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#1 フレーバー

ある匂いによってその人の気持ちが分かるというアイデアはいいと思う。しかしアイデアを提示しただけでほぼ終わっていて、内容が薄い気がする。
それから冒頭部分に出てくる、悲しみの表情よりもうれしい瞬間を捉えるほうが難しいという、その理由がよく分からない。
そして最後の方で、主人公がなぜ吐き気を催したのかもよく分からない。


#2 ある心

これは小説ではなく詩だと思う。自分の気持ちのようなものをただ書くだけでは小説にはならないのではないか。
それに一種の読み物として読んでも、ひたすら、死にたいとか、疲れたといったことが書いてあるだけで、それをただ読まされてもなという気がしてしまう。


#3 何年何か月。

よくありそうな「ひきこもり」の状況を書いただけで、ひきこもりの状況に対する葛藤もないし、とくに物語の展開もない。なので、これではたぶん小説にはならないと思う。
個人的には、途中に出てきた「文学少女」のところから何かしら物語を展開させればいいのになと思った。


#4 月光屋さんの紙弁当

(予選の感想と同じです)
「大昔は〜」や「それは昔〜と呼ばれたものだ」というのはありがちな書き方で、ちょっと工夫が必要だと思う。そして「月光屋」の説明についても無駄な部分が多い気がする。
しかし、文字を食べるというアイデアや、最後の方で主人公が世界の美しさを知るという下りは悪くないなと思った。それから、この作品で言いたかったことは、文字の情報だけでは分からないことが世界にはあるということだと思うが、そのことが物語の形でよく表現出来ていると思う。


#5 放課後

最初に四人の登場人物の紹介をして、その後に三人のやり取りを描いているが、そのやり取りの部分を読んでいると、誰がどんな人物だったのかよく分からなくなる。もちろん、人物紹介の部分をよく覚えておけば誰がどんな性格の人物なのかというは分かるのだけど、私みたいに記憶力の悪い人間は一回読んだだけでは覚えられない。なのでやり取りの部分は読んでも頭に入ってこなかった。


#6 アートの外でダンス

とても奇妙というか気持ち悪い感じは伝わってきた。「米は一キロで五万粒ほどになるから、単純計算でも五十万体」という部分は、ゾッとさせられるものがある。でも、ただそういう奇妙な出来事を提示しただけで終わっていて、それ以上のものがないような気もする。
それから、語り手の会話の部分が地の文になったりカギ括弧になったりしているが、なぜわざわざその二つを使い分けているのかがよく分からなかった。
あと冒頭部分の「※少年のノートより抜粋」というのは、少しわざとらしいかなと思った。


#7 受容と風化と俯瞰

父の死をどうやって受け入れていったかということを書きたかったのだと思うが、「キューブラ=ロスの「死」の5段階説」などを紹介するだけでは、実感としての死は表現できないのではないかと思う。
それに調べてみると「悲嘆のプロセス」http://jdgs.jp/about_grief/grief_process.html は家族などの死を受け入れるプロセスで、「キューブラ=ロスの「死」の5段階説」http://kaigolab.com/care/7018 というのは自分の死を受け入れるプロセスということだが、なぜ、父の死を受け入れるという文脈(私にはそう読める)で、自分の死を受け入れるプロセスであるキューブラ=ロスの方を引用したのだろうか? 話がちぐはぐになっているように思える。


#8 恵美の或る一日

核戦争が始まったときの日常のようなものを描いたということだろうか。題材自体は面白そうだし取り組み甲斐があると思うのだけど、内容は型通りの、誰でも考えるような感じかなと思う。そして最後のオチもありがちじゃないだろうか。


#9 粉かぶり姫

最後の段落はいったい誰が話しているのか分かりづらいが、結局、話がループしているということか。長い時間が経って、過去の相手(ばばあ)の立場に自分がなってしまうという発想やテーマは面白いと思うのだが、その発想やテーマを提示しただけで終わっているかなと思う。そこからもう一絞り何かが欲しい。


#10 渋谷オリンピック

話自体には笑える部分があっていいのだが、主人公の人生が、陸上競技の本番で変な行動をとってしまうという問題に囚われたままになっている。せっかく物語を書くのであれば、その問題を超えていくための物語を書くべきではないかと思う。
それから話を読んでいると、生殖機能には問題ないのに、いざ女性を目の前にすると萎縮してしまうという、精神的なEDのことを思い浮かべてしまった。


#12 瘤蠼螋

(予選の感想と同じですが、一部修正しました)
最後から二番目の段落の「彼」が誰を指しているのかよく分からない。意図的にそうしているのかもしれないが、そうであるなら、もっと意図がちゃんと分かるような書き方をすべきだろう。
内容については、映画を、記憶や人生に喩えるというもので、それ自体はよくあるテーマだと思うが、何度も繰り返すという部分に独特な視点があるなと思った。そして映画の中に取り残された少年たちというイメージも悪くないと思う。ただし小説というより、詩的な方に寄り過ぎている気もするが。


#13 ムネモシュネ

(予選の感想と同じです)
話の内容より、文章のリズムや言葉選び(選ばれた言葉)を楽しむ作品かなと思った。ある日、ある男女が会って、ある時間を過ごしていたことをただ文章で表現したという、そういうことを極めようとした作品。


#14 詩大将

一つ一つの文章には面白さがあるし、自由な感じも悪くないのだが、結局、小説というより詩のようなものを書きたかっただけではないかという気がする。

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