仮掲示板

結局私ではこの程度な第57期感想

読めなかったからと言ってその作品の感想は切り捨てるのは簡単ではあるが、それでは意味がない。読めなかったと言って斬り捨てることも簡単ではあるが、それもまた意味がない。だから何かしら書いておきたいと思うのだが、実力が伴わず、結局そんなものになってしまう。
それでもなお掲示板に感想を投稿して、私はいったい何がしたいのだろうか。

#1 ボツ 〜こういうことだよ〜
意欲が沸かずにいて、ビールを飲んだら終わりと言って、そしてビールを啜ること、それから普通の評価を羅列することのふたつは、要素としては悪くないと思う。特に、最後にビールを啜って物語そのものも終わりにしてしまうのは、悪く言えば第55期の『小説を掴まえた』の二番煎じであるが、面白い手法と言えるだろう。
ではあるのだが、この物語にはもっと奥行きがほしい。言ってみただけ感が漂っているような気がするのである。

#2 ほの薬
本来の使用方法とは異なる惚れ薬の使い方に、さらに惚れ薬の効果とは関係のない吊り橋効果の話題を加えて、素材としては面白い。最後の投げ捨て方も良いと思う。
ただ、「僕の顔は青くなってた〜目の前真っ暗になっちゃって」の主人公の反応の描写は半端だと思う。なくしてしまうか、もっと主人公の驚愕を表すべきではないだろうか。

#3 落ちない
題名やツイ子の言葉にあった「落ちない」と最後の段落の「落とさない」のずれがこの物語の重要な要素なのだろうが、それが私にはわからなかった。「組みなおされるほど高度なものではなかったのね」は分解できないほど高度なものではなくて、分解する必要がないほど単純なものだということなのだろう。ところでここは鍵括弧にするべきだっただろうか。
それから、重箱の隅をつつくようだが、「初対面では〜ツイ子は宣言した」は、周囲に発表していることではないので、宣言ではなく断言とすべきではないだろうか。

#4 eisaku
ロック・オン以降の荒唐無稽さと比較して、それ以前はややおとなしいような気がした。
今回はラップなのですね。

#5 迎え火
言葉遣い、文字遣いが上手い。
しかし読めなかったので、線香花火かと勘繰ってみたりする。

#6 いたずら電話
字数不足なのか、まだ弱い感じがする。真紀の嫉妬深さをもっと早いうちから出して、それを徐々に強調していければ良かったと思うのだが、それは千字の枠では難しかったのかもしれないし、あるいは可能なのかもしれない。
それから、真紀の一人称に不統一がある。

#7 緑の指
それを、彼の秘密を握ったと言うべきなのだろうか。
それから、ラベンダーの花がそこにあった理由が、私には読めなかった。

#8 会いに来た、犬
二つの兄弟の交差という構図は面白いと思った。しかし焦点が絞りきれていない気がしたのは、千字で四人を表現することは非常に困難なことだからなのだろうか。

#9 うれないし うらないし
短い文字でインパクトを狙うのならば、挑戦したこともない私が言ってはいけないことなのかもしれないが、もっと凝縮できると思う。

#10 スラレタ・スマイル
もちろん現実にはありえないことなのだが、もしもそんなことになったらという観点から読むと、現実味のある話だと思う。つまり、上手い。欲を言えば「ムカムカ(怒)」も平仮名で統一すれば良かったかと思う。
今頃になってようやく、担当官が「へらへら」だから「へらへら」が評判が悪いということに気がついた。担当官も被害者の一人なのかもしれない。

#11 じゃんけん遊び教師!
物語もわからなかったが、ふり仮名を入れた理由も私にはわからなかった。しかし最後の一文が私には読めなかったのだから、それもむべなるかな。

#12 狐施行
良いと思うのです。主題の独創性も、それを描く表現も。
なのですが、相対的な評価などあまり良くないことなのですが、三浦氏の作品「みやび」や「よいとこさ、よいとこさ」を読んでしまうと、もっと欲しいような気がしてしまうのです。

#13 信仰
主題のためか、問いかける若者対異常な年配者の構図が多いと思う。そして水戸黄門が印籠を出す時刻が決まっているように、物語の転換の場所が決まっているように思える。それはあるいは、形式美なのかもしれない。

#14 ブエンディア
もはや単品では読めない、連作と化している。連作として評価するとすれば、毎回最後に転換を見せているつくり方は、良いと思う。
義父はすでに他界しているのだから、「義父は一体僕に何を求めているというのだろう」は過去形にすべきではないかとも思うのだが、どうだろうか。

