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186期 全感想

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#1 自業自得

部活を辞めたことの経緯が書かれているだけで、そこから先の展開がない。つまり物語がないということだ。物語というのは、例えば、ある出来事に対してどう対応したかやどう解決したかを書くことだろう。しかしこの作品では、基本的にある出来事があったことの説明しか書いていないので、物語とは言えない気がするし、その意味で小説としても不十分だと思う。


#2 おじあく戦争の後に

お辞儀か握手かという「実にくだらない理由」で始まった戦争ということだが、どうしてそれが戦争に繋がってしまったのかわからないし、そこも書いて欲しい気がする。それに戦争というのは、引き金となった出来事はささいなことでも、単にそれだけで戦争になることはあり得ない。長年抱えてきた両国同士の確執や不満が溜まって初めて起こるものが戦争だろう。架空の話であるにしても、「実にくだらない理由」だけでは話としてリアリティがない。
話の内容は、戦争で障害を負ったある人物が軍神に祭り上げられ、市民への虐殺を誤魔化すことに利用されるという流れになっている。そうした、戦争を批判的に見る(または皮肉る)姿勢はいいと思うが、都合よく仕立てられた英雄というのはありがちな話だし、その描き方もまたありがちなものに終わっていると思う。


#3 ファンシー

(予選の感想と同じです)
漫画やアニメにありそうな展開で、そういう漫画的な話だと思って読めば、それなりに楽しめると思う(個人的に嫌いではない)。しかし、物語の入口部分を書いているだけなので、これを一つの作品として読むと物足りなさを感じる。
それから、「まさかと思い窓越しに看板を確認するとopenの文字が光っている」という部分が分かりにくい。要するに店の外からみると看板がcloseになっているということなのだろうが、少し考えないと何のことか分からない。
あと、似顔絵の説明をする部分も、「いつも通りの甘いタッチ」といったり「写実的」といったりで矛盾した説明になっているように思える。写実的で甘いタッチの絵というのが上手く想像できない。


#4 モロコシ畑でつかまえて

トウモロコシをどいう食べ方で食べるかというどうでもいい話であり、そのどうでもいい話をいかに面白く書くのがポイントになってくると思うが、この作品は、ありがちな展開や書き方で終わっていると思う。
それから「後に残る芯は乳白に調和があった」「三〇〇ヘルツくらいのその声」「そう思ってお日さんをそりゃそれです」という部分が分かりにくかった(あるいは分からなかった)。読む人にちゃんと伝わるかどうかを考えながら書くべきだろう。


#5 ExpandAI

「物語」の話なのか「AI」の話なのか分からないし、前半の「AI」と後半の「パンダ」の話の繋がりも、曖昧すぎてどう考えていいのか分からない。
それに、最初に出てくる「0か1かの積み重ねで極小単位の物語が作られた」という部分に興味が引かれて読み進めたのだが、それがどういう物語なのかもよく分からなかった。


#6 不安、不安、安定剤

小説というより、自分の病のことを書いたブログ記事に見える。基本的に病気や薬のことを説明しているだけであり、そういうものは小説とは少し違うのではないだろうか。
内容に関しては、薬を通して病気と付き合っていくことがどういうことなのか、ということを描いているのだが、もう少し個人的な経験の部分が描ければよかったんじゃないかなと思う。


#7 浦島太郎

神社で若い女性や年配の集団に会うというところまでは分かったが、それ以降の話がよく分からない。
結局、「私」が浦島太郎ということなのだろうか?
もう少し分かるように書いてもらわなければ、内容が評価できない。


#8 日記的なこと

(予選の感想と同じです)
「すばらしくない?」や「新人の、勉強できます系の男の子とかに」など、読んでいる側にある種のノリを押し付けてくる感じがあまり好きになれない。
内容に関しては、まず前半は、「新人の、勉強できます系の男の子」といったように相手を小馬鹿にしているのに、その小馬鹿にしている相手に見くびられたくないから資格を取るという理由がなんともショボすぎるし、それに同調している主人公もショボい。
後半は、「肉体関係にはならないという誓約書を、大笑いしながら書いた」という部分が少し面白いと思った。


#9 春はロマンチック

(予選の感想と同じです)
ようするに、「従業員」が身体を売っていたという話を書きたかったから書いたというように読めた。他の部分は前振りや締めとして書いただけであり、わざわざその他の部分を書かなくても従業員の話だけ書けばいいような気もする。つまり、構成がまわりくどいということだ。
「従業員」の話に関しては、ただ絵を描くためだけに身体を売る商売をしている男性を呼んだというアイデアは面白いと思うが、そこからさらに飛躍する何かが欲しかったなと思う。

#11 Fade Away

構成がよく分からない。母が死んで自分だけが生き残ったという話かと思って読み進めたが、自分が死体のような状態になっていたり、死んだはずの母が線香を焚いていたりして、それが幻想なのか何なのかよく分からないまま話が進んでしまう。おそらく幻想的な心象風景みたいなものを表現したかったのだろうと思うが、話の構成が滅茶苦茶すぎて話が頭に入ってこない。
それから文章も回りくどい。繊細だったり深い表現をしたかったからこうなったのかもしれないが、こちらに関しても読んでいて頭に入ってこない。
自分の表現に力を注ぐだけでなく、もっと読む側に伝わるように書くことも重要だと思う。


#12 英雄たちの墓場

革命や正義の持つ欺瞞のようなものを書きたかったのだろうか。しかし、革命や正義について真剣に考えているようにも見えないし、そうしたことを軽く相対化して(価値を無効化して)皮肉っているつもりになっているだけのような気がする。何か、どこにも芯が通っていない話や文章という印象。

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