仮掲示板

全感想賛成・のいさんへ・81期感想(希望者のみ)2

■読者の一人としての感想に徹したいのでHNは1002でいきます。よろしく。
■「短編」掲示板へは平日のみの投稿となります。返信は遅くなるかもしれません。


・感想について
・のいさんへの返信
・81期感想を希望された方へ
・81期感想その2(アンドッドさん、石川さん)


・感想について

 私は基本的に笹帽子さんの提唱する「全感想は早ければ早いほどいい」に賛成です。読者の一人として「全感想」くらい毎月楽しみなものはありません。投票の基準にもしますし、読解の手助けにもしてます。そして、わらさんや壱倉さんが書かれているように「現状を変える必要はない」と思っています。

 ただ、私の「短編」についての基本スタイルは「○○は<みんな、絶対に、一律に>こうすべきだ」という、あるひとつの意見を、たとえそれがいかに正しかったとしても、全員にあてはめようとする考えには、基本的に同意できないです。

 なので、「全感想はあるべきだ」という考えと「感想は書かれたくない」という希望の、両方のいいところのみを私は支持します。つまり、「感想書かれたくないという意見が私はわかるから、私の書く感想は希望者のみに限るけれども、すべての人がそのようにしろ、という意見ではない。やはり投稿するかぎり作品は作者の手を離れるべきだとも思う。だから全感想を支持する気持ちは変わらないが、しつこいが、気持ちはわかるから私は嫌だという作者に感想は書かない。ただし、この私のスタイルは私固有のものであって、これを誰にも押し付けるつもりはない」というものです。白黒つけずに灰色ですいません。

 作者と読者はどちらが上か、という議論もこの考え方でいくと、作者はときには読者より上であってもよく、一方で読者が優位であるときもある。つまりは、波のようにひいたりおしたりしながら、うまくバランスを保っている関係だと思います。ま、都合よすぎですかね。


・のいさんへ(81期のい「恐怖」へのコメント返信)

のいさん、感想への感想ありがとうございます。あの感想は、素人の、アマチュア感想にすぎません。「私が書きたかったところを1002は全然読めていない」と思われたってかまわないわけです。「なにがポルノ小説だ」と反論なさってもかまわないわけです。感想の優れた点は、私とあなたが対等であることです。(ここからは笹帽子さんへのあてつけではないですからね、いちおうネットは誤解されやすいから……)たとえば「編集者と作家希望」の立場であった場合、「感想」といってもそれはどうしても編集者(文章のプロ)という力関係が発生してしまい、素人作家は、たとえ自分が編集者の「感想」に不満を持ったとしても、それを反論できない。反論したところで、

「私は今まで2000人の作家の文章をてがけてきました」

の一言で、素人作家は完全に自分が間違ってしまうように思わされてしまう。村上春樹だったか「やりにくい編集者は作家より文章がうまい編集者です」と書いていたと思うけど、力関係が生じると育つ人も育たない場合がある。

もちろん、一応誤解されないようフォローしておきますが、ある程度の文章力や創作態度が確立し、作家として自立した人にとっての編集者は、有能な秘書のようなものにちがいなく、その編集者とのやりとりでいい小説がうまれることは間違いないはずなので、編集者が悪いというわけではありません(前に「ある読者」あてにそんなこと書いたかもしれませんが、あれは私のコンプレックスによる強がりと読んでください)。

も一つ、逆に「素人の感想なんて意味ない、編集者の感想を素直にきくべきだ」という考えには私は疑問があって、素人の感想には素人なりの「スレていない実感」というものがたしかにあるはずで、文章なれした編集者の視線とはちがう<この小説はぼくの生活とどう結びついているのか>という自分の生活と結びつけて読む読み方からうまれる生きた感想、というのがやっぱりあると思う。編集者も作家も机の上で本ばかり読んで、文字の世界にいつでも遊びにいける人たちが感想を言うのと、ふだん小説なんて月に1冊読むかという人(小説なんかより楽しいことがいっぱいある!)の感想は違うはずだと思います。なので、素人の感想には、言葉が足りなくても実感のこもった感想というのがあるはずです。(そういう意味で私の感想はエセっぽくて実感がないかもしれないが……)

話を戻しますと、読者の一人としてのHN「1002」の私と、素人作家「のい」さんの間には権力関係はありません。私の感想に意見をいってくれると、「感想」といいながら創作の場のひとつとしてとらえている私にはとても役にたちます。

それからかくいう私の現在の課題は「1000字」ではなく20000字以上の小説です。なので、私の場合は短編でのバトル(というと大袈裟か)よりも、こういう感想を通じて、自分では思いつかないアイデアがどのように生まれ、どのように発展可能か、という小説を通じた細部のやりとりのほうがよほど役立っています。なので、のいさんの「両親のセックス」というテーマは、それまで私は考えたことがなかったので、このことについて「感想」を書き、交流できることで役立つことがありました。勝手に書き換えているのは自分メモみたいなところです。この書き換えに不満を覚え、さらに書き換えられるのもアリだし、「そうかこのアイデアがあったか」と奪うところはうばって、相互に、それこそさっきの波のたとえじゃないですけれども、互いがひいたりおしたりしながら二人ともうまくなれればいいのでは、と思います。

