第96期 #18

夢の女

 男は困り果てていた。いつからか毎晩夢の中に同じ女が現れ、あんなこともこんなことも、口に出すことさえ憚れるあらゆることをされてしまうのだ。
 おかげで毎朝目覚めは悪く、あろうことか酷く体力を消耗してしまっていた。「このままでは、あの女に殺されてしまう……」。
 男は女の正体を突き止め、夢に現れないように仕向けようと、あらゆる手を使って女を探し回った。
 灯台もと暗しとはこのことを言うのだろう。女は、あろうことか同じ会社の庶務課にいたのだ。しかし、どうすれば夢に現れないようにできるものか……。
 男は言葉巧みに女を誘い出すと、出来る限りの手段をこうじて女と結婚することに成功した。女と結婚することによって、毎日顔を合わせるようになれば、次第に飽きてしまい夢に現れることはなくなるだろうと踏んだのだ。
 男の目論見どおり、結婚してからは夢に女が現れることはなくなり、いつしか一姫二太郎の子宝にも恵まれ平穏な日々が訪れていた。しかし、何故女は男の夢に現れるようになったのだろうか?
 あるとき、男は何気なく女にこれまでの経緯を話してみせた。すると、女は意外なことを口にする。

「それ、アタシの作戦だったのよ。アナタの部署の前を通るときは、いつもよりブラウスのボタンを多めに外して、スカートの丈も短くしていたの。けれども、あまりアナタとすれ違う機会がなくて……。ほんの数回だけだったから、余計に印象に残ったんじゃないかしら? でも、アナタがそんな夢を見ていたなんて思わなかったわ。今となっては、正夢になっているけれど」



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