第98期 #3
ラナ玉井は家来を呼び付けた
「これ、何ですかこの請求書の山は。私は無料だからやったんですよ。」
「ラナ様これは全て架空請求書と言う物なのですが、実に精巧に出来ておりまして、だまされる方が悪いと言う結論だけは既に見えて居りますが、お払いになられるのでしょうか」
「うーむ。それにこのスペックは何ですか。私の40年の苦闘をバカにして居るのですか。私はスーパーコンピューター4段の腕前なのですよ。4級に書き換えられとる」
「うーむ。サイバーワールドは複雑なつながりを見せる物でして、その細かい所は原因不明としか」
「バカ者、ただ一字の違いが書き換える側にして見れば細かい些事に過ぎなくてもわらわにとっては大きな違いなんだわ。おまえでは埒があかん。これ、あのわくわくを呼び寄せなさい」
「あのーあの者は「わくわく」と呼ばれるのをひどく嫌っておりますが。「和久和久」と書いて「ワクカズヒサ」と読むのです」
「えーい分かって居る。とにかくわくわくを呼ぶのです」
「かしこまりました」
家来が城内アナウンスを掛けると、和久和久は直ぐやって来た。
「これ、そなたは確かロックバンドのヴォーカルをやっておったな」
「はい、それがし、ロックバンド「ダマレ」のヴォーカルやって居りまして昨年度目出度くメジャーデビュー曲「黙って下さい」がミリオンセールスを記録しましたがセカンドシングル「黙らんかい」は10万枚程度のミディアムヒットに終わりまして少し失望して居りました」
「そうであったか」
「しかしながらこれからも精進して行く覚悟で御座います。それはそうと早速水島工業地帯での慰問ライブが決定して居りまして玉井様にもおこし頂ければ幸いかと存じますが」
「うーむ。ちとスケジュールが・・・。それにしても天体観測にも凝って居るそうな、ニュープラネットが発見出来たとか」
「はい、新星で御座います」
「業界ベースボール大会にも出たとか」
「はあ。あれはライバルレコード会社の専務が相手方のピッチャーをやって居りまして。失投のデッドボールを、うっぐふぉ」
「ラッシャー歌前とプロレスで戦ったとか」
「あれは企画物でして、まあインチキかと。インチキと言えば「和久和久」の名前が売れて居りますので私の名前だけ使ってファッション界でデビューした事も」
「ほー、いろいろやって居るな」