※「⇒」以降の文章が私の感想です。
●掲示板
【第180期の感想/岩西 健治さん】
「いつか私を殺しにくる」▲
多少こじつけ感もあるが、最後の一文を吐き出すことで納得を誘う小説である。書き方は違うがそのテイストはここ数作貫き通されている。結局のところ、最後の一文以外をどう処理するかにかかっている作品である。ある程度スキルを持った作者の書き方は方程式としては正解かも知れない。言葉選びも的確。ただ、そういったこととは別に「面白いなぁ」と素直に味わえないのである。
⇒たしかに、「最後の一文を吐き出す」という感覚で書いたかもしれません。あるいは、物語に答えを出すとか、決着を付けるとか、そういう流れの中で書いているのだと思います。
作品の面白さは読む人に見つけてもらうしかないので、なんとも言いようがないのですが、たとえ面白さを感じられなくても、何か心にひっかかるものを残せればいいなと思います。
【第180期 作品感想/三倉 夕季さん】
#9 いつか私を殺しにくる
・何とも不可思議な読後感である。“痛み”が人型の女となって現れているのは分かる。しかし、女の『仕事』がいまいち掴めない。痛みを与える事が仕事なのかと思いきや、歯科医となって行った仕事も女の仕事。それでいて最後には男に求婚される女。恐らくはその一言を言わせるが為の様々な行為だったのかとも思える。女の立ち位置があやふやな幻影のようで掴めないし、存在していると受け取っていいのかさえも読了すると分からなくなってくる。それが狙いなのかと思うなら、だとすれば女も赤ん坊も地球人以外の生命体なのだから不可思議な事はそのままにしておく方が賢明なのだろうか。オチとしては大胆とも云える一方、些か強引な持って行き方かなとも感じられた。好みがそこで分かれるかなとも感じる。個人的には途中までは好みだったのであるが、オチは違うものがよかったなと思う。
⇒「痛み」を体現している女の『仕事』が定まっていないようにしたのは、「痛み」が別のものに変化することを表現したかったからです。「痛み」はただ痛いだけではなく、痛みを持つその人や人生を動かす動機になるものでもあると思うのですが、そのことを物語の形で表現できないかと思って書いているうちにそうなってしまったということです。でも今回は、読む人にその「痛み」の持つ意味を伝えるところまでは行かなかったというのが大きな反省点ですね。物語や展開が、無意味なものだと受け取られてしまったかもしれません。
それから感想とは別のことですが、三倉さんの作品投稿の件、期待しています。他人の作品を読むより、自分で書いたほうがずっと面白いと思います。
●予選
2017年9月20日 0時14分35秒
擬人化はおもしろい。話も展開しているな、と感じた。
⇒物事の変化を表現したかったので、話の展開には少しこだわりました。
2017年9月19日 4時12分19秒
最初の段落から、つかみがうまいと思った。「痛み」を象徴する人物との「結婚」というイメージは広がりがあってよかった。深読みができる余地があると思う。ただ、全体として少し乱雑な印象を受けた。
⇒今回は、「痛み」が別のものに変化していくということを書きたかったので、イメージの広がりに注目してもらえたのは嬉しいです。
最後の方は、文字数が足りなくて少し乱雑になったかもしれません。
●決勝
2017年10月5日 14時2分44秒
#9
読んでいて気づいたが、この方の話では基本的に人が死なない。死にそうにないというか。冒頭の痛みに対する消極的な説明もあって、いつか殺しにくる、の説得力が感じられず、途中が茶番にしか見えなかった。痛みがリアルでなければ人殺しもリアルではない。さらにとってつけたような、子どもができて結婚の流れが、浮わついていて陳腐に感じられてしまう。
作者さんの作品は軽妙な語りと展開が特徴的だと思っている(いい意味で、騙されることを楽しむ、ピエロのショーを連想する)。今回はその軽さが逆効果だったように思う。
⇒「痛み」というのはリアルそのものなので、「痛み」をテーマにした作品で、「リアル」の表現をあえて放棄するのは(冒頭部分の説明は)一つの賭けだったかもしれません。しかし、自分の土俵に「痛み」というテーマを引き寄せるためには仕方なかったのかなとも思います。なので自分としては、話の組み立て方の方向性は間違っていなかったと思うのですが、「逆効果」というご指摘のようにテーマと作風が合っていなかったということはあるかもしれません。そして「リアル」をどう表現するかという問題は今後の課題になりそうです。
2017年10月5日 0時27分53秒
正直、どれも微妙だった。
これがものすごい面白い!! というのがないのがちょっと悔しい。
これが一番温度を感じたので、こちらに。
他は、字面だけ追っていました。
⇒「温度」というのは、熱なのか温かさなのか分かりませんが、字面だけではない何かを感じ取ってもらえたのであれば幸いです。
2017年10月4日 22時24分2秒
「いつか私を殺しにくる」
この作品単独で見れば、あるレベルに達していると思う。ただ、作者の作品を群で見た場合、この作品にあまり魅力を感じはしなかった。こういった単体以外での評価の方法は間違いなのかも知れないが、作者の作風に魅力や憧れを持っている私にとって、群の流れの一部として捉えることは、毎月毎月、読んだ積み重ねだとして解釈してほしい。
セオリーが浮き立ってしまい、力づくで作り上げた感覚をまず持った。だから、悪魔で個人的な感覚に従えば、伏線のような効果ではなく、すべてがこじつけに見えてしまったということになる。でも、予選通過作の中では一番良かった。
⇒「力づくで作り上げた」という指摘については、多少強引な設定や話の進め方をしてしまったかなということは自分でも感じます。今回は最初から「痛み」というテーマを据えて書き始めたので、そのテーマとの格闘みたいになってしまって、力づくで「痛み」のテーマや意味を物語でねじ伏せてしまうような部分があったのかもしれません。
ちなみに今回、歯の「痛み」を題材にしたのは、実際に最近歯が痛くなって、歯医者で治療をやったという体験があったからです。こんなに痛い思いをしたのだから、せめて小説のネタにして、「痛み」の意味を追求して、物語にして、成仏させてやろうと。