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質も量も速さも、ついでに優しさも具えていないけど、良いよね。
答えは聞いてない。

#1 白い部屋。
こんな夢は、ありそうに思う。しかしこの種の夢を作品と化することには、私は賛同しない。
なぜならば、白い何もない部屋を自分の才能であると規定し、外界との接点をインターホンひとつに限定してしまっているが、「才能」とは閉じ込められる想像であるべきだろうかと疑問に思うからである。仮にそうだとしても、それは外界との交渉によって育まれるものであるため、その接点が断たれてしまうことは、主人公の死に等しいことであろう。それほどに残酷なことをこの作品が描きたかったのかと私は疑問に思うし、そのようなことは描いてほしくない。

#2 硝子の虫
主人公の性別をおそらく逆に読んで三度目になってようやく気づき、どちらでもいいと投げてしまった。
「半分しかないコーラを嘆く、悲劇的な方の人間」の表現は、「悲観的」であるべきだろう。その程度で悲劇になれるのであれば、私もそうありたい。良いと思った表現には、「返せ、その写真を。」を挙げて良いと思う。この感受性は面白いと思ったからである。

#3 ビーアグッドサン
最初だけ「母さん」を「母」としていたことの理由がわからない。また、その母さんがやはり父さんと同じ息子の身体に宿ったのに、言うことは「何度でも会えるように」というのはどういうことなのだろうか。同じ家にいるのならば、「ずっと一緒にいられるように」ではないのだろうか。しかしこの考えは、本作の落ちとは相容れなさそうだ。

#4 忘れられた昼食
物語のできごと以上に主人公の像が深まらない構成をしていると、今さらながらに思った。よく言えば、像がぶれてこれに続く物語に悪影響を与えてしまうことを防いでいると言えると、私は考える。
細かいことを言えば、「まず僕は〜調査をされていた」は最初に主人公が取った行動なので、「調査をされていたことを知った」とすべきではないだろうか。
しかし今回は、この千字でひとつの小さな物語ができていると感じた。

#5 吉右衛門と六甲おろしのおはようサンデー
「おもろい話」が一度で理解できなかったのは遺憾。しかし実は洒落は前段に過ぎなかったところが、それだけなのかと感じないこともなく、それ以上に洒落の先は好きではないが、構成としては良かったと思った。
ところでかの歌は以前に披露された歌と一部が同じであり、しかし歌っていた二人に相関関係はないと思われるが、この世界ではどんな流行の仕方がされているのだろうか。世界の開き方具合、あるいは閉じ方具合がここにあるのだろう。

#6 八丁林の探索は
こういう展開のさせ方は好き。10ページ程度の同人漫画ででも読んでみたい。
欲を言えば、より現実味を帯びさせるためには、八丁林に子供たちが近づかない理由が欲しかった。

#7 逢魔が時
題名を見てそろそろファンタジックな方向に流れていくのかと思ったのだが、それは私の単なる誤解で、そういう要素はいつもあった。題名に再考の余地があるだろうか。
TM氏の作品は長い物語の中盤部分のようだと言う意見があるが、なるほど世界観の説明がないのである。それは良く言えば、それらを切り捨てて主題に集中していると言えるのかもしれない。その主題さえ伝われば良く、よくぞそれを毎回僅かずつ異なる切り口で語れているのだと、それが確実に伝えられているかどうかは別として、私はTM氏の作品に対して思うのである。

#8 医者と死神の微妙な関係
この種の話は好き。10ページ程度の同人漫画ででも読んでみたい。
手術中に死神のことを思い浮かべなかったのは、良かった。それから、最近の漫画のように重心のおかしい武器、この場合は大鎌、を平気で持たせていないことも、良かった。

#9 シバタ坂のデンジャーゾーン
見事なくらいに「デンジャーゾーン」が主題の前段に徹している。それが何であるのかということはこの物語には必要なく、だからそれが語られないという点が良い。
必ずしもアルファベットに拘らなくても良いのだが、仮に四文字の並べ方を変えて…、「NASU」。上手くないな。

