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 まず関係ないことですが、記事番号752の『島』の感想のご意見の半分以上にそれで良いのかと疑問に思いましたこと、申し添えておきます。記事に返信をしないのは、対案がないからです。
 さて、以前に三浦氏がいくつかやっていたようなことなのですが、氏のように面白いことにはできないこと、あらかじめ申し上げておきます。それから、すべての作品に挑戦するつもりはまったくなくて気晴らしにやっているだけであること(だから連番はつけていないのです)、各原作者に了解を取っていないことも、申し上げておきます。


#1 嫌いなこと
――ぶつ切りな言葉遣いにしてみました。


 夏になると憂鬱になる。台風が来ると高揚する。そして秋晴れが続くと、また憂鬱になる。晴れが嫌いなのかと言えば、そうではない。しかし西高東低の冬が来て寒い晴れが続くと、何も思わない。

 朝起きると、外に雨音がしないことに落ち込んだ。急に雨模様になる天気がいいと思い新聞を見たが、降水確率二十パーセントとの予報にまた落ち込んだ。早退する理由でも起きないかと考えながら着替え念のために熱も測ったが、平熱だったことに三度落ち込んだ。グズグズしていると遅刻しそうだったので、悪あがきはそこまでにして家を出た。
「行ってきます」
 学校までの平坦な道を、ノロノロとカバンを背負って歩いた。十分間の道でも何もないとは限らない。事故は嫌だが何かしら起きないかと思うと、歩調はどんどん鈍っていった。その脇を自転車が猛スピードで駆け抜けた。はてなと思って時計を見ると、八時二十八分。ホームルームまであと二分。
「やべぇ」
 担任はたまに早く来るので焦った。ギリギリで駆け込んだ。心配が杞憂に終わってよかったと思ったのも束の間、ホームベースの顔をした担任が入ってきた。

「このあと水泳だけど、忘れ物をした奴はいないよな?」
 ホームベース(以下「本塁」)は無表情にクラスを見渡しながら言った。
「僕の水泳パンツが無いんですけど……」
 声が後ろの方からあがった。たちまちクラスはしーんとした。アヒルと呼ばれているそいつは、クラスの嫌われ者だ。
「自分で探せ」
 本塁の物言いは冷たかった。実は水泳パンツは誰かが隠しているのだが、アヒルも知っているのか、本塁にそれ以上言わなかった。言ったところで、本塁が担任とは思えないようなひどい扱いをすることは知れていた。

 気づいているかもしれないが、水泳は嫌いだ。泳げないというわけではない。太ももの傷を見られたくないのだ。右足の太ももの裏に、十字架の傷。生まれつきあるらしい。どれだけ母親の中で暴れたのか知らないが、とにかく生々しい。罪を刻まれたようで、持ち主の自分さえ目を逸らすほどだ。

「あ、雨が降ってきた」


#2 世界平和
――最後にT男の第一声を入れました。しかしその後どうするかがまったく思いつかず、半端な形になってしまいました。


 久しぶりに実家に帰って一泊した翌朝、M子はもうすぐ定年の父と一緒に家を出て仕事に向かった。駅までおよそ十五分の道のり、三十五歳独身の仕事しかしてこなかった娘と父の間に、今更会話も何もなかった。かと言って不仲でもない。そんな父が口を開いた。
「あ、いつもの女の人」
 うれしそうに言う。M子も父の見ている方を見ると、四十代くらいで細身の髪の短い女性がバス停でバスを待っていた。特に目立つ様子もないスーツ姿で、見たところ通勤でバスを待っているようだ。
「何、お父さん、そんなこといちいちチェックしてるの? ストーカーっぽいよ」
「そんなんじゃないさ。ただ、毎日同じ時間、同じ道だろ? 同じ風景や同じ人がいることは、安心感があるんだよ」
 一度はM子に向けた目を、父はどこかへそらせた。
「これも世界平和のひとつ? ってな……」
 父は自分の言ったことに少し気まずくなったらしく、駅で別れるまでもう何も言わなかった。M子も気にすることなく、父とは違う電車に乗った。だが、電車に揺られながら、はっと気づいた。
「俺と結婚するつもりで付き合わないか?」
 昨日、同僚のT男が言った言葉だ。
 飲み会での言葉に多少驚いたが、酔った勢いの戯言と思っていた。T男は入社以来の同期で、いつも一緒に仕事をしているから。辛くて苦しいときをさんざんノーメイクで過ごし、みっともないところも見せているから。T男とは助け合いもして、罵りあいもしてきた。一緒に仕事をしてやりやすい、遠慮もいらない、性格もよく知っている。それはお互い様のことで、もはや異性でも色恋沙汰と言うより、日常だ。
(安心感か……。T男もそれ?)
 社内恋愛は仕事のじゃまだと思いつつ、どうしようと迷っている自分に気がついたのだった。
「世界平和ねぇー。お父さん大げさよ」
 今日T男はどんな様子だろう、いつもと同じ挨拶をしてくるのだろうか。M子は心が躍るのを感じてきた。しかし冷静を装い、職場に入った。
「おはよう。あれ、いつもとちょっと時間違うか?」
 T男はいつもと同じ顔をしていた。今日は実家から来たと言ったら、このT男の顔はどうなるだろうか。


 まあ何と言うか、短編終わったとか言われないようにがんばりましょうという観測バルーン。

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