が赤の他人だった時点で読者としての想定が崩れたが、その後も流れるように文章が進んで、なんだか化かされているような感覚だった。そう感じさせるのは作者の筆力だと思う。
〉化かされて話の中身が無いようにも感じうるが、ただの空想、あるいは嘘からでも関係性が生じうることの提示、という面を見ると、内容としても興味深い。もっとも、追って勝手に「(色即是空)空即是色」という言葉を想起したが、これに対する自分の解釈と作品のテーマは異なるように思う。
〉冬のシンクの表現は良い。
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〉#8 天使(qbc)
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〉「物語」の説明は格好いいのだけど、天使は以前にも「俺」に物語の話をしている。それを他の面前で改めてするのは感受性に乏しい「俺」を辱めているようで、もしかするとこの天使は性格が悪いんじゃないだろうかと思ってしまった。
〉「俺」自身は、感情を全く持っていないわけではないものの(好奇心とか、笑う心とかはある)、複雑な感情は発達していない、または共感の能力がないなどの理由で、上手いこと物語を織ることができないのだろう。
〉雰囲気はかなり良い。
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〉#9 たこ焼きを食べながら(ナイツ)
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〉「俺」の友達への思いやりがよく描かれていると思うが、掘り下げていく余地はあるだろう。思いやりとは本質的に自己満足を動機とし、行為等の結果相手にプラスとなることで初めて正当化されるものだと考えている。この作品を読むだけでは「俺」の自己満足どまりとなっており、友達は「俺」のことを本当はどう考えているのか、あるいは土産のたこ焼きを結果としてどう受け取るのかが読みたいと思った。
〉あと「たこ焼きを食べながら」というのは、友達のもとに向かう途中のことなのだろうか。
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〉全体的な話をすれば、前半の作品群は「あ」から始まるタイトルばかりなのが面白かったです(心ない1作品のせいでパーフェクトを逃していますが)。