仮掲示板

第79期、読み方を教えてほしい筆頭は#23、かな?

 好きな作品を見つける読み方は、この感想を書いたときの読み方とは違うのだろうと思う。

#1 バリア
 「私に似た女の子」の存在が何を意味しているものかがわからなかった。それに、「私に似た」であって、同じ顔をした、というものではないことも、この主人公はどのような感性をもっているのかと疑問を持った。
 主人公の声が出なくなる必要はなく、他人に声が届かないだけで十分だと思う。声が出なくなるとしてもその説明が遅すぎる。この主人公は説明の前に何度も叫んでいる。それから、この状況下で十分も冷静さを保つことができるのはすごいことだと思った。

#2 水分茶屋 中川口物語−塩舐め地蔵
 店主、籐衛門はひとを丸め込むのが趣味で、このシリーズはそういう物語なのかと思った。しかし、今回は一本取られているのだろうか。この書き方であれば、最後に籐衛門の反応がほしいように思った。
 癇の強い年寄りが描けていると思った。

#3 逆時計
 最初に読んだときは、主人公は彼女の気持ちがわかっていないと思った。それは、どのようにわかったのか抽象的にしか書かれていないからなのだが、実はそれが良いのだろうと今は思っている。書かないことで描くことも、あるのだろう。
 うまくまとまっているのではないかと思った。

#4 ロマンチスト
 なぜそういう結論になるのかがわからなかった。最初の段が悪いのではなく、最後の一文は良いのだろうから、その間の四文が決定的に間違っているのだと思う。
 「私は、夫の知らないところはまだまだたくさんあると思っている」は、その次の一文との関係から、「夫の知らない私は、まだまだたくさんあるだろう」あたりが良いのではないかと思った。

#5 炎壁
 これだけ執拗なストーカー行為に二ヶ月も耐えられること、パソコン画面に見慣れない文面が出ても気にせずにいられること、そしてこの状況下で普通に友人との交友があること、そういったことにこの主人公はどんな人物なのだろうかという疑問を持った。
 つきまとっていた影は、自滅したということなのだろうか。それに、実在していた存在なのだろうか、それとも仮想空間のものだったのだろうか。

#6 猫と労働者
 いい話のようなのだが、猫の行動に勝手に台詞を付けるな、という『スケッチブック』(久々の漫画ネタ)の言葉が当てはまる。猫にこれだけのことを言わせるのには、『吾輩は猫である』か何かのような、それなりの前提が必要なのだと思う。作中でもっともそぐわない説明は、「僕の死体が〜悔やむだろう」ではないだろうか。
 一週間何も食べずにいてこれだけの行動が取れるのか、私にはわからない。

#7 Visitor
 定石はきちんと踏まえた作品だとは思うが、強烈さは足りないと思う。必要なのは、岡田母子の恐怖におびえる姿の拡充と、小澤母子の最後の台詞の後のひと動作ではないだろうか。

#8 春と食欲
 サヤカの人物はよく描かれていると思うのだが、何だろうこの家庭は、というこの作品に対して持って良いものかわからない疑問を持ってしまった。
 勤め先でコーヒーを飲むバイトのお手伝いさん、しかも男性らしい。何者だろう。そのお手伝いさんが「食欲が満たされていて食べ物のことを考えられない」という勤務態度で良いのだろうか。

#9 真夏の雪
 これは小説で読みたいほどに珍しい感情ではないと思う。私など、年中、と言うほどではないが、いつだってそう思っている。ではなぜこの題材で書いたことがなかったのかと言うと……理由はない(『擬装☆少女』で使えないからという一因もあったかもしれない)。来月書くかもしれない。
 「人生で最後のジャンプは〜勇気をもくれた」がわからなかった。ジャンプが躊躇と勇気をくれたとはどういうことなのだろうか、またその躊躇と勇気によってジャンプの後に何か成しえたことがあったのだろうか。

#10 準備中
 童話のブラックコメディ化として上出来だと思う。しかし、「僕が盗人になる度胸があれば……」は浮いているのではないだろうか。
 この作品とはあまり関係のないことかもしれないが、キリギリスは肉食である。

