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 わたなべさんの作品について

〉23 祖母の入院 わたなべ かおるさん 982
〉 死を前にした祖母の言葉が、それまでの長い人生で培われたであろう女性観と反転しているところが気になります。女に学問はいらぬというのがどういう経験や思いから出てきたのか、それを孫である自分はどう受け止めてきたのか、それなりに認めているところはなかったのか、死の直前に意見が翻った時に二十年余の祖母像は崩れ去ってしまうのではないか…1000字で人生語るのはなかなか難しいのだなあと改めて感じました。


 私はこの作品、死の予感がする祖母という設定上、とても理に適ったよく観察された作品だと思いました。
 祖母の言葉、この時代の女性にありがちな「世間体」や「常識」にとらわれていて、孫の人生をうまく受け入れられないもしくは、自分が学問をしたかったのにそういう時代ではなかったためかなえられなかったから、孫には自由にやらせてあげたいという自身の希望を表に出すのは避けたいとか、いろんなしがらみがあって、「女に学問は云々」というセリフになったのだろうと私は推測しました。死が近づくと、人はそういうしがらみから徐々に開放されていくような気がします。私は祖母を亡くしたときに思いました。
 祖母はとかくプライドが高く、戦後没落した我が家にあってもいつまでもお嬢様だったので、してもらうことには当然という態度で王様のように振舞っていましたが、死ぬ直前になって「いただきます」「ごちそうさま」ありがとう」を初めて言ったんですね。これはただの一回も聞いたことの無い言葉だったので、こりゃいよいよお迎えが来たかと思ったらその日の夜になくなりました。そういうわけで、私はこの主人公の祖母のあり方には疑念を挟む余地がありませんでした。
 

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