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私事ですが、次回分の投稿をうっかり忘れてしまいました……。
ですので、今年はこれで終わりで、また来年から参加したいと思います。


#1 補助輪

補助輪なしでの自転車の稽古は、誰でも経験することだし、よくある親子の光景だろう。だから、それ自体はどうということはないのだけど、主人公の妻がすでに亡くなっているという状況が、このよくある光景に少し別の意味(男親一人で育てていく不安や決心)を与えているということか。
300字に満たない文字数にしては、よく話がまとまっているなと思う。しかし、「俺はまだあの子の補助輪」という部分で、キレイに話をまとめようとしている感じがしてしまう。言葉をキメ過ぎというか。


#2 すき

特別に「すき」な異性の唇は、自分の知っている宇宙(世界)を超えたところにあって――という感覚は、分かるような気がする。何しろ、自分の宇宙には存在しないものだし、それに触れたら何が起こるか分からないものだから。
この作品は、口づけをするまでの心の高鳴りや、口づけをした瞬間に起こる何かを表現したものだろう。
だらか、その気持ちは共感できるのだけど、この作品は小説というより、詩のようなものだと思う(なぜ詩のようなものをわざわざ書くのか、狙いがよくわからないが)。


#3 忘れ物代行屋

忘れ物をしないための何かしらの手助けをする代わりに、その人の寿命を少しもらうという、霊や妖怪みたいなものか。
ようするに、忘れ物をよくするのは、せわしなく生きているせいで、そんなことをしていると寿命が縮まってしまいますよ、ということを、この話で喩えたということだろうか。
まあ確かに、心がいつも忙しいと、大切なことまで忘れそうだし、寿命も縮まってしまうのかもしれない。
でも、色んなことを忘れるぐらい何かに没頭できたら(大切なことは忘れちゃいけないけど)、それはそれで幸せじゃないかなという気もする。


#4 終わらない路線

目的も決めずに、友達と一緒にとりあえず電車に乗る、というのはなんだか楽しそうだ。
しかし楽しいことばかりではなく、時には、よく分からない状況に巻き込まれてしまうこともあるかもしれない。
それは物語としてアリなのだけど、二人の最期が可哀想すぎるなと思った。


#5 うちの猫は最近メシを食わない

主人公やその妻は、以前、日本と中国の間で工作活動をしていて、今の主人公は精神を病んでいるということか。
あるいは、そのこともすべて主人公の妄想かもしれないし――とにかく誰が本当のことを言っているのかよく分からない状況。
そういう、すべてが不確かな状況というのは、心を落ち着ける場所がなくて、なんだか嫌だなと思うのだが、一つの視点としては面白い気もする。


#6 国王になる日

嫌々仕事を押し付けられた人が、その仕事に最もふさわしい働きをしたり、周りに愛されたりするという話は、魅力的だし嫌いじゃない。
これが長編の話なら続きを読んでみたい気になるのだけど、1000文字足らずだと、主人公の人物紹介のような、少し物足りない感じになってしまうのかなと思った。


#7 スペース・スペース・スペース

チャットではないけど、自分も昔、お互いのブログでよくやり取りしていた人が何人かいたな、ということを思い出した。
だから、相手が異性だと、ちょっと意識してしまうという感覚も分かるし、読んでいて少し懐かしくなった。
この作品は、久しぶりに訪れたチャットルームで昔の仲間とおぼしき人物と再会するという内容。
現実で再会する展開も面白いかもしれないが、あくまでもネットでの再会というのも、何かもどかしさ(ネットならではの距離感?)みたいなものが味になっているなと思う。直接は触れ合えないが、どこかで心が触れ合っているような。


#8 まぼろし

出だしの部分だけ読むと、よくある近未来SFで、最後に現代への警告めいたもの持ってくるのかなと予想してしまう。
しかし、読み進めてみると、その予想とは少し違っていて、機械(子育てアプリ)はやっぱりダメという、ありきたりな結論になっていないところに、作者のオリジナリティを感じる。
たとえ、相手が機械であっても、懐かしさを感じることはあるだろうし、場合によっては救いになることもあるのかもしれないなと思った。
相手が機械だと、少し寂しさがある気はするけど。


#9 君と缶

女の子同士が待ち合わせをしたときの、ちょっとしたシーンを切り取った作品。
最後に出てくる、温かいミルクティーの缶のように、心をほんの少しだけ緩めてくれるような話だと思う。
最初の出だし部分が説明的で、ちょっともたついている感じはするけれど、作品の方向性は嫌いじゃない。


#10 切断

五感や肉体のすべてを、政府か何かによって管理されている社会、ということだろうか。
もしそんな社会があったとしたら、心身のあらゆる自由がなくなってしまうだろなと思うし、とても怖い気持ちになってしまう。
この作品は、一種の思考実験のようなもので、ある一つの世界を表現したものではある。
しかし、現代を生きる我々とのつながりが、ちょっと見えにくいなという気がする。
この特殊な世界にも、人々の日常はあるはずだから、その日常を読んでみたい。


#12 天の神様

神社の神様らしき存在が、人々の願いを聞いたり、少しだけ手助けしたりするといった内容。神様のまなざしが優しく、必要以上の干渉はしない(できない?)という点に好感が持てる。
しかし後半で、犬を連れた車椅子の青年が現れ、自分の死を覚悟するような心境を吐露するところで、とても興味を引かれたが、よく分からない中途半端な終わり方をしている。
もともと長編のつもりで書き始めた小説の、最初の部分だけ切り取ったのかなと。
1000文字より、長編として書くべき話ではないだろうか。


#13 ほしのふるさと

つまり、集落の湖に落ちる流星が父親で、「白い服を着た少女達」はその父親に種付けをされているということか。
そうだとするなら、この集落ではどんな営みがあるのかや、流星や儀式に対する疑問はないのかという点が気になるし、その点を描いて欲しい気がする。

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