#11 寂しがり屋
 登場人物が何者なのかわからないと、言っていることがひとつのお話でなく作者の主張に聞こえてくる。なるほど、『忘れるを知る』へのqbc感想はそういうことだったのか。
 「数十年の後に〜完成された瞬間に絶望するだろう。なぜならそれはもう現実と変わらないからだ」と主張者は述べているのだが、この場合、そう言えるほどに不連続な変化となるのだろうか。仮想世界が現実世界に近づいてきて、仮想世界とされていたものが現実世界の一部となることで、仮装ではなくなってしまうことによる絶望が起こるのではないのだろうか。

#12 青い月
 いい話のようなのだが、これが子を持つ親の心境なのだろうかと思った。「あの子」と自分の子供を引き合わせて子供に信じることを教えるような、そんな展開でも良いだろうかと思った。
 「それが男の子か女の子かだったなんてどうでもいい」という部分が、作中にあってはどうでも良いことなのかもしれないが、好きだと思った。それから、「ムキになりすぎた自分が恥ずかしい」は過去形にすべきだと思った。

#13 極意
 コントの起承転の部分のように見える。これで落ちがついたようには思えない。

#14 受賞者
 二段落ちは良いと思う。研究者がノーベル賞を欲する姿勢は悪いと思う。そして、これは作中で語られるべきことではないのだろうが、全世界が平和になることとの定義を教えてほしいと私は思った。
 いかんネタ被りだと思ったところで、そういったものは危険であると思っていたことを思い出した。『アカシック・レコードをめぐる物語 研究編』はそういう話、という宣伝。

#15 鈍感
 「君」と主人公の妻が同一人物なのか、それとも「君」は単身赴任先での不倫相手か何かなのか、わからなかった。以下は前者と仮定しての感想である。
 単身赴任の夫がどれくらいぶりかに妻のところに帰ってきて妻がやらないガーデニング用品を新調してくる、それが鈍感だという表側と、できちゃった結婚をしたのに終わりにするに当たって子供のことを何ひとつ考えていない、それが鈍感だという裏側を持った作品、ということで良いのだろうか。意味がわからないことは想像を持って読ませてくれることの裏返しということなのだろうか。

#16 Daydreamer
 「冬の寒さに耐え〜気は確かだったはずだ」の部分が何のために存在しているのかわからなかった。導入部分なのでこれが主人公にとっての現実なのかと思ったのだが、それは最後の部分であり、そうするとこれはいったい何なのだろうという疑問が残る。
 それを現実でないと仮定すると、主人公は引きこもりのギャルゲー狂いと言って片付けられるだろう。物語の薄っぺらさが主人公の人物に合っていて、それはそれで良いのかもしれない。

#17 いかさま
 キャスターの最後の一言は、地球の危機を回避するために、人類が、神からもたらされた、と言っている。何だそれは。神はダイスを振らずに玉を放つ。このゲームのルール、勝利条件は何なのだろうか。

#18 冬が来る
 日常の一こまを切り出したものなのだが、私にはそういった作品の価値がわからない。
 なお、会話文の中に「つ」と「っ」が混在している、「本物のような」と「見てみませう」が混在しているなど、文体の不一致が散見される。

#19 モーニン
 まず、主題は好き。
 「何たる弱さか」、「あたしが女だからなのか?」と来て、「男の子を好きになっちゃったからなのか?」と来る。もうわけわかんない。弱さの原因を問うていたのではなかったのか、男の子を好きになったのは原因ではなく結果ではなかったのか。そんな混濁もまた、主人公の混乱を示しているものなのだろう。
 「たまにウインクなんかしてたり」は夢というよりも現実的なアピールではなかったのか、「おめめのキラキラを誰よりも細かく書き込める」は絵を描くことであって自分の化粧などではないのではないかといった疑問も持った。実は後者のことから漫画家の話ではないかと、読んでいる最中の私は思ったのだったが、違っていた。

#20 誘惑
 この主人公は天罰の前に処罰されているはずであり、そう思うともう評価などできない。
 また、この作品とは関係ないことなのだが、放射能に汚染された水や空気の浄化はどのようになされるものだったのだろうか。

