#1 かたち
アイデンティティーの問題のようでありながら、語られるのは服装や化粧、声といった表層的なものばかりであるところが面白いですね。
#3 イエロー・ゴッド
カードの説明と場の構築の語り口が雰囲気を醸していて素敵。
#4 阿部マリオの冒険
政治ネタは年の瀬感があっていいですね。
#5 曇りのち雨
没個性的な場所にいる人々に個性を与えるという題材は魅力的なものですよね。
#6 冷蔵庫
ひらがなと読点の多用が目立つ文章で、そのことが語り手の年齢や状態(病状、あるいは精神的な)を意識させます。
語り手の身内には意志薄弱な人が多いようだけれど、読点の多用は語り手の意思が強固なことを表現しているようにも思えます。
#7 志し
綱渡りのような文章が内容に変な迫力を持たせています。
#8 夜のむこう側へ
狭い視野の中で囁きや物音がはっきり鳴っていて、それは部屋の中で目を閉じて見た世界だから、というところがとても論理的だなと思いました。
#9 12月の恋人たち
オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」の内容をこの作品で知る人もいるのでしょうね。
#10 ドア
人間ではなく落下物にも等しいものになってしまった語り手の主体性の無さが空恐ろしいです。
#11 まとって生きる
他人の望む自分を演じる、という言葉がきっちり呪詛になっていますね。
#12 ではこれで
トムソーヤ、から吉田羊のそばソーダのCMを連想しました。