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2 硝子の虫

文章の流れに無理はないし、書くことに慣れているんだなあと思った。
しかしその読みやすさに対して、「退屈」な印象を持った。
なぜかと考えたんだけど、おそらく作者が主人公の気持ちをちゃんと受け止めていない、作者が主人公の気持ちに寄り添って掬い上げるどころか、壁を作って突き放している。もっと踏み込んでいいと思う。主人公に寄り添う覚悟が出来ていないように思う。
登場人物を突き放して書く方法もあると思うけれど、この作品のテーマなり流れなりを考えるとそれは適していないと思う。
か、または三人称だったら全く別の表現でこの主人公に迫れるから、面白くなったような気がする。

例えば私だったらどう書くか。これはあくまで「例えば」の話で失礼承知である。

 複数の透明な虫が、青い空、白い紙を、なめらかに這う。それは目で追うと、ついと逃げる。それでも幾度と無く同じ動作を繰り返して彼女は、ぎゅっと目を閉じた。私は断じてココロの病気ではない。薬づけの廃人でもない。知っているのだ―――硝子体のかけらが、網膜に映るため起こる、飛蚊症なる症状である。インテリア同然の、表紙がずいぶんと日焼けした「家庭の医学」の細かい文字を、つばを飲み込みながら指でたどる。ちらつく無数の虫を、無意識で追い払う。
―――極度の近視に多いが、急に増えた時、稀には網膜剥離の前触れであるという。
 ああ、きっと明日にも光を失う!この虫のせいで!彼女は絶望する。
 飛行機は落ちるし、船は沈むのだ。
 
という感じ。これで面白そうな感じになるかどうかは、客観的は分からないけれど、私としては、この主人公が急にかわいくなった。

以上です。

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