仮掲示板

143期決勝感想

#1トイレノ花子
幽霊というのはフィクションの中では何の不思議でもないのだと思う。トイレの花子さんの話は物語だから何の違和感もなく受け入れられるし意外性もないのだ。一方で「君」の話が気になるが動機も何もわからないまま。描写がいかにもフェティシズムにあふれていて読みづらいけど魅力的だ。


#2 病室の植木鉢
暗く暗く、ひたすら暗いイメージをかき集め眼に映るものはすべて死の暗示、そして悪いのはすべて自分というような鬱の話ではないだろうか。主人公の絶望は軽薄なのにいやらしくまとわりついて狙い通り不快だ。金髪のバイク乗り(同室だから若い女?)が「根につくものが……」とか古臭いことを果たして言うかとか、そもそも病院の隣のベッドの人がそんなこと言ってこないだろとか、思ってしまってあまりのめり込めない。


#3 無題
情景スケッチという感じ。なんとなく主人公の境遇をほのめかし想像を誘ってくる。しかし無題というタイトルはずるい。なんとなくぴったりのような気がするが、つけるタイトルが無くてつけたようにも思える。


#4 りんご
リアルな会話っていうのはそもそも小説みたいにきちんとつじつまが合っていないものなのだと思うんだけど、それを書いてみても何にも面白くないので軽妙な言葉のやり取りというのを捏造する必要があるのだと思う。ちょっとおかしな女の先輩との同居において、自分と一緒にいる先輩が自由にのびのびと思いついたことをそのまんま口にして自分もそれを許容している状況というのは素敵な思い出になりうる。


#5 口さみしい獣
空をとぶというのはいろいろなものごとの象徴にされている。主人公の子供の頃の空をとぶということが象徴しているものと、今の空をとぶということが象徴しているものが全く違うのである。空から降ってくるものを食べると体が浮くというアイデアは面白い。実際にそういうことはありそうな感じがするのに、聞いたことが無い。


#6 俳句
挑戦的だ。しかし、意味のよくわからない俳句を読んで、意味がわからないのは自分に教養が無いからなのだろうかと思ってしまった。小説に俳句が出てくるのは面白い。教科書にのってる古典には話の途中で短歌がよく出てきたなということを思い出した。しかしちょっと多すぎるのでは無いか。もうちょっと解説してくれないと楽しめない。というか季語以外の解説をお願いしたい。




藤舟

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