いただいた返信に具体的な返事をかくと「ポルノ的」というのは、必ずしも悪い表現のつもりではありませんでした。動画や写真など、どんなエロいシーンでも見られるようになった現代では、文章だけで読み手を悶絶させるポルノの文化的価値はかつてないほど高まっていくと思います。私は気分がのらないときは「官能小説用語表現辞典」(ちくま文庫)を開き、書き写したりしてますが、これはおもしろいですよ。

でも、この作品「恐怖」は、ポルノにしてしまうにはテーマが素晴しすぎるので、ポルノ的部分はカットした方がよいと、やはり今も私は思います。セックスを気持ちわるいと思うのは、誰もが一度くらい感じることかもしれないし、そしてそれがたんに快楽としてではなくて、「好きな相手とする」という時の、いわゆる「愛情」が加わったときのソレが、快楽以上のものであってけっして気持ちわるいものではない、ということを、娘に伝えたい母親、という話は、本来1000字で収める内容ではなくて、もっとふくらませていいはずです。自信をもって、卑下するのではなく私を「短編」の友人の一人として対等に思ってコメントを読んでくれれば、書いたこちらもうれしいです。


・81期感想を希望された方へ

感想を(直接間接)希望された方に書きます、と書いたのですが、ちょっと「間接」はわかりにくく、尚かつすべての掲示板記事をチェックできないかもしれないので、HN「1002」あてに希望してくれた方のみの感想となります。そのかわり、当初は「感想への感想はのぞみません」と書いたのですが、ここを変更し、「感想への感想をつよく希望します」に変更します。

また、今期希望された方は82期以降もやりとりできればと思ってますが、いろいろ検討した結果、私の感想は感想というより、内容の変更を提案したりだとか独自の書き換えをしたりしますので、次期は予選結果終了後に「感想」を掲示板に載せたいと思います。皆が予選を終えて、作品そのものの影が少し薄くなりはじめたころに、その作品に興味を持つ数人のみが作品をめぐって深い対話ができれば、なんとなく深夜番組っぽくていいな、と思ってます。また、全感想が最初に書かれて場に華やぎがうまれ「短編」が盛り上がっていくことと、私の感想は相互補完的であると思っているので、しつこいですが、全感想はすばらしいです。

よろしく。

ついでですが、「昔書いたこの作品は一票も入らなかったのだが、あなたはどう読むかききたい」という要望があれば、それを読み、そして私は私なりの解釈で再度希望のかたに感想をだしたいと思います。それもまた力関係があるわけではないので(感想書きがえらいとかどうとか……)えんりょなく。まあ、社交辞令という程度のあいさつくらいしてくれれば私もきちんと敬意をはらいます。


・81期感想その2(アンドッドさん、石川さん)

○アンデッド「タマネギ」(81期)感想

読みやすくてわかりやすい文章だと思いました。

< 見ると奇妙な生物が立っていた。白い肌の子供みたいな風貌で、腹と頭部が異常に肥大している。口はなく、目が大きい。
 後頭部の半分は機械で中の空洞が見えていた。>

こういう箇所など、読んでいて映画をみているように想像できます。作者の思い描いてるものと、読み手の私の思い描く図が一致するかのようで、なにか読んでいてホッとするものがある。こういう。描写の安心感の積み重ねが作者への信頼感につながって、たとえばこれが1000字よりずっと長いものであっても、読み通したいという動機となります。

でも、物語は、私はあまり楽しめなかったです。機械が人間の脳を育てる、というテーマのようなものは、とくに作者が「これは面白そうだ、これを書きたい」と思いついたというよりも、たとえば映画マトリックスの影響だったり、なにかで受けた刺激を転化したもののようにしか思えなかったところがあります。

1自分が何かわからない
2ここはどこだろう
3機械がでてきた
4あ、ぼくは機械のためにつくられてる人間の脳だったんだ!

