仮掲示板

感想(15‐17)

15 ふえるワカメ;K

“感覚”の原理やメカニズムを「ふえるワカメ」のイメージで説明するという内容らしいが、100人中98人くらいは確実に面食らってしまう小説だろう。もう少し分かりやすい書き方もできると思うのだが、これも狙いの一つということか。まあ狙いなら狙いでよいのだが、ワカメ・海草の一本槍では少し退屈な気もする。というかその一本槍なところもまた狙い(というか味)か? しかし、あまり狙いすぎると的を外すことがあるかも。
 後半で、味噌汁の話に脱線したところで少しほっとしました。



16 コント「ブランコと僕」;高橋唯

 テレビで観るコントは笑えるが、少しだけ視点をずらしてみると――例えばこの小説のように、状況を淡々と文章化すると――たちまち笑えなくなってしまう、あるいは笑いの質が変化する、ということを表現したかったのだろうか。だとすればこの小説は、“笑えるか、笑えないか”ギリギリのところを探るという、ある意味で笑いの本質を突いたものだとは思うが、作品の意図がよく分からないので何とも言えませんね。



17 赤い糸;qbc

 隙がないですね。
 そこでいくつか気になる言葉、言い回しを挙げてみます。まず、女子高生ではなく「女子高校生」、「マインドトラブル」、「ボタンをクリックすると見知らぬ誰かと一対一でチャットができるところ」、「小旅行」、「牛タン弁当など」、「缶ビールなど」、「心理学の用語など」……。なんだか言葉を並べるだけで楽しくなってきます。あえてぎこちない言葉、ぎこちない言い回しをしているような気がします。これは主人公の性格(誠実、少し不器用?)をあらわすと同時に、一種のダンディズムを感じさせますね。まるで俳優の渡部篤郎氏の演技のような。
 物語については、どこか慎重で淡々とした主人公の語りで物語が進行していくわけですが、最後の方のLANケーブルを赤く塗るあたりで急に主人公の気持ちがこみあげ、そして最後の最後「笑顔を見たらその気分がかき消えてしまった」で、何か感情の糸のようなもの(まさに赤い糸)がほどけていく。少しさびしいような、心の中で気持ちがとけていくような、なんとも言えない素敵な終わりかたですね。
 一つだけケチをつけと、あまり隙のない書き方をすると少し息苦しくなるような気がします。



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