仮掲示板

Re:私が敬愛する某アマチュア作家様に捧げて

〉 文豪になれなかったほとんどの紙が、焼き捨てられる。
〉 お前らも俺も、今のままだと焼却炉行きだ。恐ろしくないか? 俺は恐ろしい。一部の人間にしかわかってもらえぬまま自分の世界が喪に服される日が来るのが、怖くて怖くてたまらない。俺は生きつづけたい。
〉 分からんわな、こんな異常な生存欲は。たぶんビョーキ。

世の中の多くの一般人からみれば「異常」であり「ビョーキ」でしょう。でも、おそらくそういう意味では小説家(あるいは芸術家)のほとんどはもっと危なく、変態で、多重人格のおよそまともからは程遠いところの人たちのように思います。私の方があなたよりもビョーキでしょう。

〉 一番俺の小説エネルギーの根源をなすのはその人だ。その人に、わかってもらいたいと思う。
〉 でも、その人がもし、俺の小説が分からなかったら? 俺はこれが最も恐ろしい。なぜかは分からん。ただただ恐怖を覚え、その人に分かってもらいたいがために、それまでの経路にいるはずの人間にも分かってもらう。

あなたはまだまだ狂いかたが足りない。わかってもらいたい一人の人のために小説を書くなんて、まともだ。純情じゃないか! 谷崎潤一郎なんて、女のスラックス姿の脚の美しさを書きたいだけのために小説を書くわけですよ。猛烈なエゴと超異常な性欲の爆発と歪み……しかし、テーマはそんなところから始まっても、技術と感性をもってすればひとつの普遍的な小説となる。

どうぞ、「その人」にわかってもらえるような話を書けばいいじゃないですか。その他の読者はひとまずおいておいて。

〉 時代がついてきてくれる? 何でそんなことがあろうか。そうならない可能性のほうが高いはずだ。違うか? よくそういう風な口を利く批評家がいるが、俺は思う「たまたまだ」

「そうならない可能性のほうが高いはずだ」と思いながらも淫してしまうのが人間のサガなんでしょう。博打狂いの友人とか知り合いとかいませんか? どうしてそれほどまで馬にかけるんだ! と思うような人とか。小説家というのを仕事にしようとするのは、まあビョーキじゃないとできないと思いますよ。単純に金持ちになりたいなら、その努力を経済にまわしたほうがいい。もっと堅実にいきたいなら、読書をビョーキな“小説"などにかけずに実学の本を読めばいい。しかし、それでも淫したい何かがそれぞれにあるから小説家は小説を書き、ダンサーは踊るのでしょう、誰のためにでもなく。

〉 だから、いい。ただ、俺と同じ恐怖症の奴がいたら聞いて欲しい。お前を救えるのは、賞を取ったくらいで狂喜乱舞してしまう作家じゃない。小説すら書けない、無才の読者様だ。

違うでしょう。賞を取ったくらいで狂喜乱舞しなかった作家、もっといえば賞云々ではなく、いい小説を書いているのにまったく無名に終わった作家たち。彼らの作品をあらためて読んでみることではないだろうか。なぜ彼らは無名であることを受け入れているのか、こんなにすばらしいのに……と彼らの本を通じて自己との対話をすることが必要に思う。

まず20編くらい連続でエゴの作品を投稿されたらどうでしょうか(別に「短編」ではなくとも)、さんざんにけなされてもやめないことがルールです。運動と一緒で最初からセンス抜群な人もいますが、たいていの人は積み重ねでなんとかなっていくのではないでしょうか。それから小説、小説とこだわられることもないような気がする。「読者」がいることが前提の「広告作成」だって世の中の立派な仕事です。あなたのおっしゃることは「小説の方法」としてはまったく理解できませんでしたけれども、「広告の方法」としては秀逸です。

ご健闘をお祈りします。

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