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本文: 〉「遠い過去に存在したはずの街について」 〉 少し分かりにくいというか、いまだに理解はできていないんだけれど、現実世界では、耳の聞こえない作曲家がいて、対になるゴーストライターがいたように、この街もそうしてまわっていて、でも、そんなことはいつしか忘れ去られて、みんな死んで、街の残骸だけが残る。知っているのは作者だけであり、作者はそれを読者に語り継ぐ。作者固有の考え方はこの作品にも生きていると思う。 〉 〉「夫から妻へ」 〉 分かりそうでいて分からない内容が、不思議な世界観を作っていて、カーステレオの性交の声や、百万円などが意味ありげでもあるが、読者にその意図を打明かす前にマスターベーションのように自己完結してしまったような印象が悲しい。読落しているのであろうか。そうでなければ、読者を置いていかないでと思うが、これは作者の全作品に対して言えることである。 〉 〉「この見えないはヒルサガリ」 〉 カタカナを使ったり、独特の言葉づかいは、作品をそれらしく見せてはいるが、小説としてのボリュームというのか、私の深部の希薄さというのか、とにかく、響いてこないのは文字数の問題でもあろう。たぶん、こんなニュアンスがふと浮かんで、書き起したらそうなった、という感じで作品を仕上げたと推察する。エッセンスをさらに掘り下げた先の文章を期待したい。 〉 〉「授業」 〉 少し無理矢理な設定にも思えるが、自動化された自動車が乗車していた人間が死んで(車の中で腐敗していく)も、半永久的に走り続けるという世界に通ずると思っていたら、そうではなくて、乳母車をひく老人ではないかと考えるようになった。現代の乳母車はもちろん、電気仕掛けではないが、移動手段であり、休む際、椅子としても機能する。そう考えると、こんな世界があっても不思議ではないのかも知れない。 〉 〉「観光客らしき青年」 〉 外からの情報から自分を意識させるという最後は、やはり、違和感がある。 〉 〉「後ろ姿の女と桜」● 〉 何でもないことを奇麗に書いている作品です。だから、全作品を通して読むと、少し沈む印象を持つ。これは奇をてらってないということで、悪いことではない。いや、単体で見ればちゃんと書いてあるんですけれど、平凡、とでも言うのかな。悪くはないけれど、もう一癖ほしいところはあるのも事実。 〉 〉「違う世界」 〉 作者の感想に対する洞察と、作者の作品に流れるものの違いについて考えている。作品は丁寧に書かれてある。最初一文字あけるとか、作者の生真面目さが溢れていて、それに対して、もっと崩れててもいいんじゃないか、そう思わせてしまうのは、面白くないからなのではないのであろうか。もちろん、面白さは人それぞれ違うから、作者と読者がリンクしないことはある。わたしは作者の感想は的を射ていると思う。だから、作品がもっと面白くてもいいと思っている。というか、面白いはずである。たぶん、作者自身には的を射ることができないことが原因のような気がする。 〉 〉「鈍色のナイフ」● 〉 作者の生臭さ、色々なワードが別々の展開を想像させるよう書かれてあるのが面白いとわたしは思う。作者固有のドロドロとしたものも、ここへきて良く中和されている感じだ。あまりギラギラしているものも受け入れられないから、このくらいがちょうどいい、ただ、もう少し読者に歩み寄ってもいいように思う。 〉 〉「つながり」▲ 〉 読者はわがままでどん欲である。次を望んでいて、それは当然読者の望んでいるものであるという思いから読み進め、なんか違ったなぁ、という感想を持ってしまう。 〉 乾いた感じがするということ、作品はそれなりに良くできているということ、でも、何かが足りないということ。小野や横山を思ってしまうので、作品に入り込めなかったのも事実だが、置きにいった感じがする。 〉 〉「すてきな三毛猫」 〉 なんとなく分かったことは、テーマや人物は毎回違っても、作者の書く世界は共通しているということ。それを説明するのは難しい(とくに今は酒を飲んでいるので)が、作者らしいな、というか作者らしい。 〉 それはきっと人の書き方と、世界観の作り方が似通ってしまっているからなのだと思う。色とか味といったことで言えば、それは安定しているということであろうが、似ている分、前作と比較して弱さが目立ってしまう。 〉 〉「フォーレ「エレジー」」 〉 とにかく知らない単語ばかり並ぶので疲れてしまう。そんなことを考えていて、こういう知識のない人は読まなくて結構、そう聞こえて、私はだから、疲れてしまう。私には向いていないのだな、ということにたどり着いた感じ。ただ、これも色なので、作者らしさはそのまま維持してほしいし、作品レベルが低いとも思っていない。
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