仮掲示板

佐々原海さん(質問を受けて再度作品を読ませてもらった感想)

佐々原海さん、こんにちは。

〉 ハンニャ様、ロチェスター様の感想を読んで、思ったことは、(略)
〉 今作品は色で言えば「黒(灰色)→白(青色)」というように変化することで、物語が終わります。(略)
〉 お2人はそこのところ、どう思いますでしょうか?

物語のイメージが「黒から白になる」(死にかけの少年と少年を救おうとする医師が、その医師に恋心を抱く死神によって救われてハッピーエンドになるというイメージ?)という佐々原海さんの作品説明は実に納得できるものです。黒→白、という流れにまったく異論はあるどころか賛成であるくらいです。

ただ、私が今読み返しても思うのは、黒いイメージを白のイメージにひっくりかえすには、ある種のドラマが必要だと思うわけです。
「子供を救いたい!」
「じゃあ助けてあげよう、よよいのよい」「助かった、ありがとう」
「どういたしまして」
「ひょっとして俺のこと好きなのかな」
「でへへ」(←これは極端ですが、つまりこういう話でしょう?)

↑こういう流れがハンニャさん風のギャグや文体で読ませていく短編ならともかく、佐々原さんには確乎たる構成がある。そうだとしたら、こんなやりとりではいくら黒→白の展開だとしても、読んでいると物足りない。「みんなハッピー」に持っていきたくとも、やはり死神も医師や少年に見えない形でなんらかの犠牲を払うべきではないか、ドラマをつくるべきではないかと思ったわけです。それに犠牲を払うから「黒→黒」となるとは思いません。腕次第です。

この話のなかでは「少女の死神」という決定的な切り札を佐々原さんは使ってます。トランプゲームでいえば、何にでも変身できる最強のジョーカーをすでに一枚使ってしまったわけです。読者の私は「少女の死神」の出現に面食らうものの、それだけならなんとか受け入れることができます。ただ、佐々原さんはこの「少女の死神」を彫刻をほるように丁寧につくりあげていかなければいけない。残りの弱いカードを丁寧につかってゲームに勝っていかなければいけない。そうしないと話にリアリティがなくなってついていけなくなってきます。少なくとも死神が人を救うという思い切った行動をとるわけだから、もしも彼女が本当に死神ならばなにか葛藤、それによって失われるものがなくてはドラマにならないと思うのです。患者を殺すのも生かすのも私次第、なんていう死神は魅力がない。おもしろくない。死神だって悪魔に仕える社員の一人であってほしい。社員資格を剥奪されてでも医師を助けたい、と思わせる仕掛けがいると思うのです。

まだ医師と死神という設定じゃなかったらよかったかもしれない。だって医師は今後も手術しなければいけないし、そうするとこの医者に惚れた死神はずっと彼の患者を助けなくてはいけなくなる。そう考えると医師と死神の恋愛というのは天使と悪魔が結婚するようなもので、出会いこそ刺激的であっても、未来は絶望的であるように思えてきて、ますます物語から気持ちが離れていきます。

たとえば、(たいへん失礼ですが佐々原さんの主題を勝手につくりかえて私好みの話をつくらせてもらうと)新婚の夫婦で妻が死にそうになってて夫が庭でシーツを眺めながら絶望している。その様子を少女の死神がずっとみている。死神はこの男が少年だったころから見守っていて好きだった。が、人間に死神は見えない。いつしか少年は成人して美貌の奥さんをもらい、少女死神は嫉妬するものの今その妻が死にそうになっている。ざまあみろ、と思うものの、庭で絶望している男をみているとやりきれなくなって、少女死神は葛藤する。結果的に少女死神は妻を助け、そのかわりに悪魔から死神の資格を剥奪されて猫にされるものの、夫婦の庭に入りこみ、男がカワイイ猫だと拾いあげたところではじめて、男と猫になった少女の視線がぶつかり、猫がニャアとなく。……こういうのだったら死神がでてきても、同人誌的だといわれても好きですが、えーと、自分が書いたんだから当然ですね、すいません。

最後に前向きで謙虚な問いかけありがとうございました。ハンニャさんのご意見同様、私はあくまで素人にすぎません。素人の感想は基本的には読み飛ばすのが精神的に健全だと思いますよ!(私が言うのも変ですが、感想は書きたいから書いているのです) むしろ佐々原さんにとっては作品をだし続けることが大切だと思います。次期も私は「よくわからなかった」と書くかもしれませんが、私程度に「わかられる」作品がはたして優れているのか、という疑問だってあるわけです。みんなに大好きといわれる人間ほど胡散臭いのと同様、みんなが大好きな作品など滅多に生まれません。どうぞご自身の書きたいことを書くべきです、繰り返しますが質より量です。量は必ず質に転化します(と信じたい)が、質は量を伴わなければ必ず下がります(とおもっている)。偉そうに書かせてもらいました、こうやって「偉そうに」書かせてもらえるおかげで私に見えてくることもあるのでやめられません。お互いに向上していきましょう。

次期も楽しみにしています!



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