という展開に独自性を感じず、やはり、かりもののイメージをみてしまいました。

「『収穫ノ時』」

と機械がしゃべる部分以降、今まで誰も考えていなかったような予想外の展開へと話をもっていくのだったらどうでしょうか。1234と順番にすすむのではなく、12aDみたいな飛躍があると、私は個人的に面白いと思いました。アンデッドさんは描写が感傷的に流されないのでそのしっかりした文章で混沌ななにかを描くとか。

(しかし、それとは別に 

 私は自分の脳を育んだ青き故郷を眺めた。
 遠ざかる美しい母に別れを告げる。
 私の目から一滴だけ涙が零れた。

 というラストの文章はなんだかいいですね)


私ならば、「機械が脳を育てている」というところを変えるだろうと思います。



「君ハたまねぎになりたいと志望した元・ニンゲンだ。忘れたか」
「覚えていない。私は今たまねぎなのか?」
「どうヤラ玉ねぎ脳が変換中に故障してシマツタようだナ」

機械はそういって、私に触れたようだった。触れたようだった? たしかに触れていると思うのだが確信がもてない。自分の肌であって肌でない気がする……と思っていると、あきらかにツルンと肌のようなものが剥けていく感覚が全身を貫いて、その瞬間に私はすべてを忘れてしまうかのような恍惚感に包まれていた。

「ドウダ」
「気持ちがいい」
「たまねぎの快感というヤツダ。これはニンゲンの雄の五億倍、雌の五十倍の快楽の波が君を襲うモノダ。君はカツテニンゲンのオスであつた。ニンゲンはロボットほど強くなく、環境に支配された奴隷的生物だと嘆いて、ココへきた。タマネギになりたいと言ったのだよ」

 話を聴いているうち、私は意識がなくなってきていた。私は皮を剥かれたことで、どうやらようやく本当にタマネギとなっていくようだった。剥かれるたびに女の五十倍、男の五億倍! ならばタマネギとして剥かれ終るまで恍惚を味わおうではないか。さらば俗世間、さらばニンゲン、さらば会社よ、さらば、さらば、さらば!




○石川楡井 『脳を漬ける』 (81期)感想


石川さんの作品は今期のアンデッドさんの作品によく似ていると思いました。文章の硬質性について私はアンデッドさんの文体を好みますが、石川さんの話の独自性は最高によかったです!

この作品は今期の投票候補でした。とくに下部までが良かった。


< 父ちゃんは僕の脳を糠床に入れ、丁寧に糠と揉み込みながら容器に沈めた。
「ようく漬かれ、ようく漬かれ」
 僕は夢を見ているような心地だった。糠床の海で泳ぐ夢。脳は離れているのに、そんな光景が瞼の奥に広がる。母ちゃんが糠床の蓋を閉めて、台所に持って行った。僕は自分の脳の寝床を見る為、着いていく。
「タク坊もお願いするのよ。ようく漬かれ、ようく漬かれって」>


……個人的に残念でならないのは、ここから話にオチをつけようと持っていったところです。まず、小蝿が数匹とんできた、というのがどこか生々しくて作品として、ここのところまで維持していた(と思った)ユーモア小説の雰囲気が、とたんに生々しくなってきた。

最後の「じっちゃんの脳じゃねえか」とオチを持ってくるのは、賛否両論ありそうなところだと思うんですが(というと感想は全部そうですが)、じっちゃんの脳だった、という展開は駄洒落のような笑いになってしまって、余韻が残りません。

ふと思ったんですが、「タク坊もお願いするのよ」からの下の部分は削りとってしまって、せっかくさっきまで主人公が「僕は夢を見ているような心地だった。糠床の海で泳ぐ夢。脳は離れているのに、そんな光景が瞼の奥に広がる。」と、小説的独白を始めていたんだから、これを続ければよかったんじゃないでしょうか。

前半、中盤と、「脳を漬ける」という独創的でユーモアな流れで、かなり読み手をひきつけているのだから、ここで小蝿やじいさんの脳、祖父が脳科学の論文をかきあげる、といった優等生なユウモア展開に突き進むよりも、ここから話の流れをまったく変えてしまう「だいどんでんがえし」を期待したい、と思いました。



僕は夢を見ているような心地だった。糠床の海で泳ぐ夢。脳は離れているのに、そんな光景が瞼の奥に広がる。母ちゃんが糠床の蓋を閉めて、台所に持って行った。僕は自分の脳の寝床を見る為、着いていく。

 脳が漬かっている一晩のあいだ、サボテンのように全身が刺となって、身体から柔らかさや水分が抜けきったみたいだった。眠りたいのに、いつまでも眠ることもできなかった。誰なんだろう、僕は。今考えている僕は誰なんだろう。脳は漬けられてるのに、僕はここにいる。

「ようがんばっとるな」

ぼけてるはずのじっちゃんの声を感じる。なぜじっちゃんの声だけ?

「タク坊おきんさい」

翌朝、父ちゃんに起されて目が覚めた。

「脳どうなった?」

心配で聞いてみると「は?」と返事。「母ちゃん、僕の脳は?」と聞いても母ちゃんまで相手にしてくれない。じいちゃんだけが僕の頭を大きな手でゆっくりと撫でてくれたのだった。

僕は頭がおかしい子と思われたけど、きっと父ちゃんも母ちゃんも隠しているんだと僕は信じている。僕は、味噌につけられた脳を持った子供なんだ。

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