#21 オタマジャクシ
 恐ろしさ、おぞましさと言って良いのかもしれないものが、伝わってきた。

初めて感想を分割投稿した、第79期作品への感想の続き

 感想を短くしか書けない私には、初めての経験だ。
 春爛漫、作品数最多、感想の挙がり具合は如何に。

#22 最期の散歩
 主題と展開は悪くないと思う。しかし、使っている言葉がわからなかったり、不適切ではないかと思ったりした部分がいくつもあった。「心を留める」ことと「心を止める」ことの相違は、心を置く位置と心の活動ということなのだろうと私は思った。心を殺さないために、それをどこに置くのか、あるいはどこにも置かないのかという考え方は、興味深いものである。この主題から、最後の「彼の言いたいことが痛いほどわかった」にどのようにつながるのかがわかれば、良かったのだろうと思う。私には「彼の言いたいこと」はわからなかった。
 「当たり前のことから逃げた私は〜周りに当り散らして勝手に壊れた」とされているが、この人物が周りに当り散らしていた様子は見えなかった。内向的な人物ではなかったのだろうか。それから、「棺の入った鉄板をボウリングの球を投げるように、炉に押し込んだ」の部分は比喩を用いる必要はなかったと思う。無用な横文字に見えた。

#23 セザンヌ
 弟家族と一緒に暮らしているのが誰かわからなかったり会話に参加しているのが何人だったかわからなかったりしたのは、読み込みが足りないせいかもしれない。
 大変失礼な感想を申せば、qbc風味とるるるぶ☆どっくちゃん風味を足して二くらいで割ったような良さ。行動や人物の描き方や変則的な展開のさせ方から、そんな気がした。

#24 タイムバタフライ
 あれだけ装置から光と音を発しておいて決行は三日後という肩透かしは奇抜といって良いのかもしれない。そして、シンプルな表現、描写の中で伝えたいことがしっかり伝わってくる作品のように思えた。
 それに対して私は、生きていて、何かをなさなければならないのだろうかと思った。これは純然たる感想である。

#25 なぜ俺は殺人を犯したか
 主人公は労厚大臣と談合をしていた当事者と公園にいた浮浪者の一人二役で、その主人公が談合の発覚を機に大臣運転手を殺害した、という理解で良いのだろうか。しかし、主人公は何のために、記憶喪失やマイクロテープの埋没、証言者殺害といった行動を取ったのだろうか。特にマイクロテープは残したかったのか失くしたかったのかがわからない。
 さらに疑問点を挙げると、なぜ大臣運転手の居場所を早々に突き止められたかということと、死体遺棄に四十センチ程度の穴で良いのかということがある。

#26 JBショー
 久々に異言語人による理解不能な言動を読んだように思った。前に読んだのは、同じ5or6氏の『B&B』だったのかもしれない。
 導入が青年の視点だったのにも関わらず結末が第三者視点になっているのは良くないと思った。それ以外は、意味わかんねぇ、と言う他にない。

#27 『麗を弔う宴』
 登場人物の命名と動かし方はうまいと思う。しかし、この世界観が良いとは思えなかった。麗が人魚らしい存在で他の登場人物がそれ以外の海の生き物であるのに「麗は〜母であり姉であり、妹であり、恋人だった」とされてしまう根拠はどこにあるのかということが理由のひとつであり、もうひとつは「彼女に恋をし、海に棲むものが一晩だけ、人間になれた」ことの必要性が感じられなかったことである。後者の前提があっての物語なのだが、そう思ってしまうと楽しめない。
 ただし、書き方は良い。

#28 アカシック・レコードをめぐる物語 研究編
 K氏の『傾斜』を代わりにここに差しこんでおくとイイ感じ。

#29 からから
 この作品を読むに当たって、考えてはいけないことがいくつかある。ひとつ、この主人公にはまだまだ余裕があること、ひとつ、商品の魅力に優劣がないということは店の特徴がないのではないかということ、ひとつ、2πrの二乗が何なのかということ。これは私の反省なのだが、実はそれを書いて示してしまうことが最大の間違いだったりする。ではなぜ書いてしまったのかと言うと、他にさして書くこともなかったからである。
 強いて言えば、なぜ客の能力が試されることになるのかがわからなかったことがある。

#30 前借り
 うまくできているかと思ったのだが、実は「相手は〜信頼を感じさせる人物だった」や「受け入れる覚悟は〜揺らぐことはなかった」と二人を殺したことに不一致がある。
 契約によって病気になる前にビョーキだったという話や無関係の人物に顛末を語らせた展開は良いのだと思う。

