仮掲示板

一部省略の第76期作品への感想

 省略するのは、投票した『黒い羊』、『檻の中の仔猫』、『霧』と以前の記事で書いた『乾燥胎児』の四作です。

#2 カラーコンタクト
 他人の目が気になることについては、書かれているとおりだと思った。さらに言えば、「実際下を見て歩かないと危ないのだった」は上手い挿入だと思った。しかし、突然「彼女」が現れて突然主人公が変わりたいと言い出したように思え、わからない展開だと思った。
 本作の感想から離れるが、藤舟氏の作風が平易なものになってきているように思う。以前の作品は私には読めないことが多かったが、それでもそちらの方が良かったかと思う。

#3 蜘蛛
 珍しく掃除をした心境が上手く描かれていると思った。それから、「コミックではない」は「掃除用具」くらいで良いと思った。

#4 歪み
 この登場人物がこの行動を取るものだろうかと考えながら書いているか、登場人物三人すべてに対して疑問である。人を殺せばお話になると思っているのであれば、物書きなどやめるべきだと言いたい。

#6 エイミー
 入籍していないのに社内報で結婚を報じることができるのか、人間の声が急に二オクターブも高くなることなどありえるのか、とりあえずその二点が疑問である。そして改めて考えてみると、何が描きたかったのかという疑問も浮かんできた。

#7 パワーストーン
 非日常的な存在に依って通常は意識にも上らない日常の心理を表現するという手法は、安易なものだと思う。描くのであれば安易に見せないための何かが足りないのではないだろうかと思った。

#8 春はめぐる
 なぜ娘は父のことがわからなかったのかという点が疑問である。よほど小さい頃に父が死んでしまったのであれば、今度は新しい父の話をここまで生々しく引きずっているのかということが疑問に挙がる。それから、「春がめぐれば、愛しい娘に出会うために」の一文に対して、なぜ春が特別とされているのかがわからなかった。

#9 『レッドキングの結婚』
 少年の話なのか怪獣の人形の話なのか、あいまいなように思った。

#10 写真班員と市場
 戦争に勝つとは、何をもって言えることなのだろうか。支配者を殺すことか、地を占拠することか、そういったことへの虚しさを描いているのであれば、共感したい。
 クマの子氏はいつも何かを描こうとしているのはわかるのだが、それが何かがわからなくて残念な思いばかりをしている。

#11 新しい神様
 女の頼みで白髪の男に会う主人公が随分と気弱でお人よしに思えたこと、名刺が葉っぱになってしまう必要がないと思えたことを、感想として挙げたい。

#12 糸電話
 何のことかわからない、と言えば、女性のことがまるでわかっていない、と返されるだけなのだろうか。千字で読める空気を描くのは大変なことだと思う。

#13 晴れ時々曇りのち晴れ
 これを直接的でない方法で書くことが小説なのだと思う。

#14 家路
 「友達のあの子」と「背の高い男の子」が別の人物か否かわからないのは私だけなのだろうか。そして、物語として考えれば、今メールをしたい理由と久しぶりに帰省したことには何らかの関連があるのだろうが、それもまるでわからない。

#16 押入れの独楽
 百人一首も後輩との会話もすべて最後の一文に収束しているのだろうが、百人一首をたしなまないせいか、本作を楽しむことができなかった。

#17 目覚めたとき
 作中の文のとおり、居場所とはどういうことか、わからなかった。わかる必要がないと言うのであれば、居場所とは何であるのかがわかるようにするべきだろう。

#18 アカシック・レコードをめぐる物語 暗闘編
 この物体、どこかで見たようなイメージだと思っていたら、アニメ『鋼鉄三国志』の擬似玉璽だったことを、投稿後に思い出した。血塗られた存在には良く合うイメージだ。

#19 さよなら
 とりあえず、心境は一通り推移してひとつの作品にできていると思う。ただし、もみじを血に例える必要がなかったということと、「アイツ」は「彼」で良かったということを思った。

#20 ワン
 ひとつになったと思わせる前にありえない鳴かせ方をさせる理由がわからなかった。普通の心境ならば普通に描けば良いのではないかと言ってはいけないのだろうか。

#21 カタマタクラ男爵のトースト
 内容に沿った描き方になっていることは、評価すべきだと思った。
 バターの上にジャムを塗れば良さそうだが、片面ずつ塗れば良いだろうという答えが出そうで、そういった予想できる余地が心地良い。

 今期は上から三つに投票しようとして、やめました。『黒い羊』に投票したのは、ひとつだけ選ぶとしてもこれだと思ったからです。『カラーコンタクト』と『蜘蛛』は、かなり迷ってやめてしまいました。あと二票あれば必ず入れる、というくらいに良かったと思うのですが、ごめんなさい。

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