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194期 全感想

投票しましょう。
今回は参加者が10人なので、その半分の5人ぐらいが投票すれば、まあまあかなと思います。


#1 僕の初恋の話。

登場人物の僕と君がどちらも地縛霊で、お互いにずっと思いを伝えられずにいたという話。アイデアは悪くないと思うが、ちょっと話が回りくどい気がするし、第一節を読んでいる段階で飽きられてしまう可能性がある。


#2 それは多分、高揚感。

主人公の中で気持ちがグルグル回っているだけで、結局相手のことをどうしたいのかがよく分からない。小説に書くのであれば、その気持ちのグルグルから抜け出すために、どう行動したのかを書くべきだと思う。


#3 鳥の名前

この作品も先ほどの#2と同じで、主人公の中で気持ちがグルグル回っているだけに見える。こちらの方は人生に対する不満のようなものを抱えているという感じなのだけど、ただ不満だけを聞かされても、読む方はあまり面白くはない。小説に書くべきなのは、単なる悩みではなく、そういう、悩める自分を取り巻く世界とどう関わるかということだと思う。


#4 遷移

(予選の感想と同じです)
整然とした都市も、人間がいなくなればいずれ草木が生えて森になる、といった空想をする話か。植物の名前と思われるカタカナ語が立て続けに出てくるのが印象的で、都市のアスファルトやコンクリートの隙間からそれらの植物が逞しく生えてくることを想像すると、何となく愉快な気分になってくる。しかし、それは同時に人間という存在が否定されていることのようにも思えてきて、寂しい気持ちになる。
この作品には自然回帰への強い憧れのようなものが表現されていて、共感できる部分も確かにあるのだけど、思いの伝え方が一方的な感じもしてしまう。ただ都市が森になってしまうだけでは寂しい気がするし、物語がそこで全て終わってしまうような気がしてしまう。
千文字小説の場合は、文字数が短いので、この作品のように一瞬の思いを切り取るというのもアリだと思うが、個人的には、何か満たされないもの(寂しさ)が残ってしまうなというのが素直な感想(むしろそれが狙いかもしれないが)。
それから、一段落目と二段落目は、少しもたついているというか、無駄な感じがしてしまう。


#5 知らない世界

老人になってしまった主人公が老境を語る話。前半は、年老いていくと色んなものに執着しなくなるといった一般的なことを語っているだけに思える。表現は色々工夫しているとは思うけど。
それから、最後のほうの「自意識」や「意識」の下りがよく分からなかった。


#6 井上

(予選の感想と同じです)
この作品で一番言いたかったのは「他人の物語の理解はむずかしい。」という部分か。普通だったら、他人のことをあれこれ詮索するのは良くない、といった言い方になるのだと思うが、それをあえて「他人の物語の理解」としているのが独特。そして今回も、前回の作品と同じように「物語」というものが一つのテーマになっているみたいだが、今回は前回ほど冷めた感じはしなかった。しかし、どこか物事を俯瞰しているようなところがあって、地に足を付けることを避けているような気がした(前回が天使の話だっただけに)。
しかし、物事(世界)との距離をとても慎重に取っていて、その慎重な距離感の中で物語を書いているようなところがあり、そうした部分は面白いなと思った。
あと、主人公と友人の会話文は誰が話しているのか分からないようになっているが、あえてそうすることで個性を消している。それもまた、物事との距離を取るための工夫なのかもしれない。


#7 Haagen Dazs

自動翻訳で調べてみると、アイスクリームはハーゲンダッツしか食べないという恋人の真似をするといった話のようだ。しかし私は英語が分からないので、英語で書かれても評価出来ない。
ただ、自分の書いた小説を、日本語以外の言語に訳したらどうなるのかということには少し興味がある。スワヒリ語に訳したらどんな文章になって、どんな人が読むのかということを想像すると面白い。


#8 落日

主人公にとっては酷い記憶しかない亡き父が、実は別の面も持っていたという話。大まかにみればそういうシンプルな話なのだが、ところどころに意味深な表現を入れて話を深めようとしているように見えた。「姉の制服の隙間から知らない石鹸の匂いがした。」という部分や、姉が指先の血を舐めるときの表現がそれで、意味深なのだけど、結局よくわからない表現で終わっているように思える。
あと、「庭の石を裏返したときのような無表情」というのもあまりピンとくる表現ではなかったし、ビニール袋で指を切る人なんているんだろうかと思った(少し硬めの素材なら切ることもあるのかもしれないが)。


#10 怪獣のいる街


(予選の感想と同じです)
ところどころ難しい漢字を使っている部分はひっかかるが、全体的に上手く話がまとまっていると思う。
内容は、謎の巨大生物によって街が破壊されたことに対して、主人公が救いを感じているといったもの。辛い現状をリセットしたいという気持ちを何かの物語にするこいうことは、よくあると言えばあるかなと思うし、この作品もその範疇のものだと思う。しかし最後の方に出てくる「消極的な自殺者達」という部分に作者のオリジナリティがあるように感じられる。なので、一連の説明よりも、そこをもう少し広げて書くべきだったのではないかと思う。

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