#15 見えない出口
それを「過酷」と言っているうちは、まだ絶望の深さが足りないように思う。この種の作品は、感情を消すくらいにまで描けて初めて良作になると思う。

#16 手紙
もしも私がこんな手紙をもらったらどんな返事をするだろうかと思ってみたのだが、難しい。作品の感想を書いて、未だ自分は見つかりませんと答えそうなものだが、それはこの物語とは違っているように思う。
「闇に隠す」は聞かない表現だ。その前が消し去るなのだから、葬ってしまっても良いのではないだろうか。

#17 蝶と憂鬱
脱力感のある題材が、文章の質によって壊されることなく表現されていると思う。
実際に蝶が登場しても良かったかもしれない。

#18 どうしようもない心臓
公文力氏のような、最後はハンニャ氏のような、藤田揺転氏にしては珍しい作風だと思った。105年後の世界らしいが、『銀河鉄道999』の機械人間の国のような気がして、幸せそうには思えなかった。
ところで、最後に「彼ら」とあるが、主人公以外に誰かがいたのだろうか。

#19 十三歳
私の読解力の問題なのだろうが、「ララミィは見た目は二〇歳だけど二〇〇年生きている」ことから述べられる「ぼくらの一年が彼女の十年」および「彼女の十年はぼくらの一年」について。
これを数式で表すと「ぼくらの一年=彼女の十年」と「彼女の十年=ぼくらの一年」であり、このふたつは数学上等価である。ではあるが、先のふたつは等価には思えない。前者はいわゆるドッグイヤーと呼ばれるもので彼女が短命であるように思えるが、後者は彼女の時間の密度は薄くそのために長命であるように思えるのである。

#20 仮面には裏側がある そしてそれは鏡張りになっている 当然のように、それは歪んでいる
これもまた読めなかった。どこが夢でどこが現実なのだろうかという論理が、難しいのである。そう思ったのは、「当たり前じゃない。僕は生まれてこの方、新生児局に足を踏み入れた事がないのだ」の部分がどちらに属するのかがわからなかったからだろう。クレアが夢の存在だと仮定すると、私の読み方ではこの物語は破滅的だということになるのだが、どうだろうか。

#21 おともあち(1000字版)
正直に言うと、私は商標を多用するのは好きではない。それはすこぶる個人的な感情で、物事を自分の言葉で表現するのではなく、商標の持っているイメージに頼ることになるからである。だがしかし、特に会話文については、現実味を持たせるためにそれらを用いることが必要であることもまた真であり、子供の会話の場合はよりその必要があるのである。それでも、「まさにトトロのメイちゃんだ」はやめてほしかった。
作品の感想は、可愛いものは好きの一点のみ。

#22 紫陽花の唄
それ以外のものも現実的ではないと言えばそうなってしまうが、巨大な鮎が現実味を失わせてしまう浮いた存在に思えた。
それから、男がどうなったのか、最後にどんな気持ちでいたのかがわかると良かったと思った。

#23 擬装☆少女 千字一時物語12
こんなに後ろにいるのはただ単に書くのが遅くなったからであり、推敲していたなどといった殊勝な理由ではない。ちなみに書き始めが締め切り一日前で、投稿が締め切り二時間前である。
それから、『擬装☆少女』が気に入ったからこれを投稿していると言うより、それしか書けなかったのである。二作書いて比べて投稿できたら良いのに。

#24 深くへ
るるるぶ☆どっくちゃん氏にしては珍しい普通の文体だと驚いた。だからなのだろうか、表現も常よりおとなしいように思えた。ではあるが、内容はかえって恐ろしくなっているようで、いつも読めないのだからそう言うべきではないのだろうが、美しさは感じられなかった。

#25 いささか長めですが、これが短編第57期への曠野反次郎の投稿作品の題名ということになります(良い題名が思い浮かばなかったのでこうなりました)。
作品を書くことを題材とした第三作であるが、これは失敗作だと思う。内容がよく言われることである上に、締めは第55期の『小説を捕まえた』の類似になってしまっている。

日下部メイちゃんのお姉さんとはまったく関係のない、黒田皐月でした。トランス・セクシャルとトランス・ベスタイトは違うものなのです。ああ、最後まで何を言っているのやら。

運営: 短編 / 連絡先: webmaster@tanpen.jp