#1
豚の部屋
電車の車内を「木漏れ日」のない「森」と表現しているのが息苦しくてとてもよかったです。一本一本の木が車内で森をかたちづくっているという書き方だったら、その幹や枝、葉など、個体差が出るけど、森、とくくると、ただその質量と、得体の知れなさだけが強調されて、面白かったです。
会社でのやり取りも秀逸だと思いました。仕事とは自分で自分の首を絞めること、という風に読みました。
#3
キャラメルラテ
煙草に対する受験生の漠然とした憧れが感じられてよかったです。一本一本、特別な場所で特別な思いで煙草を吸うのが、習慣化していくまでにかかる時間はどれくらいなのだろうと思いました。カップルが喫茶店で差し向かいで煙草を吸うのはなぜかぞっとしない光景に思えてしまうので、最後のシーンは好きです。
#4
きかんしゃユーモア
ユーモアは、誰も傷つけない笑いのことだ、というのを、何かで読んだ記憶があります。ロジックとか、レトリックは、どちらか言うと、ユーモアの対極にあるアイロニーに結び付きやすいと思いました。ただナンセンスにまでなると、だめなんだと思います。
で、この小説、面白かったです。ユーモアあふれていると思いました。
#5
サガシモノ
個人的にこういった経験はあまりしたことがないので感情移入はできなかったのですが、始めの小説で躓いた部分というのは、もう一度読み直したらやっぱり違う印象になるのでしょうか。
#6
仕事人の顔
オンとオフ。朝という特別な時間だから、より彼女は変わって見えるのだと思いました。トレンディードラマっぽく、頭の中で再生されました。
#7
カプセル
遠近感にくらくらしました。便利だけど不器用な感じが面白かったです。
#8
アルバム
すごいな、と思いました。「私達にできるのは呪いを残さないことだけ。」これが後世のためとか、残された家族の人生のためとか、表向きは前向きなんだけど、それに完璧にくるまれた憎しみ、復讐。胡蝶蘭のイメージもあって、美しい作品だと思いました。解釈や理解は、暴力的な行為だと思っていますが、最後までこれが美しい。ポジティブな話とも、ネガティブな話にも読めて、すがすがしいような、息苦しいような、それでいて淡々としていて。