#10 月はただ静かに
初めて写実に挑戦しました。落ち、即ち着地点にも意識しました。
浴衣女装少年を想像するために花火大会を見物しに行ったはずなのに、花火ばかりを見て帰ってきました。
基本的に外に出ない黒田皐月なので、この作品こそ打ち上げ花火のような存在になりそうです。

#11 パッキン
表現が粗い、描くべきものが描ききれていないと、私には思えた。あるいは、理解の仕方が間違っているのだろうか。
「それにしても姉〜なんというか、困る」の説明がなぜこの位置に、裕美が来てそして別れた後のこの時点にあるのか、理解に苦しむ。それから「カビの一部がうごめいた」は「カビの一部と見えたものがうごめいた」とすべきだろうし、「猫は風呂場を後にした。戦意喪失?」も戦意を喪失した理由を、正しくはそれを推測したものを、置くべきだと思う。字数が足りなければ、猫の名前についての括弧書きをなくしてしまっても構わないだろう。

#12 三軒先の如月さん
どういう偶然か、実は対象は動物だったという落ちが三期連続して、しかも別々の作者によって描かれている。その三作を比べてしまえば、本作が一番うまくないと思う。なぜならば、如月さんが犬である必然性がまるでなく、唐突にそう述べられてしまっているのに過ぎないからである。それから、「用事を偽造する」よりも「捏造する」とすべきだろう。例示のように、確かに用事はあったのだから。

#13 バドミントン
声を持たない影が表現できることは動作だけであり、だから何かスポーツでもやらせるのがわかりやすい表現であろう。だがしかし、孤独に死んだ者の影が、影となってなお孤独でいて、それなのに対戦競技をしているのはなぜだろうか。それがより強烈な孤独の表現だからなのだろうか。
最後の一行、「南フランスのとあるみどりの丘に影がいる」は最初の一文と同じく、「みどりの丘に、影がいる」と句点を置くべきではないだろうかとも思った。

#14 暑寒
題名にも洒落が利いていることに気づくのが遅れたのは遺憾。
三つの段落が、まるで関連のないようにも見えてしまい、見事に三段論法になっているようにも思えた。本作を批判したければ前者を、共感したければ後者を採ることになるだろう。私は、言葉の起源を探すあるいは空想する物語は好きで、この作品については研究書的に集中するのではなく物語的に移ろわせたことには上手いと感じ、さらに着地点も無難なところに落ち着いていて良いと思った。

#15 ガラスの瞳
最初の段落と最後の段落が、それぞれ絶対に必要なものであるのに足りないように思う。どちらか片方だけででもだから何だろうと思わせてしまってはいけないのに、どちらも唐突に現れて中途半端に去っていくように私には感じられた。最初の段落は思い切ってもっと簡素化し、その字数程度を最後の段落に充てられないだろうか。
描いているものはfengshuang氏らしい明るさをもっていて良いと思う。

#16 花の卵
花の卵がどのような存在なのか、本作ではサトシ側からしか語られていないが、それで良いのだろうか。そして、このような捜査手法は別件逮捕と呼ばれ物議を醸したことがあるのだが、これはまた残酷に過ぎないだろうか。私は、そう疑問に思った。
さらに言えば、「この世界はみな取引で成り立っている」の表現も好きではない。「この社会は」ではいけないのだろうかと、自然科学的見地から思ってしまうのである。

#17 彼と私の話法
痛い話。
なぜわたなべ氏は、技巧を用いずに、用いようともせずに描けるのだろうか。
善意に包まれた、痛い話。

#18 美術館でのすごしかた
女が異国人のように思えたのは、狙ってそうしたのか、そうでないのか、あるいはqbc氏のことなので読者の想像に任せるような七色の描き方をしているのか。初対面の人の前で知人に「待たせたね」と気安く言ってしまう女、知人が「会社関係の知り合い」と紹介するのだから実は知人ともそれほど親密ではないのかもしれないのに知人の口元のパン屑を黙って取ってしまうような女は、私には魅力的には見えなかった。ただし、暗そうな美術館には似合うかもしれない。