#31 春
 何からしいというだけで、何かになってはいないのではないだろうか。千字小説に起承転結を求める必要がないのであれば別のことだが。

#32 さて、続きを話そうか
 登場人物は、主人公の女と、女を執拗に追いかけて車ではねた運転手と、女からハンドバッグを盗んだスリの三人で、女は死に、女に監禁された、おそらく運転手であろう、その一人も死ぬ。もう一人にまったく話題が向かないところが、バランスが悪いと思う。
 始まりが一週間前とされておきながら、女が監禁を開始したのが事件の三日後で、監禁を受けた者が死んだのがその十時間後であることは、間違いではないだろうか。それから、これは監禁されたのがスリであった場合には間違いとなるが、女に声をかけられたときに面識がないかのように「なにか、ご用ですか?」と応じたのはおかしいと思う。

#33 ひとり
 たくさんの影が遊んでいたのは兵隊ごっこだったのか、なぜ兵隊ごっこである必要があるのかと思ったのだが、おそらく桜の影の子を不安にさせるためなのだろう。しかし、影の彼がなぜ影でもない木に吊られた体を父と思ったのだろうかということはわからなかった。
 寂しい気持ちはわかったような気がしたが、しかし「誰かがまた遊びに来るのをじっと待っていよう」と言ったところで誰かが遊びに来てくれたことはなかったのだった。それでも、桜の影の子は受動的であるような気がする。

#34 桜散る頃に
 途中から回想に入ってそのまま現在の時間に戻ってこない作品はこれが初めてではないのだが、そのような構成で良いのだろうか。
 ふたりの関係の話なのに語られていることのほとんどが主人公の主観であることが、作中の花びらの使い方とあわせて、感情的で良いと思う。「彼女は僕を愛していた」の部分がなければもっと良かったように思った。

#35 野球篇
 なにがまずかったかといえば、「そうゆうののつみかさねが戦争なんよとかなんとかその方向で書こうと思った」ことなのだと思う。「まちがえた言葉でやってるとどうも調子がくるう」と来たのだからそれで進めれば良く、戦争などといった方向で書くのであれば別の描き方にすべきではないだろうか。
 「めばえかけたときめきはいったんリセット」とされているが、「めばえかけたときめき」は「言葉でやってる」から起こったようなことであり、現実には起こっていないのだから「リセット」とはならないのではないかと思ってはいけないだろか。

#36 春と紅茶
 作中で何かが起こる作品ではないが、映像が想像できる作品だと思う。映像が想像できるので、プリマヴェーラが投げた紅茶缶が下にいるインヴェルノの顎に当たるとは渡すような投げ方ではないとまで思ってしまった。
 春だから何でも希望的に考えられる、という雰囲気になっているところは良いと思う。

#37 迎撃
 ロケットは損害を出さず迎撃ミサイルの誤射でナサのレーダーのアンテナが破壊された、という理解で良いのだろうか。何にせよ、数十秒では早すぎるのではなかっただろうか。
 ところで、「他人様の頭上へロケットを飛ばすなんざ、ふてえ野郎だ」という意見、これは地理的条件の良い国しかロケットを飛ばしてはならないという意味なのだろうか。世論調査で問うてみたいという、純然たる私の感想。

#38 陽焼け畳の上で
 「女は俺の嫁」の次は「俺がみんなの嫁」と来た。会話はなかなか面白い。なかなか考えたものだと思う。が、「〇〇は俺の嫁」ってなぁ。何人わかっているのだろうか。

#39 卓上小説
 宇加谷氏が落ちを付けに行くとこうなるのか、と思った。
 夢時間についての考察が、わかったようなわからないような気がしたが良いものではないかと思った。それと、五千万円という数字が突飛なものに思えた。冗談抜きで五千円、では高すぎる。

#40 人影
 主人公の心境をどう読むのも読者の自由なのだが、本当にどう読んでも良いという作品はすごいものだと思う。どう読んでも良いということは、情報が不足しているということとは違う。

#41 狂った男と妊婦
 またしてもeuReka氏の作品に感想が書けそうにないのだが、現実味のない不安感、と言えば良いのだろうか。

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