#19 水晶振動子
るるるぶ☆どっくちゃん氏は作風を、文体を変えるつもりなのだろうかと思える作品が、ここ三回くらい続いている。今回は随分と場面の想像ができる作品なのだが、最後のあたりにもう一度くらい観衆の子供たちの声があっても良いかと思った。それと、細かいことだが、最初の一文の「阻止」は「素子」の間違いだろう。
ところで、氏の作品にはときどき女装少年がいるのだが、みな美しく見えるのはなぜだろう。

#20 ドライブ
短い作品は強烈な印象がない場合は感想が書けないと、改めて思った。
ひまわり畑ならば、何百本かは欲しかったかな。

#21 カメレオン
読書家の姿をカメレオンに託したのは、接したものによって色を変えることを表していて良いと思った。だがしかし、なぜ活字の吸収が描かれていないのに暴れまわるに従って膨張していったのだろうか。そしてなぜ破裂して消えてしまわなければならなかったのだろうか。それが私にはわからなかった。

#22 オチのない話が書きたい
三浦氏の作品で私が時々陥ってしまうことなのだが、これは誰の行動なのかわからなくなってしまうことがある。今回は朗読したのは誰だったのかということなのだが、改めて読んでみたら、実はどれが現実でどれが虚構なのかが判別しないのであった。

#23 ナガレ
登場人物が何者なのかわからなくすることは、それによって含みを持たせられる場合と本当に何なのかわからなくなってしまう場合があり、危険を伴うことだと思う。そして本作は、主人公の抱いた真情がわからなかったことから、失敗に当たると私は思う。
細かいことを言えば、半日程度の経過を「膨大な時間が流れた」としたのはどのような感覚によるものなのだろうか。これも私にはわからなかった。

#24 こわい話
私事になってしまうが、『擬装☆少女 千字一時物語9』について長月氏から「作品の雰囲気と文体が合っている」という評をもらったことがある。この度これを、三割増くらいにしてお返ししたい。怖さを伝えるためには、より嫌味に言えば恐怖を植えつけるためにはどのようにすれば良いのかを知っている語り口だと私は思う。だがしかし。
そうね、わたしにはわからないかもしれない。

#25 ぷらなリズム
ただ手が滑っただけで指を切らないでほしい。せめて、体がふわふわになっていつものように力が入らない、といった言い訳が欲しかった。それから、二人になったのだから二人とも働いてほしい。外で二人が揃ったところを他人に見られることを恐れるのならば、昼夜交代勤務にすれば良いだろう。
締め方は良いと思う。締め方は、と限定するのは、途中の2ちゃんねる用語と言うのだろうか、それらが理解できなかったから(その上理解したいとも思わないために調べもしないから)である。

#26 お別れのキスのことばかり考えていた
「ドロドロの粘液に塗れ、ピルケースからサプリメントの餌を撒いたりして」が本作の鍵のはずである。これをどう読むのかと言うことになるが、私は完璧からの歪みであると読んでみる。主人公が完璧と思っていることが一般的には歪んだものであり、その歪みによって本当に過去にあったかなかったかはわからない幻想が主人公の心中に現れたのだと、私は思った。
「僕らはゆっくりと記憶を改竄していく」は事実が思い出と変質する様を良く表現した普遍性のある言葉だと思った。

#27 にらめっこ開始
コント、ではないのかもしれない。観客であるチビっ子も含めたバラエティ番組のような何か、なのだろうか。山中がボクシングひとすじと言っているが、実はこの世界タイトルマッチはボクシングではなくても良さそうだと思った。
やはりハンニャ氏は「わっしょい、わっしょい的なもの」が良いなと、今後も期待したい。

作者買いはしないつもりだったのに最近偏った感想を書いているかもしれない、そんな気もする黒田皐月でした。

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